第057話・伐採した木材は町一つ作れるぐらいの量です
◇◇◇
森のみなさんこんにちは、ナナシです。
お嬢様と婚約して三週間ほどたちました。
今日も僕はジェニカさんを連れて拠点の外に赴き、拠点周囲に立っている大きな木を順番に切り倒しています。
丸ノコ結界を押し当てて、と。
チュイーン、……ギョリギョリギョリギョリギョリギョリ!!
僕の身長の何十倍も高く、僕が腕を広げたよりも何倍も直径の大きな木を、切り倒してはジェニカさんの亜空間に運び込み、
ある程度の数の木を切った後は根を抜いて地面を均して押し固めていきます。
地面の水平を取れるようになったらそこまで拠点を覆う巨大結界を広げ直し、また次の木を切りにかかるのです。
伐採した木は、いずれどこかに新しく木造家屋を建てるときに使うか、別の土地に行ったときに、売れそうなら売ってお金にしてしまう予定です。
以前の僕は必要な分の木しか切っていなかった(木像にしたり薪として使っていました)ので、三年かけてもそこまで広場は大きくなりませんでしたが、
この三週間で、すでに神殿前広場の面積は二倍以上になっています。
こんなに広くしてどうするのか、というところでもありますが、拠点が広がればそれだけジェニカさんが安心して活動できる空間が広がるということでもありますので、僕はお嬢様の指示に従ってひたすら木を伐採していきます。
「ナナシくん、そろそろ夕暮れになってきたよ」
どんどこどこどこ木を切っていると、後ろに控えているジェニカさん(簡易概念結界鎧を着ています)から声をかけられました。
確かに、木々に遮られた先の空は赤く色づき始めていて、僕は今切っている分で最後にすることにしました。
切り終わってメキメキと倒れる木を結界壁で受け止めて持ち上げると。
「ジェニカさん、お願いします」
ジェニカさんが、持ち上げた木が通る大きさの亜空間への出入口を創り出してくれました。
僕は、結界壁を使って大きな木をゆっくりと亜空間内に運び込みます。
ちらりと見えた亜空間内には同じようにして運ばれた木が何百本と横たわっており、枝払いぐらいしかしていない丸々と太い木が高く高く積み上がっています。
切った木を運び終えると亜空間の出入口が消えてなくなり、ジェニカさんがふぅ、と息を吐きました。
「お疲れ様、ナナシくん。今日もいっぱい切ったね」
はい、ジェニカさん。お疲れ様でした。
「しかし、こんなに太くて大きくて硬くて立派な木をこれほどたくさん……。これを材木に加工して売れば、どれほどの値がつくことやら……」
ジェニカさん曰く、この森の木々は非常に良質な建築資材にできる物であるらしく、売って欲しい人はいくらでもいるでしょう、とのことで。
積み上がっていく大量の木を見るジェニカさんの目が、時折¥マークみたいになっているときがありました。
「ジェニカさん、もし売るとなったときにきちんと材木として加工していたほうが高値になるというのであれば、使いやすい大きさに僕が切り分けますので」
「え、ほんと! それなら、標準サイズの木柱に切り分けるとして、一本あたりの売値が銀貨十二、いや十五枚にはなるだろうから……」
ジェニカさんの目が、小刻みに動き始めました。
たぶんあれ、頭の中で算術のスキルを使っているんだと思います。
僕も頭の中でソロバンを弾く時は目の前に架空のソロバンを思い浮かべてその玉を動かしますので、なんとなく分かります。
「少なくとも金貨三千枚分以上! ひえーっ、これは売り甲斐があるよ……!」
そんなになるんですね。
僕は適正価格が分からないですし、なんなら金銭価値の感覚もあいまいなので何とも言えませんが。
「あ、そうか。ナナシくん、自分ではお金を扱わないものね」
はい、僕はお金を持っていないので、お買い物はいつもお嬢様かジェニカさんにお願いしていました。
なので金貨とか銀貨がどれぐらいの価値なのかもよく知りません。
金貨がいっぱいあったらお金持ち、というのはなんとなく分かりますが。
「そうだねぇ。どの国でも使える標準通貨だけに限れば、金貨一枚で銀貨百枚、銀貨一枚で銅貨百枚。銅貨十枚あればパンが一つ買えて、金貨二枚あれば私の国の一般家庭四人家族が一月は暮らせるかな」
ふむ、なるほど。
「そこに、国ごとの独自通貨が混ざると交換レートがややこしくなるけど……、そのあたりも興味があるならちゃんと教えるよ?」
いえ、大丈夫です。
たぶんこの先も僕がお金を触ることはあまりないと思いますので。
「そうなの?」
はい。僕、お金を持って人の多いところにいると、お足の綺麗な女性に「お金を払うから足を舐めさせてください」と言いかねないので。
僕はお金を持っていないほうがいいと思います。
「そ、そう……」
それに、欲しいものがあったら自分で獲るか、買う必要のあるものはジェニカさんにお願いするほうがいいと思います。
僕は値段交渉が上手ではありませんが、ジェニカさんならきちんと適正価格帯内で買ってくれるでしょう?
「それはまぁ、そうだね。分かった、また何か欲しいものがあったら言ってね」
よろしくお願いします。
さて、それならそろそろ拠点に戻りましょうか。
僕は、ジェニカさんと話している間も周囲で動かしていた結界壁で集めた、切った木から打ち払った細枝を結界カゴに入れてまとめます。
これらの枝は薪として使う用の物ですね。
調理の際にはどうしても必要になりますので。
「あ、それならちょっと待って。……よいしょっと」
と、ジェニカさんは拠点内から見えない位置の木の陰に入ると、おもむろに右足の靴を脱ぎました……!
ジェニカさん、今日もよろしいのですか……!?
「うん。今日もたくさん頑張ってくれたから。みんなには、内緒ね?」
人差し指を口元に当てて、反対の手で僕を手招きします。
僕は素早く結界椅子を作成してジェニカさんを腰掛けさせると、そそくさと近寄ってひざまずきます。
そした両手で恭しくジェニカさんの右足を持つと、しばしじっと見つめます。
ジェニカさんの生足……!
今日一日森の中を歩き通しで頑張った後の、脱ぎ立ての生足……!!
僕はそっと舌を出すと、まずは親指と人差指の間のところをべろりと舐め上げました。
瞬間、僕の脳ミソがスパークしたような衝撃を受けます。
「っっ〜〜〜〜……!! ……ふぅ、素晴らしいです」
あまりの味わい深さにめまいがしそうになりながら、僕はぺろぺろとジェニカさんのお足を舐めていきます。
足の甲の、中足骨が少し浮き出ているところは骨の筋に沿って舐めますし、
爪先は小指側から一本ずつ丁寧にちゅぱちゅぱと吸っていきます。
それから少しお足を持ち上げさせてもらって地面に寝転がり、自分の顔を足の裏の下に持っていきます。
足の裏はかかとのほうから順番に舐め上げていき、一番最後のお楽しみは、足指の付け根の裏側の部分です。
ここはですね、足裏の中でも硬くなりにくい部分で、そして蒸れやすいところでもあります。
とても味が濃くなるところ、と言い換えても問題ありません。
僕は期待に胸を膨らませながら、べろりと舐めます。
「…………!!」
「美味しい?」
…………はい。サイコーですね。
背筋まで痺れるぐらい美味しいです。
僕はさらにぺろぺろとジェニカさんの足の裏を舐め続けます。
僕は毎回、巨木伐採が終わって拠点に帰るまでの間に、ジェニカさんのお足を舐めさせてもらっています。
以前からの毎日の結界使用料としての足舐めの延長ではあるのですが、実はジェニカさん、僕とお嬢様が婚約したことで僕との関係も少し変化したらしく(お嬢様と同じく対等な立場での商取引をする間柄、ということになるみたいです)、今は別に僕にお足を舐めさせなくても良くなっているらしいんですよね。
けれどジェニカさんは、何かと理由を付けては「みんなには内緒ね」と言ってこっそりお足を舐めさせてくれます。
この、秘密で特別な優しさに、僕はいつも、ついつい甘えてしまっているのです。
いえその、お嬢様にも「見知らぬ初対面の人間相手ならいざ知らず、私たちの中で当人同士の合意がある状態ならとやかく言わないわ」との寛大なお言葉はいただいているのですが。
それでもやっぱりイケナイことをしているような感覚はあって、なんだか無性にドキドキしてしまいます。
やがて僕は、ジェニカさんのお足を舐め終わりました。
はぁ、美味しかった……。
僕がお足を舐め終わると、ジェニカさんはハンカチで足を拭いてから靴を履きます。
そして何事もなかったかのような雰囲気で言います。
「それじゃあ戻ろっか。今日はレミカさんが晩ご飯を作ってくれてるはずだっけ? 楽しみだねー」
そうして僕たちは、拠点を覆う巨大結界の中に戻ったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます