深夜に読んでほしい掌編
箸で麺を持ち上げた瞬間、食欲をそそるチャーシューの香りがフワリと漂った。
「まずは麺から……」
という意思が揺らいでしまう匂いが鼻孔をくすぐる。くすぐりまくる。無視できない肉と脂の香りを感じながら、濃いめの醤油スープが絡んだ細麺を勢いよく
次は、麺を覆わんばかりの大きなチャーシューだ。豪快にかぶりつくと当たり前に美味い。もう匂いからしてわかってた。約束された勝利の味だ。チャーシューと麺を同時に口に放り込むと更に幸せになれる。世界の宝が頬に詰まっている。
丼ぶりの
彩りを添える万能ネギが
玉ねぎの隣には、一口では食べられないほど大ぶりなメンマがいくつも乗っている。脇役にされがちなメンマもこの大きさでは圧倒的な存在感を放つ。正直メンマは大好きだ。ザーサイと同じくらい好き。つまりティアワン。
様々な具材とスープ、そして麺が絡み合い次々と口に運ばれていく。プラスチック製の真っ赤な箸が止まることはない。麺、チャーシュー、麺、ネギ、スープ、メンマ、麺。
そして満を持して登場したのは満月のように輝く煮卵。スープに浸かっても溶けだすことはないが、口内でとろける煮卵だ。口の中いっぱいに濃厚な黄身の味が広がり、満たされる。頬の内を占領する幸せの味。このままでは多幸感が致死量に達してしまう。追加で煮卵トッピングしなくて助かった。ギリギリで命拾いした。
そして――。
「今日だけは……、今日だけは堪忍してつかぁさい……!」
と、心の中で
まっ白な器の底を眺めながら、ふーっと一息つく。気付けば、
ごちそうさまでした!
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