⑫異世界渡航編
「……ん?」
「あれ? なんで僕くんがここにいるの?」
「こっちが聞きたいんだけど?」
「うっかり巻き込んじゃった! ごめんね、あは☆」
「巻き込んだって……え、幼馴染ちゃん、危な――!」
「えい! とりあえず私のそばにいれば安全だから安心して!」
「僕の幼馴染ちゃんは異世界でモンスターを片手で潰せるくらい頼もしい」
~ ~ ~
「ダンジョン用のモンスターを捕まえに久しぶりに飛んだの」
「その過程で僕は巻き込まれたと」
「私と一緒で幸運だったね―!」
「この場合不運だったって言うんだよ」
「私と一緒だと不満だって言うの!?」
「いやまったく?」
「えへへ♪」
「異世界でも幼馴染ちゃんはちょろかわいい」
~ ~ ~
「なんだかイカした格好してるね、幼馴染ちゃん」
「魔王討伐の褒章に貰ったマジカルマントだよ!」
「魔法耐性凄そうな名前だね」
「おまけにブレス系のダメージも軽減する優れ物だよ!」
「だったら冒険開始の時にくれたら良かったのに」
「え、どうして?」
「だって道中楽じゃん。冒険終わってからそんな壊れ装備貰っても意味なくない?」
「……あ、ほんとだ!」
「我が幼馴染ながらRPG耐性ないのがもったいなさすぎる」
~ ~ ~
「こうしてると地球とほとんど変わらないね」
「私達の世界をベースにして作ったんだって」
「へー、そうなんだ」
「女神様が言ってた」
「女神様とかほんとにいるんだ」
「いるよー。ちょっとケバいけど」
「いったっ。な、なんか急に殴られたんだけど?」
「容姿いじりするとすぐ怒るんだよ~」
「だったら幼馴染ちゃんに直接やり返せばいいのに」
「私はほら、物理無効だから」
「え、なんで?」
「異世界転移特典」
「自分で自分の首締めるとかうっかり女神様だ」
~ ~ ~
「どんなモンスターを探しているの?」
「浅い階層にちょうどいいやつかな~」
「スライムとかゴブリンあたりかな」
「もっとかわいいほうがいいの!」
「あ、あれとかよさそう」
「僕くんのエッチ!」
「え、どうして?」
「ホーンラビットなんか放し飼いにしたらダンジョンの中が臭くなっちゃうもん!」
「異世界のうさぎもマウンティングするんだ」
~ ~ ~
「よ~し、君に決めた!」
「ぅ……ぁ……ぉぉ……おいてけ……おいてけ……」
「明らかに最下層にしかいなさそうな悪霊なんだけど」
「ねーねーフロートゴースト!」
「そんなのお構いなしに突っ込む幼馴染ちゃん」
「成仏させられたくなかったた私の言う聞け?」
「光属性魔法適性もマックスとかチートにも程がある」
~ ~ ~
「あ、はい、すんません。言う事なんでも聞きますんでニフラむるんだけは勘弁してください、ええ」
「あからさまに媚び売り始めた。自分のプライドをどこかに置いてきてしまったのか」
「いいこ、いいこ♪」
「あ、ぁ……ぁぁ……お花畑が見える……」
「幼馴染ちゃん、右手の光ってるのキャンセルしないと死んじゃうよ」
「やだなー、僕くん! 幽霊なんだからもう死んでるよ?」
「たしかに~」
「笑ってないで止めてくださいよ!」
~ ~ ~
「まるまるうまうま」
「へぇ。わ、わたしが異世界でダンジョンに、ですか」
「嫌?」
「幼馴染ちゃん。意思確認のたびに光って脅かすのやめてあげて」
「ええと、一旦持ち帰って相談させてもらってもいいですか?」
「誰と相談するの?」
「嫁と娘ですね」
「幽霊にも家族ってあるんだ」
~ ~ ~
「幼馴染ちゃんさま、OK出ました」
「よーし、じゃあさっそく!」
「ですが、条件がありまして」
「何?」
「だから幼馴染ちゃん右手の光を以下略」
「どうせ行くなら家族皆でってことで」
「しょうがないなあ」
「家族離れ離れはさみしいもんね、なんだかんだ幼馴染ちゃんは優し――」
「じゃあ毎日人数分の生贄は用意してあげるね!」
「あ、移動手段じゃなくて食料融通の話?」
~ ~ ~
「ここが地球ですかい。ほえー、進んでますなあ」
「今日からこのダンジョンが君たちの住処だから、遠慮なく使って欲しい」
「旦那はん、そいつはありがたいですわ。子供もいい加減今までの家だと狭かったみたいで、嬉しそうにはしゃいでますわ」
「それじゃあ、私たちはこれで!」
「……あ、ちょい待ってくださいな」
「どうかした?」
「あのご婦人なんですが」
「行き遅れ三十路先生?」
「良くないもんがツいてますさかい、早い内に対処するんをオススメします」
「ど、どんなやばいモノが……っ」
「告白を一万回連続で断られて独身のまま生涯を終えた女の霊が」
「先生お祓い行きましょう!」
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