第7話 部活動相続の危機

吉澤さんとの事があった丁度1週間後。あれからは吉澤さんは毎日登校している。それでも俺が毎日玄関のチャイムを鳴らしているだけだがそれでも頑張って起きて一緒に登校している。お陰でいつも遅刻ギリギリだ。本当なら入って起こすのが早いのだが先輩に禁止されてしまい、今の形に落ち着いている。

「おはようございます。起きてますかー?」

しばらくして返事が来る。

「ん〜...今起きた〜...師匠おはよぉ...」

「急いでください?また遅刻しますよ?」

「お〜...」

頼りなさすぎる返事が返ってきた。


しばらくして勢いよく玄関が開かれ、サラサラの金髪少女が出てくる。

「おっはよ師匠!!今日もいい天気だなー!」

「はい。おはようございます。確かに今日はいい天気ですね」

基本天気とゲームの話しかしない登校を毎日過ごしている。そして大体俺は聞き手に周り、気づいたら学校にいる。

朝のホームルームも鉄板化してきている。俺と赤と吉澤さんでトランプをするか談笑するかの2択になっている。しかし、昼休みになると彼女は毎回生徒相談室に行き、先生とご飯を食べているらしい。やはりまだ教室は緊張するのだろう。

「...なぁ青よ。あの子は完全にお前にホの字だと思うのだがどう思うかね?」

「ちゃかすなよ赤。彼女が俺に惚れるメリットや要素がどこにあったよ?ましてこんな顔つきと周りからの評価だぞ?俺に惚れるとか目を疑うね」

「...(いや、お宅訪問で学校に来るきっかけくれたのは十分だと思うぞ?)」

そんな話をして過ごしていたら部活の時間になる。最近ではほぼ毎日こんな感じだ。ちなみに部活は水曜日だけだがそれ以外の日は1人、もしくは吉澤さんと帰っている。

「じゃ、俺は駒ちゃんの待つ教室に行くから。またなー!」

「その言い方はどうかと思うが...またな」

俺もまた、部室に行くのだった。

奉仕部に部活が無いと思われがちだが実は存在している。ただ、看板も無ければ、大々的に名前を売っている訳では無いので見つかるハズもない。

「失礼します。あ、いらしてたんですね。こんにちは先輩」

「あら?よく来たわね。時間より少し早いのね。でも女を待たせるとか話にならないわね。くたばりなさい。」

「まだ妹の為にもくたばる訳には行かないのでごめん被ります。それと女性がくたばるとか言わない方がいいですよ?先輩は美人さん何ですから言葉遣いを丁寧にすれば絶対モテます!」

「...貴方以外にモテても別に...え???び、美人!?ほ、本当にそう思っているのかしら!?」

「?えぇ。誰から見ても先輩は好印象で目を引く容姿をしていますよ??」

「か、可愛いこと言ってくれるじゃないの。今日は気分がいいので貴方の仕事もやってあげるわ。大人しく帰りなさい!」

「いや、俺の仕事奪わないで下さいよ先輩」

そんな他愛のないやり取りをして顧問を待っていると不意にドアが開く。

「あ、師匠!!」

「吉澤さん?どうかしましたか?」

「あのな私な!ここに入るわ!」

「え!?そうなんですか?てっきり帰宅部かと...」

「それだと駒ちゃんに心配かけるかもだからってんで私から打診してOK貰ったんだー!これから一緒に活動するんでよろしく頼むぜ師匠!」

「はい。よろしくお願いします」

「ちょっと待なさいな。何私を除け者に話を進めているのかしら?」

「?」

「何をそんな呆けた顔をしているの?殺されたいの?」

急に情緒不安定になるじゃんこの人...

「あ?んだテメー!私が入るのにケチつけようってか!?表出ろテメー!!!」

「上等です!その鼻っ柱へし折ってあげます(ニコッ)」

「お、落ち着いて下さい2人とも!」

「そうです!落ち着いてくださーい!」

と、そこで先生が乱入してくる。どうやらこの展開は読めていたらしく急いで来たらしい。お疲れ様です。

「もう!真城さんも吉沢さんもこんな事でいがみ合いをしないでください!」

「ですが先生!」

「いいんですか真城さん?あなたの弱みを握っている私に物申すなんて」

「!!すみませんでした...」

「あの〜...先生が生徒を脅すのはどうなんですか?」

「元を辿れば貴方のせいなんです!反省してますか!!」

「何故俺!?」

「それもそうね。死になさい」

「多分だけど師匠が悪ぃ!」

「え〜...?」

何故か理不尽に怒られた...女性が大勢いると団結するものなんですね...怖いです。

「あ、それとね、ゴールデンウィークにこの部活が何をするのか決めて貰ってもいいですか?職員室で話が出まして。」

「チッ。この部活は私の物なのに先生が口を出してくるなんて...忌々しい!」

「先輩、本性が出てます」

「おっかねぇ〜(ケラケラ)」

「笑い事ではありませんよ吉沢さん。先輩は怒らせると何をしでかすか分かったものではありませんよ?」

「そこの2人うるさいですよ!」

「何かいい案はありますか?真城さん」

ウーンと唸る先輩。確かに、この部は慈善事業をしているようなもの。ゴールデンウィークも部活がある部はあるが大体は運動部。自分たちの事は自分たちでできることだろう。となると校内で何か出来ることを探さなくてはならない。確かに先輩が唸るのも分かる。

「案が出ない場合この"同好会"は廃部になります」

不意にドアの方から声が聞こえ全員でそちらを向く。そこには鷲田友幸(わしだともゆき)先生が居た。身長は175で俺から見ると小柄だが猛禽類のような瞳と髪であまり見えない目も相まって1部では鷲の一睨みで恐れられている。実際にその目で見られチビった人が居るとか居ないとか...

「どうゆうことですか先生!」

机を叩きながら駒ちゃん先生に詰め寄る真城先輩。

「えーっと〜...そのーですねー...」

「花山先生。貴女が説明する必要はありません。私から説明します」

そう言って庇うように前に立ち塞がる。

「そもそもこの"同好会は部として成り立てないのです。真城さんが何人かの先生を脅して作ったそうでは無いですか?規定人数は最低でも5。5未満は部費は貰えず、同好会扱いに成ります。私の調べだと部費が落ちています。変だと思いませんか?」

「あら?私がいつ誰を脅したって??生徒会長の私が偉大なる先生方に脅しを掛けたと言い張るのですか?冤罪もいい所ですね。」

「口だけは回るらしい。いいでしょう。仮に脅しが無かったとします。しかし、部でも無いのに部費が落ちてるのは言い逃れ出来ますまい?」

「えぇそうね。そこに関しては私は認めるわ。移動費や道具代に当てているもの。でもそれが無ければこの部は存続出来なかったんですもの。それに私の調べでは数年前まではしっかりとこの部は活動しており、人数もかなり居たと調べがついてます。私はあくまで先輩方が築いた歴史に幕を下ろしたく無いのです。ご理解頂けますか?」

...何やらとてもピリついた空気になってきました...俺と吉沢さん、ついでに駒ちゃん先生も置いてけぼりで互いにメンチを切っている。何この人たち怖い。

「その心意気はいいですが、しかしこれは決定しました。なので私からチャンスを与えます。ゴールデンウィークまで残り2日。休みは5日間。その間1日1回最低でも活動をしなさい。また、部と宣うなら3時間は貢献してください。それが条件です」

「ふふ。そんな事でいいのね?やってやるわよ」

「決まりですね。では私はここで。御三方、お騒がせしました」

「鬼島君!塩撒いてちょうだい!」

「塩なんてありませんよ先輩...」

「ど、どうしましょう!この部が無くなったら私...私!!」

先輩がものすごく慌てふためいている。そんなにこの部が好きなのだろうか?まぁ、生徒会で日々お勤めを果たしているのだ。息抜きができる場所は欲しいのだろう。ここは後輩の俺が人肌脱ぐべきだな!

「大丈夫です先輩。俺が何とかしてみせます!知り合いとか(1人)に当たって見ます!」

「私も入ってすぐ師匠との居場所が無くなるのは勘弁だから仕方なく協力してやんよ!」

「ありがとう2人とも。私はいい後輩を持ったものね」

「安心してください真城さん!先生も微力ながらサポートするので!皆で案を出してこのゴールデンウィークを乗り切りましょうー!」

「「「おー!」」」

かくして部活動相続の戦いの鐘が鳴る。



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