咎人共が夢の後



 私は全てを先生に話した。


 先生に憧れてカッコいい生き方をしようとしたが

 上手くいかず過激な接待で面接を通過した事。

 先生と別れた後も夜遊びをしていた事。

 結婚後もそれが原因で離婚した事。

 そして転売という卑劣な行為で生活費を得ていた事。


 徐々に先生の顔が曇っていくのが分かる。

 でもこれは変えられない罪。



 「辛かっただろうな。だがそんな君を突き放した私にも非がある。

 私の生き方と同じ、いや私にこんなことを言う資格はないな」


 「どうしたんですか?俯いて?先生も悪い事してたんですか?きひひひひ」


 「ああ。人殺しだ」



 私の背後へと移動し語り始める先生。

 多分こんな顔を見られたくないんだろうなというのが答えだろうか?



 「私も副業で医者をやっていてな。

 そこで悪い大人の取引に応じちまった。

 遺産を早めに相続するため、病弱な父親を”事故”に見せかけてくれってな。


 当然反対はしたが提示された額が額だ。文字通り遊んで暮らせる。

 苦肉の策の末、先進医療の生贄として利用させてもらった。

 生きた人間での臨床試験。

 私は最善を尽くしたが成功確率は5パーセントにも満たない。


 臨床データは生かされ医学の発展の礎となった。

 独りを犠牲に何人もの人たちが命を紡いだ。


 勿論批判めいたことは言える。

 ”トロッコ問題”と同じだ。

 独りを犠牲にして大勢を救う選択をした。


 だが目の前の命を犠牲とし、他の命を救うのが正義ではない。


 もっとも成功報酬を貰った私が絶対悪ということに変わりはないがね」



 「ふぅ。そうですね、この件は先生が悪いです。

 トロッコ問題の模範解答は”何もしない”が正解です。

 この場合なら”依頼を受けない”が定石。


 先生は断れる立場にあった。その事実は変わらない」


 「転売屋の君に言われたくはないな」


 「ええ。それも正論です」


 「あれ?そこ肯定しちゃうんだ」



 あまりの張り合いのなさに情けない声が出てますよ、先生。



 「人を殺したのは”仕事”の為でしょうに。

 地球に住まう人間たちは仕事になるとキ〇ガイになるんです。

 雇われ上司が経営者目線でとかほざいたり、

 たかが仕事で負い目を感じて自殺したり、

 ええ、トチ狂ってます。

 私は自分を捨てて働けるタイプではありませんので」


 「へ、ヘイトスピーチ」


 「特定の人権後進国ではなく人類全体を指しているので差別ではありません」


 「お、おう」ドン引き


 「私は愚かな人間が滅びればいいな☆バーカバーカと考えてますから」


 「それラスボスってやつだからな!!!!!」



 これで少しは場の空気が和んだのでしょうか?



 「当然転売屋の私は地獄行き。他人の幸福を奪いましたから」


 「だがそれは家族を養うための手段だろ?

 私と違って逃げる選択肢はなかったはずだ」


 「でも第3者の視点、エンマ大王は違いました。

 先生も実際危ないラインだと思います。

 功罪で功のほうが大きくとも、彼女は減点方式を取りますので」


 「ますますここから出たくなくなったよ」引き気味


 「地獄での過酷な肉体労働で罪を清算し私は異世界に転生しました。

 そこで・・・・・・」


 「そこでどうしたんだ?」


 「先生の人生を否定する神の一手いってを打ちます。

 覚悟はいいですか?」


 「あはははは!並みでは崩せぬさ」



 呼吸を整え禁じ手を放つ準備をします。

 嫌われるかもしれない。

 失望されるかもしれない。






 それでも!!!!!!!!











 「友達おりゅ?」


 「ごばぁ!!!!!!!


 キョウカ君!!友達煽りは魂の殺人なんだぞ!!!!!」吐血



 結構効きましたね。よいこは真似してはいけませんよ?

 この必殺技は例の壁画にも書かれてますので。



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