夢のまにまに

 先生がひるんでいる今がチャンスですね。

 攻め立てるなら今でしょうか。

 

「人生を悔い改め、独りで生きることを止めたんです。

 ・・・・・といってもつい最近過労でぶっ倒れて別世界の先生に

 説教食らったのが原因ですがね」


 「別の私か・・・・。きっといい人生を歩んでいるだろうな」


 「そうやってネガティブになるのは昔の私を見ているようです。

 けれど先生は今独りじゃないんでしょう?


 私には見えませんが各世界の主人公たちが先生を頼っているんですよね?

 だから友達煽りなんて効かないはずなんです!!!

 私の時と同じで諦めてそれで終わりでいいんですか!!!!

 その後の生徒の運命を決めるのが先生、教師としての責務!!!


 何もかもから逃げていては先生に頼ってくれる魂たちが

 満足に成仏なんてできませんよ!!!!!!」はぁはぁ



 らしくありませんね。声を荒げて、ええ、自分でもわかっています。



 「私はそこまで強くはないさ。

 君たちが見ている前でカッコイイ大人を演じていただけ」

 

 「そんなの分かり切ってると思います。

 そのうえで主人公たちは先生に頼ってるんです。


 勿論私も。私には私の世界があって先生にも同じく世界がある。

 それが異世界かこの空間かの違いなんです。


 先生は言ってましたよね?ここが”保健室”と。


 なら保健室登校の主人公たち全員を卒業させてあげて下さい。


 ・・・・いえ先生なら出来ますよねぇ?きひひひひひひ」


 「天の川ぐらいの生徒全員か!!!!

 あはははははは!!君は無茶を言う!!!

 だが!これぐらいしなきゃな。

 キョウカ君の先生で、みんなの先生であるために!!!!!」



 「・・・・もう大丈夫そうですね、先生」


 「心配かけたな。

 友達もできて新たな人生を歩みだした君は私を越えた。完敗だ」


 「それは先生の指導あってこそ。

 私は錬金術の学園を作ったんです。

 もしよろしければ私に教師としてのアドバイスをくれませんか?」


 「私と逆のことをすればいいのさ。

 独りで何とかしようとせず、自分の才能に過信せず。


 今、君から教わったんだ。



 結局──君とお酒を交える機会はなくなっちまったな」


 「あんなもの百害あって一利いちりなしです」


 「あははははは!その通りだ!


 生まれ変わったら保健室の先生として就職して見せるさ。

 ・・・・・キョウカ”先生”、頑張れよ」



 そこからはもう私が泣き崩れてしまいました。

 お互い背中合わせのままでしたが、先生の背中のぬくもりが暖かくて・・・。


 先生に立ち上がる勇気を与えてもらって自分で踏みにじった人生。

 それは自分の力量りきりょうが足らなかっただけの事。


 もしまっとうな道を歩んでいたら先生を救えたかもしれない。


 傲慢な考えかもしれないが、私は遅場せながら叶えることができた。


 もうこの”保健室”に立ち寄ることはないだろう。


 私が頑張る時なのだから。

 先生が無茶をする時だから。


 保健室登校を真の意味で卒業した私はこの”保健室”を後にした。






 ☆☆☆



 天の光は全て愛。

 再起不能な私を救ってくれた生徒。

 この主人公ひかりを全員救えなんて無茶な約束を胸に教壇に立つ。







 彼女だったか彼だったか、もう名前も声も思い出せなくなっちまったが

 その生徒は2度と私の前に現れなかった。


 きっと立派に主人公せんせいをやっているんだと思う。



 ならば私も負けてはいられない!



 「よし!授業を始めるぞ!!!!あははははは」

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