第3話 中堅魔術師、人間の少女に出会う

 ソーラは廃墟となっていた都市に足を踏み入れると同時に顔を顰める。


「……これは少し酷いな……」


 目の前には沢山の人間の死体があり、更には例の不思議な生命体に変化している最中の人間もいた。

 ソーラは自身の仮説が間違いではないと確信すると共に、こんな悍ましい事をする奴は俺の世界にすら居なかったぞ……と嫌悪の感情が滲み出ている。


「まぁ、もしかしたら人間のせいじゃないかもしれないが……っと、こんな事よりさっさと生存者の下に行って、色々な情報を訊かなければ」


 ソーラは直ぐに顔を元に戻すと、生命反応がある方へ向かう。

 道中でソーラを襲おうとする奴らもいたが、全て一瞬で消滅するので、さながら散歩の様な呑気さで歩いていた。


「…………此処?」


 ソーラは訝しげにその目的地へと目を向ける。

 そこは他の建物とは雰囲気が違った。


 ソーラは知らないが、そこは俗に言うラ◯ホテルと言う男女が性行為を場所である。

 

 しかしソーラは何となく卑猥な雰囲気を感じ、少し気まずそうに頬をかく。


「えっと……取り敢えず入るか……?」


 ソーラはこの世界で初めて意思疎通の出来る人間に会えると言うのに、その表情は何とも言えない微妙な表情だった。




▽▲▽




「……やっぱり俺の世界の娼館じゃねぇか」


 ソーラは中に入って早々にそう呟く。

 彼自身は入った事はないが、それでも何度か目にした事はあるのと、友達が入った時の感想を興奮しながら語っていたためよく覚えていたのだ。


 やっぱり何処の世界でも性欲は金になるんだな……と人間の真理に1つ気付いたソーラは、とっとと此処を出たい欲に駆られ足早に目的の部屋に向かう。

 そしてドアの前に立つと、コンコンコンとノック。


「えーすみません、何方か居ませんか? 少しお話がしたいのですが……」


 ソーラができるだけ外行きの声と口調で話しかけると、扉の奥から何か動く様な音と共に、綺麗な澄んだ女性の声が返ってきた。


「……す、すいません……扉を開けたいのですが……扉が変形して開かないんです……」

「…………はい?」


 ソーラは予想外の返答に素で聞き返す。

 すると扉の向こうから焦った様な雰囲気が出だしあわあわと何故か言い訳を紡ぎ出した。


「え、あ、えっと、別に私がやった訳ではないんですよ!? ただ、逃げ込む際にゾンビに追いかけられていて、ゾンビが扉にぶつかったのが原因だと思います!」


 ソーラはそんな言い訳にチラリと自分の足元と扉を見ると、確かに血が大量に付着していた。

 

「どうですか!? 私の言っている事は本当だったでしょう!? お願いします! どうかこの扉を開けて下さい! そろそろ食糧が尽きそうなんです!」


 切羽詰まった様な女性の言葉に、ソーラは扉を壊す事を決める。

 

(どのみちこの人以外に人間は此処らに居ないし、いい加減この世界がどうなっているのかも知りたい。……ならそれを交換条件にするか)


「では俺がこの扉を開けたら、貴女は俺にこの世界の現状を教えて下さい。教えて下さるのであれば開けま———」

「———教えます! 私の知っている事は全てお教え致しますのでどうか開けて下さいっ!!」


 女性はソーラの言葉を遮って、かなり食い気味に同意した。

 その言葉を聞いたソーラは、扉に手を置くと、女性に声を掛ける。


「では今から破壊しますので、扉から離れていて下さい」

「わ、分かりました…………離れました」


 女性の気配が扉から離れた事を確認すると、ソーラは軽い衝撃魔術で扉が粉砕する。

 『バキッ!』と言う音と共に扉が砕け、中が見える様になった。

 そこでソーラは中に入ろうとして……ピタリと動きを止める。


 そして視線は完全に1人の少女に釘付けだった。


 腰までありそうな漆黒の髪は暗闇の中でも輝いており、恐ろしく整った少し幼い顔立ちは何処か彫刻の様に美しいが、可愛げもある。

 彼女はあまり見た事の無い服を着ているが、その服の上からでも分かる2つの大きな膨らみは、男なら一度は目を奪われてしまうだろう。

 更にはきゅっとくびれた腰に、膝上のスカートからは細いが健康的で艶かしい素足が晒されていた。


 そんな今まで見た事ない程の超絶美少女に目を奪われていたソーラだったが、それは彼女も同様であった。

 ソーラは大して自覚はないが、アイドルが素足で逃げ出すほど顔が整っており、綺麗な銀髪に銀眼と碧眼のオッドアイは何処か御伽話の王子を想起させる。

 

 お互いに今まだ見たこともない美少女とイケメンに数秒間見つめ合っていたが、お互いに直ぐに恥ずかしそうに視線を逸らして謝り出した。


「す、すいません……今まであまり女性と関わりが無かったもので……」

「い、いえ此方こそじっとまた申し訳ありませんでした……」


 お互いに相手が見れなくなり気まずい雰囲気が2人の間に流れる。


 

 

 これが後に最後まで行動を共にする2人の最初の出会いだった。

 

—————————————————————————————

 リア充ばくは——危ない危ない。

 某有名映画のバ◯スを唱えてしまうところだった。


下⇩⇩⇩の☆☆☆を★★★にしてくれると作者のモチベ上昇。

 偶に2話投稿になるかも。 

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