裏口就職

 「どんな形であれ勝ったことには変わらない。

 これであなたとあたしの夢は叶った。

 ”妹さんの手術”、受けてくれますよね?」


 「ああ、約束しよう。すまなかったね、

 僕のワガママでこんなところまでついて来てくれて」


 「そう、よかった」



 赤の主人公はにっこりと笑い、光の粒子となり消えた。



 「これで緑の願いは叶った。本戦リーグベスト4の組み合わせで勝利。

 そして俺の願い。

 ”もう1度赤の主人公が戦う姿”も見れたからな。

 思い残すことなどない。

 地獄の覇者として名を馳せてくるさ」


 「行先は地獄行き確定か。

 あはははは!君らしくていいか!

 達者でな!!!」


 「無論だ!!!」


 先生と真紅の主人公は拳を突き合わせ、満足した様子だった。

 内心この決着のつき方には納得していないであろうが

 願いが願いだ。赤の主人公が納得したならば

 真紅の主人公もそうせざるを得ない。

 彼女もまた天に昇る光となった。




 2人の主人公が生み出したバトルマシンも消滅しかけている。

 そして緑のヒロインも同じく。



 「こんな方法でしかあの2人は救えなかった。

 私とペアを組んでもたった1度しか傷を付けれなかった相手だから」


 「そうだったのか。君には悪いことをしたな、

 悪役を背負ってくれて」


 「あら?私はあくまで2人が願ったヒロイン像であって

 本物ではないから。

 逆にこんな卑怯な子と思われているのがショックよ」


 「あはははは、何にせよ楽しかったさ。

 最後に叶わないと思っていた君の顔も見れた。

 私も消えてなくなっても後悔はないさ」


 「でもそれは会長を説得してからにしてくださいな。

 それが姉さんに与えられた最後の仕事。

 職務放棄なんて恥ずかしい事しないでくださいよ?」


 「会長?銀の主人公君の事か!」



 先生が僕の方を向いた隙に先生の妹は姿を消した。

 彼女らしい空気の嫁無さというかなんというか。



 「・・・・・なんだかんだ寂しいものだな。

 幾億数多の時を経て片っ端からこの世界に流れ着いた魂を救済してきた。

 最後の最後でいままで支えてくれた君が相手になるのか」


 「懐かしくもあり、興味深い日々。

 油断をすれば成仏する世界で僕が生き残っていた理由。


 1つは先ほどの試合。

 僕は赤の主人公と緑のヒロインと賭けをした。

 彼女たちが勝ったら僕の妹の手術をする。

 僕が勝ったら病気の妹の葬式に出てくれと」


 「まっ!待ってくれ!!!じゃあ2人とは知り合いだったのか!!!

 いやそれなら私が偽物だってことも知っていたはずだ!!!!」


 「勿論です。

 2人を結んでいたワイヤーが突如切れて両機体は吹き飛んでいった。

 攻撃と回避に依存していた運命の糸と呼ぶべきそれが

 無くなれば彼女たちに勝機はない。

 コンビネーションプレイが出来ずになし崩し的に敗北。


 もし僕が馬鹿な提案をしなければ彼女たちは笑って過ごしていた。

 もしワイヤーが切れなければ彼女たちは主人公として過ごしていた。

 もし人生をやり直せるならここを変えたかった」


 「そりゃ偶然だ。君が気負う必要はない」


 「ですが僕は勝負に理由を付けて妹の手術を断った。

 その主治医たる先生の目の前で」


 「!!!!オリジナルの私か!!!

 だがロボットホビーはあくまでツールだ。

 いやホビーアニメならともかく、命までは賭けなくてもいいだろう?」


 「先生の妹が就職最難関企業の裏口就職を作ったんです。

 大会で勝てば結果を出せると。

 その時点でただの玩具が就職戦争の道具としての意味を持った。

 先生の妹が玩具の勝負で約束を庇護したら

 この裏口就職すら嘘と思われる。


 先生の妹にとっては玩具ではなく、

 社会人で言う印鑑や署名のような重要なファクターとなっていたんです」


 「無駄に優秀だったんだな妹」ドン引き

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