錬金術師VS夏休みの宿題




 ー アザミ高校 朝のホームルーム 廊下 ニャラケルサイド ー



 すべてが狂ったこの世界。


 僕は異世界から地球に戻ってきたようだ、

文字が日本語で言語もそう。


 通学経路も駅も同じ。


 これはススパパの精神世界?

いや前世である 不正 キョウカ のと言ったほうがいいか。



 僕にも半分ススパパの遺伝子が入っているが

 ” 思い出 ” と呼ぶべき事象は存在しない、

生後1年にも満たない赤子ですから。


 

☆☆☆




 「じゃあ今日のホームルームを始める前に転校生を紹介しよう!!!


 都会からはるばるやってきた女子だ、


 コラ男子共騒ぐなって、気持ちは分かるけどな。入ってきたまえ!!!!」



 この声聞いたことがあるんですが・・・・・・。



 もはやこれは 不正 キョウカ の追体験ではない。


 彼女の願望と呼ぶべき世界ですね。


 本来保健室登校のキョウカは保健室の先生と出会うことで

立ち直るきっかけを貰った、

だが担任にはなっていない。


 彼女は何が目的でこんなことを?





 

 「お~い、入ってきたまえ」





 少し長考してましたね、教室に入ってみれば分かりますか。



 立札には2ーAと書いてありますが同学年の別クラスはない。


 

 僕は意を決し2-Aの教室に入った。




☆☆☆



 ひと通りクラスの仲間と先生に会釈をし黒板に自分の名前を書く。




 

 「ご紹介に預かりましたニャラケルです。よろしくお願いします」






 何僕は挨拶しているんでしょうね?


 こんな世界一刻いっこくも早く脱出するべきなのに。


 

 「両親の都合で転校してきたわけだ。


 まあ髪色が2色で別れているが写真撮影の時は黒に染め直してくれよ?


 この学校は過疎っていて生徒の頭髪とか言ってられないくらい

問題だらけだからな、あははははは!!」



 

 た、確かに僕の髪色は2色ですが・・・・。


 赤毛に薄い青色、暗い金髪、緑髪の先生・・・・・。


 地球なのに異世界と同じメンバーがいる気がします。



 「席はそうだな、キョウカ君の隣でいいかな?」



 キョウカ?まさかキョウカさんもここに?

彼女は拉致されたはず。



 とてとてとキョウカさんが歩いてきて僕の手を引く。



 どこかの長女もお淑やかさを見習ってほしい物です、

そう思いながらクラスの人々を見渡していると例の長女がいた。



 「す、スス姉さん!!!!!!!」



 流石にパパ呼びはまずいと思って姉さん呼びにしましたが

グウゼン テ コワイ デスネー。



 「ウチもおるでー」

 「何だ奇遇だな、虹渡アヤメだよろしく」

 「不正キョウカです、よろしくねニャラケルさんっ!!」




 全員そろってるのに何遊んでるんですか!!!!!!


 仮想世界に入り浸りすぎですよ!!!!!!



 ☆☆☆



 長かった。ことあるごとに対立するスス姉さんとアヤメ。

 

 教科書を忘れたアヤメに対し席をくっつけて見せるキョウカ、

それに嫉妬するアオイ姉さん。


 そしてクラス中に、もみくちゃにされる僕。


 勉強なんてできたもんじゃない賑やかさの中で今日の授業は終わった。




 

 何より辛いのはジェネレーションギャップだ。




 流石に体育だけは男女で別れていましたが、

教室から男子共を追い出しタオルを巻いて水着に着替える女子共・・・

バーサーカーか何かで?


 男子は教室横の空き部屋で着替えている様子、

更衣室なんてものは存在しません。




 プールはコンクリートで固められていて油断するとケガしそうだし、

お風呂みたいな塩素水が浸かった消毒用の腰洗い槽なんてものがあった。

 

 そしてシャワーが鬼のように冷たいし腰洗い槽も同様、

高校生が1から10まで数える地獄。


 子供ですか、あなた達は。


 消毒用の水洗い器は誰かのイタズラで出力マックスで水が出ますし、

失明とか怖くないんですか?





 そして何より教室にエアコンがない事だ。 


 これに関しては私立なら完備されていますが、

全ての公立高校に備え付けられているとは限らない。


 こんな熱い中で冷房もなしに勉強していては効率が落ちるばかり。


 窓開けて風を祈る ” 風乞い ” を心の中でしてましたよ、ええ。



 

 散々書きましたが、皆の楽しい様子を見るたび決意が揺らいでいきますよ。


 僕もここに居ていいのだろうか?


 多分、いや・・・・楽しいんです。



 ここには僕を化け物でも見たかのような視線がない。


 興味本位でセクハラしてくるのは男女同じ、

スス姉さんの言葉を借りるならば

 ” 大多数の人間は愚かな人類であると ”

・・・なんとなくわかった気がします。



 多分彼らは大多数に属さない稀有な存在。


 お金とか地位とか関係なく全力で馬鹿なことに命を懸けるヤバいヤツら。


 青春という毒にやられて狂乱する有機生命体。





 なにより彼らは心から笑っていたのだ、

そんな群衆に当てられれば僕も祭りに参加したくなる。



 これが ” 思い出 ” という物ならば僕は・・・・・

スス姉さんを含めた僕たちは陥落するかもしれない。 


 


☆☆☆



 「じゃ今日の授業は早めに切り上げて、夏の宿題配るぞ~」



 クレームが湧く中僕は立ち上がり抗議します。



 「今日がもしかして終業日?僕1日しか登校してませんが!!!!!」


 

 「あー、都会は知らないが田舎は割と自由でな、

まあ顔見せにはなっただろう?あはははは!!!」





 こういうのって区切りのいい新学期から転校させますよね?


 


 「ちゃんと裏の席まで回せよー。

あと進学組は受験もあるから答え写して終わりなんてズルはするなよ?」


 

 甘いですね先生、僕たちは未来人と言って過言ではない。


 答えを写すのは所詮は平成の考え!


 読書感想文なぞAIに書いてもらえばいいだけの事!!!


 にゃひひひひひひ!!



 ここスマホ圏外でしたね。ならば!!!!





 「あとオークションサイトで宿題代行なんて手段も使うなよ?」



 「「「チッ」」」



 「今3人舌打ちした!!!!私以外の教師だと体罰で拳飛ぶからな!!」



 この時代教師が体罰するのですか?

 

 まるで平成とか昭和の価値観じゃないですか!!!!






 違う、突っ込む所はそこではないんです。



 ” 僕 ” 以外に未来の解決法を知っている生徒が2人いることだ。



 あたりを見渡し犯人捜しを・・・・はぁ動揺で分かりますよスス姉さん、

そして虚空を見ているアヤメ。



 今回の件で確信しました、

少なくとも錬金術同好会のメンバーは全員記憶を引き継いでいると。

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