睡眠薬と襲撃

「騎士!総員配置につけ!敵襲だ!」


仮眠中に木霊した叫び声でわたしは目覚めました。

これは誰の声でしょうか、あぁファルメント侯爵の声です。


「なんか眠気が······ふぁぁ」


食事を終えた頃から段々と眠くなってきて、そのまま眠ってしまったような······そう、前に服用した睡眠薬みたいな効能で·······


「はっ!睡眠薬!混ぜられたんだ!」


その事実に気がついて目が冴えました。

同じ食事をエステリ様も取っています。

騎士として耐性がある可能性は否定できませんが食事量はお腹が空いておらずほとんど食べなかったわたしの数倍です。


慌ててエステリ様のお部屋に行くと案の定眠ったままでした。


とっさに常用している状態異常解除の魔法を使ってエステリ様の睡眠薬の効果を消去します。


「エステリ様!」

「どうしたのプリシラ」


わたしの魔力の少なさとエステリ様への睡眠薬の強さのせいでしょう。眠気が完全に取れたわけではないようです。


「襲撃です!わたし達は睡眠薬を使われていました!今はファルメント侯爵が起こして回っているようです」

「なんだって!?急いで向かわなきゃ!」

「エステリ様、マルクです。起きてください」


すぐに部屋を出ようとすると、マルクの声が聞こえました。


「マルク、状況を」


エステリ様は装備を整えながら聞きました。緊急時のため挨拶などは省略し、端的にです。


「襲撃があった模様、今はエリザヴェータ様とフレデリーカ様がアリサ様を守っています」

「他は?」

「眠らされているようです。私とファルメント侯爵は食事前だったため起きていますが他は····」


食事後に急激に眠気を催していたと侍女から証言を取っているようです。


「被害は?」

「イングレース侯爵が既に······息はありますが彼女が倒されたことでかなり厳しくなっています」

「魔術具はどうしたの?あれがあれば時間は稼げたはずでしょ?」


魔力で押し切ることができないように改良した箇所もあったはずです。

何があっても用意する時間は最低でも作れると踏んでいましたのに。


「破壊されています。ファルメント侯爵が言うには術式を理解したように手際が良かったと」

「やっぱりあれは伯爵が」


それを言い終えることもなくエステリ様が言葉を発します。


「分かった。とりあえずマルクはこのまま起こしていってくれ。この警報の魔術具を使うといい。プリシラのものほどではないが十分に起こせるだろう」

「ありがとうございます」


マルクは魔術具を作動させて他の部屋へと走っていきました。


「プリシラ、君も」

「いいえ、わたしも行きます」

「危険だ!」

「承知の上です」


わたしの魔術具が抑えられなかったせいでこの惨劇なのですから、わたしが責任を取らねばいけません。


「それじゃあ行こう。くれぐれも危険を感じたら隠れるように」


エステリ様はわたしの決意を感じ取ったのかそれ以上止めることはありません。

わたし達もマルクが示した場所に走りました。






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