⑩キッチンカー編
「クレープが食べたいの!」
「キッチンカーの魔力にあてられちゃってるねえ」
「チョコクリームチョコバナナチョコランマ!」
「最後の世界最高峰の山みたいな味はほんとにあるのかな」
「クレープ屋のおねーさん!」
「さて、幼馴染ちゃんは何を選ぶのだろうか」
「ピリ辛チョリソードッグを一つくっださいな♪」
「全チョコとカカオに謝って欲しい」
~ ~ ~
「おいしー♪ おいしー♪」
「幼馴染ちゃんは美味しそうに食べるから見ていて和む」
「もっふもっふ♪ もっふもっふ♪」
「瞳の中に星が煌めいて見えるくらいに上機嫌だ」
「うーん」
「足りない?」
「お手製のサルサソースは絶品だけどチョリソーは業務用の安い品を使ってるから味のバランスがチグハグだよっていうのをやんわりと伝えるにはどう噛み砕けばいいのかなって考えてるの」
「出たな美食家気取り」
~ ~ ~
「じぃ」
「おいで」
「うん♪」
「ほら、あ~ん」
「あ~む! うう~ん、くりーむがあまふへうぉぃひぃ~♪」
「幼馴染ちゃん」
「うゆ?」
「僕と間接キスしちゃったね」
「~~~~~~~っ!?」
「いい? ああいうあざといのがたち悪いのよ?」
「尾行してる我々も大概でござるよ、ツンデレちゃん」
~ ~ ~
「ぼ、僕くんは突然エッチになるのがいけないと思うんだよ!」
「うんうん、ごめんね幼馴染ちゃん」
「だいたいね、僕くんはいつもガードが緩いし」
「あ、ハンバーガーも売ってるよ」
「ひょれに、もぐもぐ、他の子にもあまいひ、あむあむ」
「お、チュロスにスムージーもある」
「本当にね、ぱくぱく、いい加減、自覚を、ずずずー!」
「美味しい?」
「美味しー☆ ……あれ、何の話してたんだっけ?」
~ ~ ~
「そうやってすぐ誤魔化すんだから! そうやってすぐ誤魔化すんだから!」
「ごめんごめん。口元に物を運ぶと自動的に吸い込まれていくから面白くて」
「私は掃除機じゃないんだよ!」
「じゃあ何?」
「えっ」
「何?」
「か、角度を測るやつ?」
「分度器。うーん、まあ、ギリオーケーかな?」
「辛うじて韻を踏めたから許してくれたのかなあ?」
~ ~ ~
「からあげ揚げたてでーす! よろしければ買っていってくださ~い!」
「僕くん。キッチンカー販売って、大変だよね」
「そうだね。暑い日も寒い日も売り歩かなきゃだから――」
「販売許可取得とか食品の衛生管理とか」
「およそ学生が抱く苦労のだいぶ上をいった心配をしていた」
~ ~ ~
「お店で食べる料理とは違った美味しさがキッチンカーグルメからは手に入ると思わない!?」
「お祭りの屋台に通じるものがあるよね」
「外で食べる風情っていうか~!」
「作ってるところを間近で見れるライブ感っていうか」
「出てくるところを待ってる間のドキドキっていうか」
「ついに我慢しきれなかったのか野生のツンデレちゃんが会話に割り込んできた」
~ ~ ~
「だってだってずるいじゃない! 幼馴染ちゃんばかりイチャコライチャコラってさー!」
「嫉妬心に狂って般若みたいな顔になってしまっている」
「ツンデレちゃん」
「何よぉ!?」
「はい、あーん」
「あむぅ!?」
「おいしー?」
「おいしぃ♪」
「何気にツンデレちゃんって、幼馴染ちゃんと同じようなメンタルしてるよね」
~ ~ ~
「できたよ、幼馴染ちゃん」
「わ~い、できたてだー!」
「どう?」
「おいしーよぉ、おいしーよぉ!」
「そ。よかったよかった」
「……ねえ。僕くんが今日に限って家庭科室でお昼を作った理由って」
「……幼馴染ちゃんがキッチンカーグルメに夢中になったのが悔しかったからでござろうなあ」
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