田んぼに水を入れる季節

 桜の季節が終わりを告げると、いよいよ稲田に水を入れる時期がやってくる。

 静かにたたえられた水は、晴れわたる空と木深こぶかい山を写す。山々には新芽の若緑と常盤の深緑が入り乱れ、遠くに連なれば青みを帯びる。空の白藍しらあい、山に萌黄もえぎ千歳緑ちとせみどり、並ぶ丘陵花浅葱はなあさぎ。青と緑だけで構成された世界だというのに、実に変化に富む素晴らしい眺望だ。

 春風が吹けば水面は小さく波立つ。この銀色のさざなみがまた美しい。陽が傾けば茜色に染まり、照り返す光は金色に輝く。そして夕暮れと共に、徐々に紺青へと変化する。

 田植えまでのほんの数日しか楽しむことができない水鏡だ。


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