『帰る旅、行く旅。』の裏話

帰る旅、行く旅。 /現代ファンタジー

https://kakuyomu.jp/works/16817330656257327116


↑こちらの小説を、こちらの自主企画に寄せて書きました↓

 (※これは空言ではありません)


【ミッション企画 第1回】

https://kakuyomu.jp/user_events/16817330655653945042

ミッション

・テーマ「変化するスタートライン」

・文字数 一万文字~二万文字以内

・テーマに沿った物語で完結させること

・タグにテーマを記入

・登場人物四人まで(人外、ペット、モブキャラなど含む)

・タイトル、ジャンル自由



>ふと気が付くと頭上に街並みが広がっていた。

>空に放り出された“私”には、記憶がない。

>偶然出会った少女と共にする旅、その最後に待ち受けているものは何だろう。

というような話です。


以下はネタバレを含みますので、小説を読んだあとに見ていただけたら嬉しいです。







作中はだいたい「さくら」と「千代子」の会話で進んでいきます。

でも、同じ事柄を話しているようで、生年が違うから食い違うこともある。

ずっとすれ違いコントのような会話を繰り広げていたのでした。



1、コロナ禍とスペイン風邪

さくらはもちろん近年のコロナ禍のことを話しています。

そして千代子はスペイン風邪の話をしています。


大正7年~10年(1918~1921)頃に流行したスペイン風邪。

スペインでの流行が大きく報道されたため「スペイン風邪」と呼ばれていますが、起源はわかっていないようです。アメリカやヨーロッパで感染が広がり、やがて日本でも猛威を振るいました。

第一流行期から第三流行期まであり、第二期の頃から消毒・マスク・うがいなどの具体的な対策が講じられるようになります。

「汽車 電車 人の中ではマスクせよ 外出の後はウガヒ忘るな」というポスターが張り出されたりしまして、日本にマスクというものが知られ、定着したのがこの頃だとされています。


スペイン風邪が流行った頃、千代子は1~4歳くらい。

この頃は、家庭でマスクを手作りすることが推奨されていました。なので、母親お手製の口覆マスクの思い出が蘇ったのでした。

ちなみに千代子が「電車」ではなく「汽車」と言っているのは、小説のモデルにした千葉県南部の鉄道が大正の頃はまだ電化されていなかったからです。



2、東日本大震災と関東大震災

>「夏の終わりだけれど、まだ少し暑くて――」

と言った千代子は関東大震災(9月1日)の話を、

>「春だけど、まだちょっと寒くて――」

と言ったさくらは東日本大震災(3月11日)の話をしています。

千代子は尋常じんじょう小学校入学の前年、さくらは小学校入学直前に被災したということになっています。


大正12年(1923)9月1日に発生した関東大震災。

震源の真上となった神奈川や千葉県南部は震度6強~7の激しい揺れにみまわれました。

東京や横浜などでは大規模な火災が発生し多くの犠牲者が出ましたが、千葉では死者行方不明者の原因の9割が家屋の全潰ぜんかいや土砂崩れによるものでした。なので作中では火災に言及していません。



3、令和元年房総半島台風と東京湾台風

さくらが話していたのは令和元年房総半島台風。

令和元年(2019)9月9日未明、非常に強力な台風が東京湾を通過し、関東一円、特に房総半島に甚大な被害をもたらしました。

ゴルフ練習場の鉄塔が倒壊し民家が破壊されたところがしきりに報道されていたので、その印象が強い方も多いのではないでしょうか。


千代子が思い出したのは東京湾台風。

大正6年(1917)9月末から10月初めにかけて、非常に強力な台風が近畿以東に被害をもたらしました。

関東接近時はちょうど満潮の時刻と重なり、強風や豪雨に加えて、東京湾沿岸地域は高潮に襲われます。数千の船舶が転覆、堤防も破壊され多くの街が水没しました。


このとき千代子はまだ赤子、誕生日によっては生まれる前なので、作中では伝え聞いたということになっています。

ちなみに、令和元年の台風の際、老齢の方が「裏山の大木が倒れたのは大正何年のことだっけ?」などと申していたことが、この小説のアイディアの元になりました。



4、東京オリンピック1964と東京オリンピック2020

東京で行われた2回のオリンピック。

さくらは令和3年(2021)、千代子は昭和39年(1964)のことをそれぞれ話しています。

昭和39年のオリンピックでは体操、柔道、レスリング、バレーボール、ボクシング、重量挙げなどでメダルを取得しました。

千代子が語ったのは「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボールチームの活躍で、決勝戦ではソビエト連邦チームを破り、見事金メダルを獲得しています。


昭和39年のオリンピックは、初の衛星中継や国内カラー中継があり「テレビオリンピック」とまで言われたそうです。

当時はまだカラーテレビを持つ人は少数派でした。しかしテレビ自体の普及率は、オリンピック前の数年間で急激に伸び、9割ほど。

千代子は当時47歳なので、家族と共に視聴していたのだと思います。



5、登場人物名の由来

登場人物の名前は、生年の名前ランキングを参考にしました。

大正6年(1917)は1位が「千代子」、2位以下には「キヨ」「キミ」「文子」「八重子」。

平成16年(2004)は1位に「さくら」と「美咲」、以下は「凛」「陽菜」「七海」「未来」と続きます。


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