天の光はすべて夢
ー 魂の墓標世界 ー
「ふぅ、着陸成功しましたね」
ススは柱に顔を打ち付け三途の川と思っている場所に到着した、
いや頭から墜落した。
ぺっぺっと口に入った砂を吐き出し、コインを渡して船に乗り込む。
以前来た時と同じで星は無数にあり、川は透き通っている。
・・・・無数のピラニアが跳ねた気がするが気のせいである。
たどり着いたのは巨大な島というべきか。
だが草木1本生えてないどころか虫すらいない。
まるで生命など最初から存在しないかのように。
「先生ー、後ついでに私の娘ー。
お金持ってきたからでてこ~い!!!!
ふむ反応がありませんね。
なら接着剤から作ったアルコールでも・・・・・ビンゴです」
ススが靴の接着剤を加熱しできた液体を地面に垂れ流す。
匂いに釣られて先生がフラフラとやってきた。
・・・・大人としての尊厳の欠片もない。
緑髪で白衣に片眼鏡、ピシッとした服ではなくラフに着こなしている。
「未成年が飲酒とは感心しないな!
これは証拠品として没収。職員室に来ても返さないからな!」
「職権乱用ですね先生」引き気味
「あはははは!それもそうだな。
ようこそ!ここがどこかは分からないが
主人公に成れなかった者たちがよく来るからな。
よって”保健室”と命名した!!!」ゴクゴク
「意味不明ですしお酒飲んでますし」
「私のことは先生と呼んでくれたまえ!
まあ本当の名前なんて忘れてしまったがな!あははははは」
この教師実にフリーダムだ。
「そうですね、私の事を覚えていますか?
かつて先生の教え子で私がパパ活
・・・・当時で言う援〇交際していたことを先生に咎められたものです」
「・・・・・人違いだな。帰りたまえ」
冷たく突き放すも本当は先生も認知していたのだ。
ただ辛い思い出をキョウカに思い出してほしくないから。
「そうですか、では帰ります。
でも記念に先生の髪の毛を頂いていきます。
遺伝子情報の数字さえ分かれば上出来。
・・・・人体錬成の材料ですので」
「羅〇門!!!!!」
「いや全部は抜きませんって!!!
1本頂ければ培養してクローンを生み出せますし、
もし先生がよければここからの脱出もお手伝いします」
「なかなか魅力的な提案だがここを出る気はない」
首を横に振りキョウカへ反対意見を出す先生。
「ここには強い未練を持った者たちが集まってくる。
奇麗な星々はそれぞれの世界で生きた証。
天の光は全て夢。主人公に成れなかった者達だ」
「主人公?物語のですか?」
「語弊があったな。人生を謳歌できなかったというべきか。
友が宇宙で亡くなり魂の残滓が残っている形見の玩具を手放せない
”赤の主人公”
自分の分身が戦う気力を失い存在意義が否定された”真紅の主人公”
旧式という理由で廃棄された機械メイド”緑の主人公”
ヒロインを救えず不死の体を引きずり生きる”朱色の主人公”
教師に呆れられ時間の牢獄を彷徨う”赫の主人公”
他にも数えられないほどの”
そして別の時間軸の私との違いを見せつけられ
自暴自棄に走った”私”とか・・・・な」
「・・・・残念ですが先生しかいないですよ?」
「ああ、確かに君には見えないかもしれないし
声も届かない。
だが心に語り掛けてくるんだ。先生、先生と。
私は君たちが知っている先生とは別人だというのに」
「幻覚と幻聴の類いですね。またの名をオカルト」
「クローン技術も相当なものだ。髪の毛だったな、持っていくがいい。
私は脱出する気はないからな」
ぷちん。キョウカのいやススのストレスゲージが破裂した。
「先生は私が道を踏み外した時に
絶縁、えんがちょと言って私から離れていきました。
ですので今度は私の番。救い出して見せますよ?」
「いやそこまでは言ってなかったと思うが・・・・・・
あっ今のセリフなしで」
「・・・・・・・」 「・・・・・・・・」
「キィーヒッヒッヒッヒッヒ!
やはり私の先生でしたか!!!誘導尋問は得意分野ですので」
「ええとホントにどちら様?!!!
キョウカ君はそんな笑い方してないはずだ」
「ええ、今の私はキョウカであり、
錬金術を学ぶスス伯爵でもありますので。
前世でやり残した事・・・・・先生と仲直りに来ました!!!」
あの時未来に向けて歩もうとした保健室登校の生徒。
彼女なりの先生に向けた”恩返し”が始まろうとしていた。
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