7月

リップクリームの柔らかさに夏を感じる

 季節の移り変わりを感じるのはどんなときだろう。

 庭で百合が大輪の花を咲かせ甘く華やかな香りが漂ってきたとき。強めの日焼け止めを四肢に塗りたくり日焼け止めの香り(無香料)一色になったとき。和菓子屋のショーケースに並ぶ水まんじゅうや麩まんじゅうに心惹かれたとき。食卓にやたらめったらキュウリばかりが並ぶようになったとき。飼い猫が添い寝してくれなくなりその辺の床に落ちてることが多くなったとき。サマーカットされたアルパカ(画像検索推奨)の情けないような可愛らしいような姿を見たとき。

 花鳥風月からいかにも俗っぽいものまで色々とあるけれど、先日はリップクリームの柔らかさに夏を感じた。

 パッケージに「とろける」とか「メルティー」とか書いていない、いかにも普遍的でオーソドックスで多少のつまらなさを含む薬用リップクリームだ。「二ミリほど繰り出してお使いください」とか「一度繰り出したら戻せません」とか書いてないから繰り出し放題、戻し放題。冬なんてもう固いからぐりぐりと塗る。それが、少し肌寒さを感じるような初夏の夜にも柔らかさをもって唇に当たるから、ふと「夏だな」と思ったりする。深緑のパッケージに描かれたクラシックな看護師が、「夏、到来やで」と言っているような気がしてくる。


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