誰だってやり直したい過去はある



 ー 平成?  8月 スラー家 夕方 ー



 「少し風に当たってきます」



 僕は宿題をこなす彼女達から逃げた、行く当てなんてないですけれど。



 

 逃げたってどうにもならない、問題の先延ばしなんですよ、

そんなことは分かっているつもりです。けれど・・・・




 不意に着信音が鳴る、ポケットに入っていたガラケーが振動した。


 

 いやこの時代ならケータイと表現したほうが正しいですね。



 緊急連絡先を私的利用して僕のケータイ番号を知ったのでしょうか?



 「もしもし?」

 


 「あー私だ。どうだいニャラケル君 ” キョウカ君の世界は? ” 」



 「先生も気が付いていたんですね、今会えますか?」



 「私は問題ない、なんならキョウカ君の家のすぐ近くまで来ている」



 「では彼女の家の前で、10分ほどで着きますので」




 先生もすでにここが非現実だと気が付いている。


 でも脱出しないのは何故? 

 


☆☆☆



 ー 8分後 キョウカの家付近 ー 

  


 「待たせてしまいましたか?」



 「ん~にゃ、今着たところだ。ほらアイスでも食べなって」



 「あ、ありがとうございます」



 夕方というのに気温30度超えてますね。


 普段の僕なら絶対に外出しないよう努力してますし、

先生を待たせないように軽く速足で来たのも体のほてりの原因。


 なんのそっけないソーダ味のアイスさえ嗜好の味と勘違いしてしまう程度に。


 

 先生はバイクを降り歩きながら押していくようです。


 そんな体力あるなら駐輪場でも探せばよかったと思いますが・・・。



 「単刀直入に言おう。キョウカ君を救ってくれ」



 「頭を下げられても困ります。


 あなたは未来で不正キョウカがどんな目に遭うか知っているはずですよ?」



 「・・・・・・・自身の体を売って利益を得たことか」



 「分かっているなら自分の手で何とかするべきですね、

あなたは教師であり大人なんですから」



 「返す言葉もないな」



 そこまで凹まれると僕が悪者みたいに思われてしまいます。



 「スス君達から色々聞いたよ。

未来は救いようがない世紀末世界だってことも、

私がキョウカ君を救えなかったことも」



 「それでも僕に頼る理由は何です?


 いえ誰に頼まれずとも

僕たちはこの世界から脱出して本物のキョウカさんを助け出します」 



 「そうか・・・キョウカ君は最終的にいい友達を持ったんだな」


 

 「まだ何も始まってもいませんよ?そして終わってもいません」



 「ああ、馬鹿な教師が見放さず最後まで支えることができたなら、

あんな結末にはならなかっただろうな」



 「無理心中・・・・」



 「 ” 今度こそ ” 私は失敗をしない。


 君たちがいなくなってキョウカ君がただ1人残されたとしてもだ!!」




 今度こそ?いまいち会話がかみ合わない。


 僕の知ってる先生の中では不正キョウカは生きている、

けれどこの先生はまるで死んだかのような話し方だ。



 「あなたは・・・・先生は ” 平成 ” か ” 令和 ”

どちらの人間なのですか?」



 「さあな?だが人生の中で全部が全部うまくいった奴なんていない。


 だれだってやり直してみたいことはあるものさ」



 「つまり僕たちが邪魔だから未来に帰ってほしいと?」



 「違うな。君たちには君たちの世界がある。


 誰かの妄想でも過去の遺物でもない未確定の未来が。


 だが選択肢は君に任せる。



 この世界で ” キョウカ君やスス君と共に過ごすか ”


 ” スス君が死ぬ未来か ”



 どちらにせよ私はキョウカ君と過ごせるのだから問題はないがな!

あははははははは!!!」




 「鬼ですか!!!!」




 「確かキョウカ君にも2択の質問をぶつけたか。


 ” みんな ”の為に生きるか、他人を出し抜いて利益を得るかってな」




 「当時の不正キョウカは先生に憧れて後者を取りましたが、

身の丈に合わず破滅した。



 ですが僕は僕の為にスス伯爵を延命させるルートを取ります。


 彼女が足掻き苦しみながらも勝利をつかむ姿にあこがれを抱いたからです」




 「辛い道だぞ?」



 「それでも進みます。こうなったのも僕が原因なんですから」



 

 先生の顔に笑顔が戻ってきましたね。




 「あははは!お互いキョウカ君に振り回されっぱなしだな」



 「ええ、お互いか弱き有機生命体を救うんです」ニィ




 指切りげんまんをした後先生はバイクで去っていきました。



 僕の不手際でススパパは死んでしまうのが現状の結論、

だけど僕なりの方法で抗って見せるってんですよ!!!




 それにしても ” 僕達の先生 ”は今頃何してるんでしょうかね?






☆☆☆



ー あとがき ー




 ー 裏路地 ー



 異世界先生 「どうだったかい?私の自慢の教え子達は?」



 地球先生  「皆いい子だったさ。

       それに・・・初めて担当クラスを持ってみたが案外悪くない」



 異世界先生 「いくらクローンだからって異世界でばったり会うなんて

       想定外だったからな。


       私は私で情報収集できたからそれでいい」



 地球先生  「正直バレてたと思うが入れ替わりには

       意義があったみたいだな」

 


 異世界先生 「・・・・・キョウカ君を救う気になったかい?」



 地球先生  「当然だ。お互い禁酒の証でも立てるか?」



 異世界先生 「それは無理!!!!」


 

 地球先生  「だな!!!」



 2人    「「あはははははは!!!」」


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る