戦い
到着すると、エリザヴェータ様がひとりでアリサ様を背にして戦っていました。
「フレデリーカ様はどこだ」
「あっちです。おひとりで他の襲撃者を相手取っているようです」
わたしが指を指した方向にフレデリーカ様が三人を相手に戦っていました。素人のわたしにもわかるほど手練の三人を相手に押しています。
マルクと入れ違いだったのか、フリードリヒ様も他の襲撃者を相手にしています。こちらは一騎討ちですが、相手はフレデリーカ様と戦う敵よりも強そうです。
押されているものの持ち堪えるのは明白でした。
八対三、イングレース侯爵と他に四人倒れているのを見ると、善戦と言って差し支えありません。
「プリシラ、あの二人は大丈夫。私達はエリザヴェータの援護をするよ」
「はい!術式を展開します」
事前に仕込んだ魔術具を起動させます。
わたしの声を合図に、エリザヴェータ様が吹き飛ばされたふりをして伯爵から距離を取りました。
「アイシクルバレット!」
部屋を覆っていた魔法陣が起動し、伯爵の足元を凍りつかせました。
「タンジェント伯爵!私が相手だ!」
身動きを塞がれた伯爵に対して斬りかかります。
エステリ様はいうなれば魔法騎士、普通の騎士よりも魔法を多用していて今も氷魔法で槍を展開しながらの同時攻撃です。
「甘いっ!」
足を塞がれ複数攻撃が直撃、本来ならここで終わるはずです。
しかし、タンジェント伯爵は剣ですべての攻撃を弾きました。
敵ながら見惚れてしまう華麗な剣さばきです。
「ファイア」
戦慣れしているタンジェント伯爵は攻撃が止んだ一瞬の間に足元を溶かすのも怠りません。
ただ、そんなことは想定済みです。
「甘いのはそっちです。縛られなさい!」
炎属性魔法で強力な熱源を感知することをトリガーに発動する本命の魔術具が伯爵をにたび抑えます。
今度は氷ではなく鎖です。
ただの魔術ではなく本物の鎖と魔術の鎖を複雑に絡み合わせたわたしの最高傑作です。簡単には破れるはずもありません。
「エリザヴェータ、アリサ様を任せます!私はフレデリーカ様を助けます。······プリシラは、いやこっちに来て。レベッカ様、フリードリヒ様をお願いします」
「相成りました。生涯の不覚、決して拭い落とせるものではありませんがここで溶かしましょう」
ローズマリー様やファルメント侯爵も見えます。
人数がこちら側に不利な状況でも相手は押されつつあり、そこにさらに加勢が来ました。
これで、守れる。
そう確信しました。きっとこの場にいる誰もがそう思ったでしょう。
しかし物事はそう簡単には行ってくれないようです。
「消えていく······」
エステリ様が切ったはずの相手が霧散しました。
胸騒ぎがして後ろを振り向くと、ファルメント侯爵にイングレース侯爵は眠りにつき、タンジェント伯爵も雲のように消えていきます。
そして、アリサ様も······
最初からここにはいなかったのです。
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