第4話 この世界の情報
あれから更に少しして、ソーラと少女のどちらも共に落ち着いた頃。
「一先ず自己紹介するか」
「そ、そうですね……何と呼べばいいか困るでしょうし」
と言うことで自己紹介が先となった。
「じゃあまず俺が……。俺の名前はソーラ。年齢は20、一応しがない魔術師をやっている」
「ま、魔術師……?」
「そうだ。この様に魔術陣と言うものを介して魔力を属性や性質に変換して魔術として外に放出する技術の事だ———【点火】」
ソーラの掌の上に掌サイズの魔術陣が現れ、そこから小さな赤い炎がボッと燃え上がる。
「わわっ!? 凄いですね! 幾何学的な円形のこれが魔術陣と言うモノですか?」
「そうだ」
「こんなの今まで見たことありません……」
瑞稀は瞳をキラキラと輝かして子供の様にテンションを上げる。
そんな瑞稀にソーラはさも当たり前の様に自然に口を開いた。
「まぁ俺はこの世界の人間じゃないからな」
「………………へっ?」
瞳をキラキラと輝かしていた瑞稀の動きが途端に停止する。
そして瑞稀はゆっくりとソーラの顔を凝視し始めた。
(た、確かに世界中探しても銀色の瞳の人はいないかもしれません。それに先程の魔術? と言うモノも未だ一度も聞いた方がありませんし……そもそも嘘なら流石におかしすぎて逆に警戒されそうなので言わなそうですし。と言う事は本当の異世界人!? あの何度もラノベで思い浮かべていた異世界!?)
瑞稀は意外とオタクであった。
「ソーラさんが異世界人なのは分かりましたが……どうしてこの世界に?」
「【転移】に失敗した」
「【転移】まで使えるのですか!? まるで上級異能力者の様ですね!」
「上級異能力者?」
「あ、それも説明しますがその前に……私の名前は
(異能力者……? 異能力……スキルの事か? て事は彼女———瑞稀さんはスキル使いなのか?)
「……一先ず質問するがいいか?」
「はい」
「……それじゃあ色々と質問するから嘘は吐かずに答えてくれ。分からなかったら分からないでいい」
「分かりました」
ソーラは早速先程から気になっていた事を訊いてみる。
「異能力も気になるが……ゾンビ———と言うのはあの外にいる灰色の肌と白目の人型の事か?」
「は、はいそうです。2年前に突如世界で蔓延し、後にゾンビウイルスと言う名で呼ばれる様になった一種の病気の様なモノです。今の所治療法は見つかっておらず、ゾンビウイルスを発症すれば意識は消え、外にいる様な生きた屍となってしまいます。そしてゾンビとなった者に噛まれると噛まれた者もゾンビになってしまいます」
(ウイルスか……なら発症する前であれば俺の魔術で治す事は可能だな。流石に細胞が変化してしまえば俺では治せん)
ソーラは冷静にゾンビの考察をして行く。
「そのゾンビは今全世界でどれくらい居る?」
「え、えっと……詳しくは分かりませんが、日本では国民の7割がゾンビに変異してしまいました。あ、今私たちがいるのが日本の東京と呼ばれる元首都です」
(どうやらここは日本とか言う国の首都らしい。だからあんなに建物が大きくて沢山あったのか。それにゾンビも異常に多かったしな)
ソーラは納得した様で何度も頷いていたが……ふと気付く。
「……瑞稀さん」
「瑞稀でいいですよ」
「なら瑞稀で。それで瑞稀はどうしてこんな1番危険そうな場所に居るんだ? 首都と言う事は人口が1番多かったはずだからゾンビも多いはずだが?」
ソーラが当然の事を聞く。
瑞稀からは強者の雰囲気はしないし、先程の扉の事からも力がない事も分かる。
瑞稀はソーラに指摘されると少し悲しそうに顔を伏せると何処か話しづらそうに口を開いた。
「そ、その理由を話すにはまず異能力者の事を話さなさればなりません」
「なら聞かせてくれ」
「は、はい……ゾンビが現れて1ヶ月経った頃、ゾンビウイルスに抗体を持った者が現れました。そしてそれと同時に抗体を獲得した者は【異能力】と呼ばれる超常的な力を使える様になりました。【異能力】はS級からA級、B級、C級、D級、E級、F級とあり、Sが最も強く、Fが最も弱いです。そして私は1番弱いF級です」
瑞稀は力無く笑う。
その笑みは18歳がする様なものではなく、人生に諦めている者がする笑みだった。
ソーラはその異様な笑みに眉を顰める。
「……瑞稀が1番弱い異能力者と言うのは分かったが、何故此処に?」
「私では1人でゾンビを狩れず、お金を稼げません。その為他のC級異能力者と此処にゾンビ狩りに雑用として来たのですが……強力な個体が現れたことにより囮にされました」
———バキッ!!
突如ソーラが手を置いていたテーブルが音を立てて真っ二つに割れる。
驚いた瑞稀がソーラの顔を見ると、そこには能面となっているが強い憤怒の感情を宿した顔があった。
「もうそれ以上は話さないでいい。瑞稀、少し俺は外に出てくる。大丈夫、ここには結界を張っておく」
「ですがソーラさんが危険では?」
「いや、そこらのゾンビに負けはしない」
それだけ言うとソーラは部屋を出て行った。
「……私なんかの為に怒ってくださるなんて……嬉しいです……」
瑞稀は1人となった部屋で小さく足を抱えながら小さく笑みを溢した。
▽▲▽
「ふぅ……何となくこの世界の状況が分かったな」
ソーラは外に出ると、怒りを落ち着かせる様に息を吐いていた。
「やっぱりどの世界でも人間は変わらないな……よし、俺が瑞稀を守ろう。どうせ帰れないんだし、超絶美少女と一緒に日本を回るなんてどうだろうか? ぶらり旅……あの世界では危険すぎて出来なかったけど、この世界なら出来るかもしれん」
これからの方針が決まった瞬間だった。
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下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくれると作者のモチベ上昇。
偶に2話投稿になるかも。
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