第3話 私のルーティン

 世界を救った翌日、カーテンを開けたのか朝の光が目蓋まぶた越しに眩しくて、布団を頭まで被った。


「聖女様、朝でございますよ?


 あの、もし体調が優れないのなら……」


 バッと、起き。眠そうに片手で目をこすっていた。


「おはようございます。


 私は元気ですので心配しないで下さい。


 朝がですね……ちょっと弱いだけなんです」


 私付きの侍女のエフィナは「朝が弱い」の言葉に笑を浮かべながら、水が入ったタライと布地をベッドの上へ乗せた。


「お布団が濡れてしまうから、机の上で使うわ」


「はい、畏まりました。


 洗顔のあと、この布地でお顔の水気を拭って下さい」


 サロンで朝食を済ませ、馬車で隣町へ移動し怪我人や病人の方々を癒して周り、昼食を済ませたあとは王宮の図書室で文字の勉強。それが終わるとマナー講座を受ける。夕食のあとはなぜかクロード公爵様と談笑しながらのお茶をしている。これが毎日のルーティンとなっているのだ。


 そして予想もしてなかった出来事と言いますか、毎日ある方に愛の告白を受けているの……返事はしていませんが。


 この告白をして来る相手が……。


「ナナエ様、私と結婚して下さい。


 貴女が聖女だからではないのです、身分関係なく平等に治癒して行く心優しいナナエ様に惹かれたのです」


「わ、私は…恋愛経験は皆無で、ただ長く生きた老婆ですよ?


 クロード公爵様のように素敵な男性なら、貴族の可愛い女性と結婚の方がいいのではないかと思うのですが」


「俺は35歳です。年齢は関係ないです」


 私の手を取るクロード公爵様……(うっ、眩しいイケメン)

 大きくてゴツゴツした手、高身長で顔が小さく眉は綺麗に整えられ、長いまつ毛とくっきりした二重の瞳。鼻も高くて唇は薄く……私の前ではいつも口角が上がってるのよね。


 それに、最近分かったことだけど。私が若返ったのは奇跡のようなものなのに、何故か思考までも若者のようになってる。


 クロード公爵様に愛の告白を受け続けて、今日で10日目。返事も曖昧にしてきたけど……私もクロード公爵様の行動・包容力・宰相としての責務など、あらゆる面を見たわ。

 私に対しての完璧な配慮……申し分無しでしょ!

 私の返答は決まってるの、もちろん……!

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