外伝 ロボットホビーと銀の主人公

狂現思装の演劇譜

 前回でニコラス君の、いやスス君の活躍は終わり、

 彼女は次のステージへ向かった。


 ここから先は錬金術など関係ない、僕個人の話だ。

 先生は”銀の主人公”の称号を与えてくれたけれど・・・・・

 僕の最終目的は”先生に殺してもらう”ことだ。


 先生の妹を殺めた遠因。


 それが僕の罪であり先生に付いてきた理由。


 ・・・・なにか圧力を感じた気がするから宣言しておこう。

 僕は女だ。銀のショートヘヤ―で学校指定の制服。

 生徒会長を務め、”裏口”を使わずとも

 就職最難関企業への推薦を勝ち取れる程度の学力。

 巷では王子様系とか言われていた。


 趣味は妹だ。

 お風呂で身体を洗うのも自分では無く妹からだし、スマホの待ち受けも妹。

 何度も同性に告白されたが妹以外とデートする気なんて起きない。




 繰り返すがこれはスス君の物語ではない。



 ☆☆☆


 ー 魂の墓標世界 ー


 赤  「蒼をまといし2人の覚悟!!!」

 真紅 「俺達で目指す世界創造の最終回答!!!」





 真紅の主人公は赤の主人公とそっくりだ。

 赤いツインテールで背も胸も幼児体型な少女。

 見分け方は赤の方は絆創膏、髪の毛が血のように濃いほうが真紅だ。

 どちらも制服の袖から手を出ていない。

 成長期は訪れなかったようだ。

 戦いを交わす度強さを増していくのが分かる。



 そして今は先生の妹が作ったロボット玩具のシステムでの戦いの最中。

 赤の主人公が持っていた15cmほどの玩具に合わせ、

 真紅の主人公もそのサイズの自分を模した機械を出す。

 真紅の主人公の機体に赤の主人公のロボットパーツが分離装着。


 ・・・・そう。君たちはまだあの事件を引きずっていたんだね。

 もうお互いの名前も愛機も思い出せない時を過ぎてなお、

 戦いで刻まれた思いは深く深く残っている。



 「あはははは、懲りずにまた合体か!!!

 だが私たちの機体のほうが合体に有する時間は短い!!

 それにここには観客もスポンサーもいないからな。

 卑怯と言われようがこれでトドメだ!!!!」


 「恨まないでくれ」



 先生と僕による合体口上中の攻撃。禁じ手に等しい。

 だがまるで予想していたかのように躱された。



 赤・真紅 「「ソウエン・クリエイト!!!マエストーソ!!!」」



 おかしい。赤と真紅の主人公は幾度となく先生の奇襲を躱せなかった。

 何かカラクリが?



 「そう、確かにこの2人は直情的で行動を読みやすい。

 だから3対2で正々堂々行かせてもらうわ」


 「なっ!!!まさか君は!!!!」



 雰囲気が変わった?いやこちらの思考すら読んでいるのか?

 間違いない。この戦い方はあの時の。



 「土壇場だけどここまで持ってこれた。

 決戦システム”深緑の双璧しんりょくのそうへき”」


 「ああ、俺と赤の主人公の意識を同調させ、緑のヒロインを妄想。

 そして彼女の戦い方をコピーしたこの機体を依り代とする!!」


 「ようは真似っ子とか思い込みなんだけれどね」



 懐かしいな、このやり取り。

 真紅の主人公は居なかったけれど、

 赤の主人公がトンデモ理論を話し、緑のヒロインが正論でおとす。

 ・・・・そんな2人の仲を引き裂いたのが僕だけれども。



 「あははははは!そうか最後の最後で妹が相手か!!!

 道理で成仏するのが遅いわけだ!!

 行けるな銀の主人公君!!!」


 「ええ。手加減はなしで」



 戦闘機モチーフの人型にバイクの装甲を下半身だけ

 纏った僕たちの機体は負けなしだった。

 だが次第に押され始める。

 機体スペックではない、先生の気持ちが揺らいでいるのだ。



 赤・真紅・緑 「「「SPスキル!武装鳥銃剣クレッシェンド

       イグニッション!!!」」」


 「先生!!!」


 「大丈夫!重武装合体は機動が遅くなるだけ!見かけ倒しだ!」


 鳥のような武装集合体のサポートメカを呼び出す赤と真紅に対し

 背面の風神のような円形パーツから円盤状の妹を射出。

 ビームでけん制を繰り返す。



 「でた!ル〇バみたいなビルを走る自走砲いもうと!!!」


 「自分の名前は思い出せないのにルン〇は覚えているのか」呆れ


 「どう考えても目立つからな!!!!戦場でビーム出す〇ンバは!!」



 赤と真紅の主人公は性格は違えど突っ込むポイントは同じのようだ。



 今までと戦い方が違う?

 いつもの赤の主人公なら余剰パーツを出さない完全合体。

 しかしサブアーム8本に剣を持たせ両手にも大型剣装備の10刀流。

 必要最低限のパーツで余剰ありの合体、緑のヒロインの差し金か?



 「この勝負姉さんの隙をつかないと負ける!!だから!!」


 「ね、姉さんということは!!!やはりオリジナルの!!!!」


 「今よ!!!」 「ちょっ正気!!!」 「相変わらずだな」


 「先生!!!!!!!!!!」



 狼狽えている先生の隙をついて無言で串刺しにする。

 緑のヒロインのでまかせに先生と僕は敗れた。


 僕たちの知っている先生はここにはいない。

 ”偽物”と分かっていてもすがるしかない。


 諦め、無念、後悔。それをぶつけずに来世になんて歩めない。

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