ピグシブより

離れていく君の歌

それは昔のことだった

中学校の音楽のテストがあった日

音楽室に響き透明感がある

君の声に僕は心が惹かれた 

僕には出せない声で絶対に君には敵わない

と考えていると

先生が口を開き

「来週はふたりペアで歌うテストをします」

と言い周りのみんなが同然かのようにペアを作る

友達がいない僕にとっては地獄みたいな時間だった

今にも逃げ出そうとしていた僕に

ひとりの女の子が声をかけてきた

「ねぇ、一緒にやらない?」

それが君だった

この日をきっかけに僕たちは

毎日昼休み誰もいない教室で練習をしていた

でも練習しても練習しても僕の声は

君の声には届かない

このままじゃきっと君の声を僕の声で

汚してしまうって思った。

君の声が心から好きだったから思えた気持ち

だから僕は

「ごめん」

「え?」

「僕はやっぱり君とは歌えない」

君は驚いたような焦ったような顔をして

「なんで…私は貴方と歌いたいからあの時」

「僕みたいなやつ君を汚してしまうだけだから」

そう言い僕はその場から逃げた

これ以上君の顔を見たくなかった

悲しそうな顔をする君を

だってこれは

君のためだから

翌日なんとなく僕は練習していた教室に

足を運ぶと聞こえてきた声は

ひとりで歌う君の声だった

きれいでやっぱり透明感があって

あぁーこれで良かったんだ

これで………良かったんだ

そう思いたかった

あれから1週間がたち発表の日の朝の会

いつもいるはずの君が居なかった

単なる風邪やなにかだと思いながら

いつもどおり朝の会がはじまる

その時先生が放った言葉が

「〇〇 ☓☓さんが交通事故に合い

声が出せない状態になっています」

声が出せない?

嘘だという嘘を自分の中で作ろうとして

だってこの前まで君は歌って

僕の………せ…い?

僕が一緒に練習出来なかったから?

僕が君を悲しませたから?

僕が君のきれいな声を………汚したんだ

それから僕は大人になっても

歌い続けた君に近づけるように

寝たきりになってる君に届くように

今の僕が出来ることは

これぐらいしか無いから

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