[1-8]不変のチート、世界を渡る魔法
案の定、というか。悪魔が神様を名乗るなんて、大胆不敵もいいところじゃないか。
あ、でも日本的には、悪魔も神様の
「そうそう、オレ様そのドラゴン様ってわけ」
「えっ、龍神様!?」
「あー……ちょっと違う、けどまぁいいや。とっても偉い神様みたいな悪魔」
「はぁ」
転生系ライトノベルの神様や女神様も突っ込み所が多い
やっぱり異世界ファンタジーの作者には、異世界行きの経験者が一定数いるのかな。
「そんな顔するなって。呪いっつっても別に、百日後に死ぬとか見た目が
いろいろ問い質したいけど、そんな綺麗に微笑まれたら何も言えなくなる。ずるい。
不満を隠さず押し黙っていれば、クォームは手に持っていた僕のスマートフォンを胸の高さに持ってきて、小声で何か聞き取れない言葉を囁き始めた。歌うような、語りかけるような、……もしかして魔法の詠唱?
不満はあっても好奇心には勝てない。
「来いよ。超有名な銀竜様から超ありがたい
「クォームなんて名前、どの神話でも見たことない。その御加護だって、どうせ呪いなんでしょ?」
「まぁな! オレ様、かの有名無名な影の
言ってる意味がわからないし、高めのテンションにもついて行けないけど、たぶん怖い悪魔ではないんだろう。素直に側へいけば、彼は光るスマートフォンを僕に差し出した。こわごわ受け取ったその瞬間、銀色の光が弾け、僕の中に吸い込まれて消えていく。
痛くも
「なに、この髪色……白?」
「んーにゃ、銀。おまえにオレ様の権限を委譲したんだけど、魔力は髪に宿るから、うん」
「すごい伸びてますけど」
「おまえ何でか馴染みがいいんだよ。想定より多めに入ったんじゃね?」
「疑問系やめてくれます……?」
実は、ツノとか悪魔羽が生えるのを想像していたので、少し拍子抜けした。長い髪が首にまとわりついて
それで、何だっけ。不変の
「
「破格のチートじゃないですか。なのに、呪いって」
「要するに、生身でありながら生身の恩恵に
「つまり、耐久特化の攻撃力ゼロ……?」
「使う気あるなら剣も授けてやるぜ?」
楽しげに言われたのでちょっと想像してみたけど、勝手に戦ってくれる魔剣とかそういう系じゃなければまともに振るえるはずがない。
使えない武器を持ち歩くのは事故につながる。走るのは不得意で足は遅いし運動神経も鈍いけど、それでも僕の場合は逃げることだけに専念したほうがよさそうだ。
「いいです。それで、僕は向こうで何をすれば?」
「神様さがしをするんだよ」
「え、神様? そもそも世界を終わらせようとしたのが
クォームは相変わらず楽しそうな表情だったけど、綺麗な青い目は真剣だった。少しの沈黙を挟んで――どうやら彼は言葉に迷うと黙るらしい――答えてくれる。
「世界を始めた神様とやらは箱庭ゲームに見切りをつけて扉を閉じた。つまり、向こう側は今、神様不在の
「つまり、神様候補をさがせ、と?」
「それだ! おまえ頭いいな、ちゃんとわかってるじゃんか!」
僕自身も小説を書くのでなんとなくは。冒険小説によくある、世界を救うために特定の誰かをさがしだし、助力を得ないといけないやつだ。
でもこういう場合って大抵、物語の序盤では情報が明らかにならないよね?
「手がかり、とかは」
「さっきも言ったように、あっちはオレ様の
やっぱりだよね。脳内で早速フラグを回収しつつも、あまり絶望感はなかった。
「わかりました、それならまず僕は神竜族の方たちをさがそうと思います。全員を知っているわけじゃないけど、心当たりはあるので」
「神竜、……か。そうだな、目の付け所はいいと思うぜ」
クォームは頷いて、右手を差し伸べるように掲げた。途端に、彼の全身がさっきのスマートフォンのように淡く光り出す。
気づけば銀色の人は本当に、銀色の直立型ドラゴンになっていた。どこか存在感のおぼろな、美しくも不思議な龍神の悪魔が、歌いながら首を動かして空間をこじ開けている。表現がわかりにくいけど、そうとしかいいようがない。
いつの間にかここはもう、見慣れた桜公園ではなかった。かといって、僕が懐かしく思い描いていた
息を飲んだ僕に、銀竜の青い目が向けられる。
「これがおまえの立ち向かうべき現実だぜ。何なら、やめにするラストチャンスだ」
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