第12話 GW2日目2

屋上から戻った俺達は何食わぬ顔で手芸部部室に帰ってきた。もちろん、バレないようにしっかり飲み物は買っている。

「あら?男同士仲良くトイレに行ったにしては長かったわね。何かあったのかしら?」

「なんもねーっすよ先輩♪」

ケラケラと笑いながら話を逸らす赤。中々のやり手だ。そして先輩も勘がいい。洞察力は伊達じゃないな。

「あ〜?連れションしてたら遅れんじゃねーの?」

「貴女はもう少し女性らしさを身につけたらどうなの!?言葉使いがなってないわ!」

確かに、女性が連れションなどと言うのはいかがなものかと...

「そうですよ吉沢さん。女性の方があまりそう言った言葉を使うと他の方から変な目で見られてしまうかもしれません。以降気をつけてくださいね」

「?おー?」

多分分かっていないなこの顔は...

「さ、続きをしよっか!1人あたり110だからね?俺はもう10枚出来てるけど!ワッハッハ!」

唐突のマウントに聞こえるかもしれんがこれは俺に対するメッセージだな。要約すると、

(今から再開するけどそれとなく会話に俺のアピールを忘れるな?)

と言っている。

「あーっと...先生?」

「はい?なんです?」

「その...手先が器用な男ってどう思いますか?後は家庭的な男って」

「突然何の話ですか?」

「いやー...さっき赤と話してる時に料理の話にななりまして。俺は毎朝作ってるけど簡単な家庭料理しか出来ない事を言ったら、俺は凝った料理もできるって言うもんですから。そこの所先生はどうなのかなと...大人な女性の意見を聞きたいですね」

「あぁ!そういう事でしたか!確かに、最近ニュースではイクメンや、家事ができる男の人はかっこいいといいますもんね!私から言わせると、とても頼りがいがあります!料理が凝っているという事は味に飽きることなく、毎日の料理が楽しみになりますもんね!...そんな相手がいればの話ですが...」

あ、まずい...先生が闇堕ちし始めた...これに赤は。

(お前何て話題振ってんだ〜!!)

とでも言いたげな顔でこっちを見てくる。確かに俺は赤のいい所を知っているが他人を褒めるのは苦手だ...会話も不得手な俺にとってはハードルが高い...

これを見ていた先輩が話に入ってくる。

「だ、大丈夫よ先生!結婚相手を探すなら30代前なら全然早いです!むしろ、余裕ある態度の方が大人な女性を演じられますよ!」

流石は先輩。フォローが上手い。

「...そ、そうでしょうか?小柄なのに胸だけ大きい私は不釣り合いではないでしょうか...」

「そこは先生の魅力の一つよ!きっと分かってくれる男性は近くにいます!」

血涙を流しながら先生のフォローをする...先輩(泣)

「なんですか?何か言いたそうな顔じゃない?殺すわよ?」

さっきと言っていることが違う...女性がそんな言葉を直球で言ってはいけないと思う...

「...何でも無いです...」

「そう?ならこちらを見ないでくださいな!!」

とても申し訳なくなった...

「先生、元気出ました!!ありがとうごさいます!」

「お気になさらず...」

そう言ってそっと胸に手を寄せ、目を伏せる...oh...

「おい。話を遮って悪いが手を動かしてくれ〜。そ・れ・と!お前折り紙曲がってるぞ〜w」

そう言い、俺のフォローを建前に入ってきた赤が話に入ってくる。確かに俺の手先は不器用でこういった細かい作業は苦手だ。

「ありがとう。やっぱ赤は手先が器用で羨ましいよ。俺とは正反対だな。尊敬するよ」

「まーな!ちっさい頃から子供の世話してたから手先は勝手に器用になってしまったよwでも褒められるのは嬉しいもんだな」

ニコッと他の女子が見たら惚れそうな笑顔で笑いかけてくる。赤はモテるが俺とか吉沢さんとつるんでいるから話しかけずらいらしい。

「ここはこうして...ほい!紫陽花完成〜!」

「凄いわね貴方...ホントに手先が器用なんですね。ここどうしても潰れてしまうのだけれどどうすればいいのかしら」

「あぁここはッスね...こうすると潰れないんです」

「ホントだ。ありがとう頼りになるわね」

「それほどでも...あります!!」

「素直な男性は好感が持てるわ。そのままの貴方でいなさいな」

「了解っす!」

「なーなー!私にも教えてくれよ〜」

「おう!いいぜ〜」

引っ張りだこだな。

「どうです先生?ああいう男は嫌いですか?」

そういってまた先生に話を振る。

「確かに。一途に愛してくれそうだし、家庭的だし、気配りができる。とてもいいと思うの」

お?これは結構好感触なのでは?

「じゃあ!」

「でも生徒だからね。流石にありえないわね」

「ん...」

それを聞いていたの赤が少し難しい顔をしていた。やっぱり厳しいのだろうか...

「あ、そういえば。先生?校長先生が先生を探していましたよ?」

「今それいいますか!?遅すぎませんか!?」

「さっきまで忘れていたのです。申し訳ないです...早く行った方がいいですよ?」

「言われなくても行きます!!では皆さん少し席を外しますので作業を続けてくださいね!帰ってきたら飲み物差し入れします!では!!」

颯爽と教室を後にした。

「さて...貴方達2人、何を企んでいるんですか?」

「「!」」

この人はどれだけ観察眼があるんだ。

「観察眼を疑っているようですが違いますよ?むしろバレバレです。騙されるのは、そこにいる吉沢さん位なものです」

エスパーかな?一周まわって怖い!

「ハァ〜...バレてんなら仕方ないっすね...実は...」

そう言って経緯を先輩に伝えた。正確には吉沢さんにも言っているのだが、折り紙に集中していて聞いていないっぽい。興味が無い事には本当に興味が無いんですね...

「まぁ何となく察してはいましたが、そう...貴方"も"無謀な恋"をしているのですね」

も?先輩も先生などに恋をしているのでしょうか?

「えぇ。なんで、ダチのこいつにはさっきトイレに行くタイミングで話しました。これ聞いて、先輩はどう思いますか?」

「どうって?...別にいいんじゃない?誰かが誰かに恋するなんて別におかしな事ではないでしょう?」

「でも、教師と生徒ですよ? 」

「だから?別にいいでしょう?世の中には性の壁を越えて愛し合う方々もいるのだから。2次元に恋する方だっています。貴方はそれを許せない人ですか?」

「それは...」

「認めるのなら、貴方のその気持ちは大事にするべきよ。まぁ、私にはあまり協力できるような事は無いだろうけど。陰ながら応援するわ。もし生徒が教師を落としたら私の自信にも繋がりますし何より面白いじゃない?」

面白いって...ほんとに応援しているのか??

「!あざす!!」

感謝の言葉と共に綺麗なお辞儀をする。

「流石は我らの生徒会長ですね」

「あまり褒めないでください。照れて貴方を縊り殺すかもしれません」

「じゃあ褒めないです...」

震えながら返答する。

「いや、褒めなさいよ!!」

「え〜?...」

情緒が不安定で怖い...

「ま、先輩も頑張ってくださいね!」

「えぇ。長い戦いになりそうね」

2人して分かりあっているのは蚊帳の外みたいになって少し悲しいが、仲良くなるのはいい事だ。

「そういえばさっきの校長先生が呼んでいたというのは?」

「あんなの嘘に決まってるじゃない。貴方達と話がしたかっただけよ」

瞬時にあんな嘘をつけるのはある意味才能かもしれない。

のちに先生が汗だくになって怒りながらジュースを持ち教室に入ってきた。その際先輩は怒られたが何処吹く風の如く流していた。


4時間後

「「「「終わったー!!」」」」

最初に終わった赤は他の人のフォローを。次に終わった先輩は勉強と読書を。黙々とやっていたが俺と同じで不器用な吉沢さんは先生がつきっきりで教え。1番不器用な俺には赤が最後の方はマンツーマンで指導してくれた。

「皆おつかれ〜!これを気に折り紙に興味を持ってくれるとすんげー助かる!また機会があれば誘うかもしれんがその時はよろしく頼むぜ!」

「もう他にやる事はないのかしら?」

「後はこれをノリで貼るだけなんで1人でも出来ます!気を使って貰ってすみません」

「いいえ。お仕事くれてありがとうね。こちらこそまた仕事があれば振ってちょうだい。部の為に頑張るわ」

こうして俺たちのGW2日目の部活動は終了した。

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青鬼に憧れた怪物君 夜桜月 @yozakuratuki

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