ピスタチオがわからない

 ピスタチオは不可解な存在だ。よくわからない味がする。

 味覚は正常に機能しているはずなのに、何度食べても「よくわからない味がするなぁ」と思う。普段は何かを食べたとき「美味しい」とか「不味い」とか「好み」とか「苦手」とか、何かしらは感じる。それが対ピスタチオになると、まるで味蕾みらいが突然に行方をくらませたかのようになり、快でも不快でもないぼんやりとした謎の刺激が脳みそに伝わるのだ。決して不味くはないし、忌避するほどに苦手でもない。しかし好物というくくりの中にも入らない。が、かといって「好きでも嫌いでもなく普通」に納まるものでもない。

 そうして何度食べても、新鮮な気持ちで、「よくわからない味がするなぁ」と思ってしまう。

 いった何時いつからピスタチオというものが流行っていたのだろう。気が付けば世の中に溢れかえっていた。物珍しさから自分で買ってみたこともあるし、頂き物の中にピスタチオ味が混ざっていることもそれなりの頻度であった。その度に首をかしげながら食べる。よくわからない味がするなぁ、と。

 そう思い続けてどれだけの時間が経ったか。数か月、もしかしたら年単位かもしれない。最近になってやっと、「もしかしたら、これはあまり好みではないのかもしれない」と感じ始めた。しかし、まだ曖昧だ。

 同じ緑色のものでも抹茶味が苦手な理由はハッキリしている。苦いからだ。同じ理由でコーヒーやゴーヤも苦手だ。しかしながら相変わらずピスタチオに対しては、明確な理由を見いだせないままでいる。度合いも「もしかしたら」とか「かもしれない」という程度のものだ。

 ピスタチオに対する感想は、この先どう進化していくのだろう。「やっぱり苦手だな」と結論付けることになるかもしれないし、「一周半くらい回って逆に好きだわ」となるかもしれない。その日がくるまで、まだしばらくは謎の存在のままだ。ピスタチオがわからない。


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