猫耳少女のドヤ顔聖女譚

ノエル・フォン・シュテュルプナーゲル

第1話 ねこまんまニャ

「今日も平和ニャ~。ふわあ~眠いニャ……」


 どこかの樹海の外れ、どの国に属しているのかも不明なほど辺境の辺境のとある村で私は暮らしていた。


「お!おはよう!エレナ!今日も眠そうだな!」

「うにゃー隣のおじさんおはようニャ。母ちゃんと朝狩りに行ってきたから眠いニャ……」

「セレナさん狩り上手いし強いしな、しっかり教わって獲ってくるんだぞ~!」

「お、おうニャ……」


 ここは50人程度の小さな村で村全体で分業制で仕事をしている。

 私は母セレナと狩りを担当している。50人もいるのに私と母だけだ。

 みんなは畑仕事や家事、他にも人間の街と交流して道具を買い付ける係だったり、鍛冶だったり、酪農だったりと色々と分かれている。

 母は狩り以外に村をまとめている。

 いわゆる村長だ。

 父は私が小さい頃に亡くなっている為、母と二人暮らしだ。


 夜行性の魔物が疲れ果てたの頃合いを狙う為に日の出から狩りに出かけついさっき戻ってきたばかりだ。

 今日の仕事はこれで終わりだし私は惰眠を貪るつもりだ。


「私そんな狩り好きじゃないにゃ……」


 この村には猫耳の獣人しか暮らしていない。

 人間の国と大昔に争っていて、人間から隠れる様に暮らし始めたそうだ。

 ただそれも大昔の話で人間がいる街にはいったこともないし、村の外で人間にあったこともあるけど特にそんな変な目でみられたことはなかった。

 ご先祖様曰く、人間は恐ろしいらしい。


 とは言え、人間を初めてみた時は私達と大差ない容姿で逆に「上の耳ないけど大丈夫ニャ?尻尾切られちゃったのニャ?」と心配したくらいだ。

 人間との差は頭部耳があるか、尻尾が生えているかどうかだ。


「ふにゃ~……眠いのは仕方ないけどお腹空いたニャ、母ちゃん獲物を皆で切り分けてるんだったかニャ?私が作るしかないニャ……」


 今日の獲物は大物だった為、解体して運んできてあとは村のみんなで分けているのだろう。私は自分の家の分があれば文句ない為、どうでもよかった。


 ちなみにでっかいトカゲにゃ。

 母もとい、母ちゃんと二人で魔法で運んだけど疲れたニャ


「にゃー、かまどに火を熾すにゃー【ファイア】」


 母ちゃんに教わった生活魔法の一つ、すっごい便利にゃ。


 母ちゃん、まじで魔法だけは上手い。あんまり足速くないけど

 本当に猫耳の獣人なのか?と疑わしいくらいに足が遅いし、回避もあんまり上手くない。

 私が回避タンクをして、後ろで魔法打ってるだけである。

 そんな母ちゃんも私が飯を作ってるうちに帰ってくるだろう。

 いつものことだ。


 火を熾し、稲とかいう母ちゃんが広めた穀物の種、米を研いで鍋に入れ炊く。次は大豆を煮て潰して塩や稲から取り出した麹とかいうものを混ぜて発酵させた味噌とかいうもの、これもまた母ちゃんが広めたものなんだけど、それでスープを作る。具は村の畜産農家から貰った家畜の猪を絞めた肉と、まあ色んな野菜を入れる。

 母ちゃんはこれをトンジルと呼んでいた。まあ炊いた米に凄い合う。

 それに野生の猪と違って臭みがないのが良い。


 私はこのトンジルを炊いた米にかけて食べるのが好きだ。

 それをやると母ちゃんに「ねこまんましてる~wひひひひウケルっすw」とか手を叩いてなんか語尾にッスとかつけていつも笑ってくる。


 なんかわからんけどメチャクチャむかつくニャ!!!

 

 だから母ちゃんがいない時にしかそういう食べ方はしないようにしている。


「そろそろご飯たけたかニャ?」


 完成にゃー!!!食べて寝るのニャ!


「大根の漬物出してきたよ~エレナこれも一緒に食べよ~」

「母ちゃんお帰りニャ。確かにそれもご飯に合いそうニャ」

 またまた母ちゃん考案の保存食、米を白くする時にのこったヌカとかいう削りカスと塩とコンブとかいう海までいかないと採れない海藻を干したものと大根を漬けて熟成させたものを輪切りにしたタクアンとかいう食べ物だ。


 母ちゃんは物知りニャ


「エレナ今日もねこまんまやらないの~?好きなんじゃないの?」

「別に好きじゃないニャ!ふん!」

「まあそういうことにしとくよ、それじゃあ」

「いただきまーす」「いただきますニャー」


 これがごくありふれた1日で、これが毎日ずっと死ぬまで続くと思っていた。

 何も変わらない日常、これが私にとっての幸せだ。


「エレナ、日に日にご飯作るのうまくなっていくね、もう私が作るよりも美味しいよね」

「にゃっふっふー、まあ最近は毎日私が作ってるし当然ニャ」

「ふふふドヤ顔うざっす」

「も~母ちゃんには飯作らないニャ~……」

「ご、ごめーんて「セレナさん!!食事中にすまん!」


 隣の家のおじさんがドア開けっぱなしの我が家に入り込んできた。

 肩で息をしている様子から急を要する用事なのだろう。


 尋常じゃない雰囲気ニャ


「オエ~とかいってるけど大丈夫かニャ?毛玉はくニャ?」

「猫じゃねえんだから吐かねーよ!」


 肌に毛が生えてる猫や猫獣人族と違い私達は猫耳獣人族である為、毛玉は吐かない。猫耳ジョークである。


「どうしたっすか?そんな息きらして」

「セレナさん……に、人間が来た……」


 人間!?


 村には人間が来た事は今まで無かった。

 それは迫害されてきた過去を持つ故に人間が入って来れないようにしているからだ。


「結界を張ってあるのにどうやって……いまいくっすモグモグモグ」

 母ちゃんは残すのが嫌いな人である為、ご飯を口に詰め込んで飛び出していった。

 

 足音が家から離れていくのを息を殺して待った。

 ちゃ、チャンスにゃ……!!


「……今のうちにご飯にトンジルかけるニャ」


 ひたひたにトンジルで浸したご飯。


 最高ニャー、幸せニャー、


 むっちゃむっちゃむっちゃむっちゃ


 部屋の中はひたすら幸せを噛み締めた音が響く。

 どうせ母ちゃんは戻ってこないだろう。ゆっくり食べよう。


「絶対かけた方がおいしいニャ。」


 この時、私は油断していたのだろう


「あ、エレナーやっぱりねこまんま好きじゃんw」


 み、見られたニャーーー!!



~~~~~~~~~~~~~~

「転生錬金術師の地球出戻り聖女譚」と同じ世界です。そっちもエタらないようにアウトプットしていきます……


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