異世界なら人体錬成も合法ですよね？

銀の主人公編完結！ ラストフライト

先生はどうやって僕を殺すのだろうか。

先生の妹と同じく宇宙の藻屑がちょうどいい。

しかし先生に動きはない。むしろ何か考えているのか？

　「なあ、先ほどから赤の主人公と緑のヒロインの話ばかりだ。

真紅の主人公君の話はないのかい？」

　「ありませんね。僕は彼女を知らない」

　「”これで緑の願いは叶った。本戦リーグベスト４の組み合わせで勝利”の

言葉が妙に引っかかってな。

君の発言では大会で結果を出せなかったはずだ」

　「そ、それは優勝できなければ裏口入社が・・・・」

　「ふむ、では私に突っかかる理由を教えてもらおうか。

本来君を殺す役割を持っているのはパートナーを失った赤の主人公のはずだ」

鋭い。偽物でも先生は先生だ。

　「君の意見も正しいし、真紅の主人公君の意見も正しいとするならば・・・

真紅君の世界では１度君に勝っていることになる。

葬式に行かなければメンタルがボロボロになることはない」

　「・・・・・・・」

　「この世界が主人公になりきれなかった者たちの救済場なら

主人公の数だけ世界がある。例えばだ。

ーーーー赤の主人公ーーーーー｜銀の主人公ーーーーーーーーー

ワイヤーが切れたことで主人公としての役割がシフトしたとか

ーーーー真紅の主人公ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ワイヤーが切れない世界だって存在しうる。

君は真紅の主人公君に聞いたんだろ？

君が歩めなかったハッピーエンドを。

妹の手術が成功し、私に恩義を感じた世界が」

　「やはり隠せませんか。流石ですね先生」

悔しいが真実を話す時が来たようだ。

　「全て先生の推察通り。

僕の世界ではバットエンドを迎えました。

でも別の主人公ならその過程はクリアできているんです。

イツワリの主人公として歩んだ僕を否定されたくなかった。

けれど僕の世界では先生の妹を殺してしまうきっかけを作ってしまった。

ただ先生は別の世界で僕の妹を救ってくれた恩義もある。

殺してほしいと思いつつ、先生の助けになりたかった。

全てを曝して楽になりたいと思うときもあった。

ただ先生といる日々は賑やかだ。永久に続けばいいと思った。

けれど僕は殺人鬼だ。

それでも」

　「ああ、言いたいことも分かるし君を咎める権利も私にはない。

だから玩具で勝負と行こう。

まだ思い出せるだろ？君の愛機を」

　「この流れで玩具で戦うんですか！！！！」

　「もうお互い引くに引けないだろ。

私はこれ以上人殺ししたくないし、

君のバットエンドルートではオリジナルの私でも説得不可能だ。

多分君を殺してる。

しかし私はクローンだからな。あははははは」

　「まったく、支離滅裂な先生だ」フッ

　「今鼻で笑ったな！！！オリジナルの妹が作った

”血の流れない戦争”でコテンパンにしてやるからな！」

　「・・・・・分かりました。これが僕のラストフライトだ」

　「ヨシ！！戦う（やる）か！！！！」

☆☆☆

あれからどれほど戦ったのだろうか。

童心に帰ったというべきか、いろいろ考えるのが馬鹿らしくなったというか

先生のペースに終始押されていた。

いや分かってたんだ。殺されるために生きるなんて無意味だという事は。

もしこれが本物のロボットなら何度も殺されていた。

たかが玩具とはいえ全ての感情をぶつけて戦った。

先生を支えようと、殺されようとした二律背反の旅はもうすぐ終わる。

先生の妹製作のロボットホビーでというのが皮肉だ。

彼女を殺した遠因だというのに。

対戦相手がいなければ成立しない＝先生と僕の２人でなければ成立しない。

勝者はどちらか独り＝殺される。

奇しくも願いを叶えたその玩具は僕の感情を悟り消滅した。

機械に心があるなんてありえない。

だがもしそんな世界があったとしたら・・・・・・。

きっとワイヤーが切れず、赤の主人公が戦い続けた物語だと思いたい。

　「もう行くのか？本当に後悔はないかい？

ここにはもう君と私しかいないからどんなワガママでも聞いてやれる」

　「ええ、ありがとうございます。

そうですね、もし生まれ変わっても先生のそばにいたいです」

　「あはははは！なら来世も勉強をするべきだな！

もし行き詰っても大丈夫だ。私は保健室に何時でもいるから！！！」

　「お元気で、僕にとっての”本物”の先生」

　”先生”はどの世界でも僕たちを救おうと藻掻いていた。

　本物偽物なんて括りでなく、教職者として、人として。

　この世界で僕を救ってくれた先生も、

僕の世界で妹の手術をしようとした先生も、

まぎれもなく僕を救おうとした”本物”の先生なのだから。

☆☆☆

皆いなくなっちまったな。

そりゃ星の数ほどの悩みを解決してきたんだから思い入れもある。

もうこの保健室は必要ないな。

さぁてと生まれ変わったら何しようかねぇ。

部活動でも立ち上げたり、学生と一緒に文化祭を楽しんだり、

保健室登校の子を必死に説得するのもいいか。

なんだ、結局保健室勤めじゃないか！

あはははは！いっちょなってみますか！！！

誰でもない”本物”の先生ってやつに！！！

あははははははははははははははは

　ー　外伝　銀の主人公編　完　ー