第8話 ゴールデンウィークに向けて
とりあえず昨日はあのまま解散し、各自知人に仕事をくれないかと話に行くことになった。と言っても俺と吉沢さんは友達と呼べる人間は1人ぐらいしか居ない。
「仕事〜?また変な話になってんな〜。でも任せろ青!俺が仕事を見繕ってしんぜよう!」
と、赤狛優心こと赤に2人で話をつけに行ったところ快諾された。持つべきものは親友だな。
「ありがとう赤」
「ただし!俺と駒ちゃんとの仲も取り持ってくれよな!」
「俺の感謝を返せ」
「そんなこと言っていいのか〜?」
「...すみませんでした...」
「冗談だってwお前はホント真面目だよな〜。ま、そこがお前のいい所だ!」
あっという間、というか話す相手がいないので放課後。
「失礼します」「失礼しマース!」
2人で元気よく挨拶をし、先輩が待つ部室に足を運び扉を開ける。
「来たわね。では話し合いをしましょう?と言ってもあなた達にはさほど期待してないわ。」
「直球ですね先輩。もしかしたら凄く大きい仕事を持っているかもしれませんよ?」
「貴方も面白い冗談をつくようになったのね。さ、席につきなさい。」
この人本気で冗談だと思ってるよ!少しは後輩を信じるって気持ちは無いんですかね??
「何か言いたそうな目ね?言いたいことがあるならハッキリと...」
「何も無いので座りますね」
「先の展開は読めてたと...成長したわね。でも少し寂しいわね」
そこから3分も経たないうちに駒ちゃん先生がやってくる。
「すみません遅れました!」
「先生も来た事だし始めましょうか。ではまず鬼島君、吉沢さん。貴方達が持ってきた仕事を伝えてくれないかしら?」
「はい。俺たちは赤狛達手芸部の手伝いを仕事として貰ってきました。具体的には2日目に保育園に届ける折り紙作りと、5日目に保育園にそれを届けた後子供達の遊び相手になるという仕事らしいです。」
「です!」
「ハァ〜...」
と、先輩がクソデカため息をして吉沢さんを睨む。
「...吉沢さん。貴女自信満々にその無駄にデカイ胸を主張してますけど何もしてないですよね?」
「ん?こいつの隣で仕事見てた!」
「うらやま...コホン、何もしてないじゃないですか!まぁ、いいです。最近来た貴女に期待などあまりしていません」
「とりあえず俺たちは以上です」
「ご苦労さま。駄犬も少しは役に立つことが証明されたわね。でもそれは本人ではなく駒ちゃん先生を頼れば良かったのでは?」
「「あ」」
俺と吉沢さんの呆けた声が重なる。確かにそうだ!先生は手芸部顧問では無いか!そう思いチラッと先生を見ると先生が涙目になっていた。
「グスッ。生徒が私ではなく部員に声を掛けた...私これでも手芸部と奉仕部の顧問なのに...第1に声を掛けたのが彼なんて...先生として少しショックです...」
ポロポロと目から涙が溢れてくる。
「すみません...先生は忙しくしてるかもと考えると話に行けなかったです。すみませんでした!」「した!」
俺と吉沢さんはペコッと謝る。
「あ、頭をあげてください!生徒に頭を下げさせるなんて鬼畜に思われちゃいます!」
そう言われたので俺と吉沢さんは頭を上げる。
「まぁ、そんな訳で俺たちは終わりです。先輩、お願いします」
「任されたわ!貴方達とは比べ物にならない本当の成果というものを教えてあげるわ!」
そのペタンコな胸をドンと手で叩き主張する。
「私の胸がなんだって?」
「先輩はエスパーですか?」
「私の胸は女性らしい慎ましい胸なのよ!小さくて悪いわね!!!」
「そこまでは思ってないです!!ただ...慎ましいですか...先輩とは似ても似つかない言葉が出ましたね」
「喧嘩売ってるなら買いますよ?私に成果で負けるのがそんなに悔しい?貴方にしてはヤケにムキになるじゃない?」
「そこまでです!!鬼島くん!女性に対してそう言うことを言うのはいけません!デリカシーが足りませんよ!」
「すみません...確かに俺は先輩に追いつきたくてこの部に居ます。でも先輩がドンドン遠くに行ってしまう気がして...少し焼きました...」
「ん...その顔は反則だわ...私も失言があった事訂正します。ごめんなさいね。では気を取り直して」
そういって先輩は自分の功績を語り始める。
「まず1日目、生徒会室にてGW明けの資料を作ります。全校生徒に配るものなのでかなり過酷になるかと思います。助っ人、というか私の友達と後輩を呼んだので私たち含め7人で作業を行います。2日目は他にも仕事がありましたが貴方達が持ってきた案を採用します。」
「しつもーん!」
「...なんです吉沢さん?」
話を遮られちょっとムスッとしてる先輩が吉沢さんに語りかける。
「2日目は私達の案でいいのか?」
「あぁその事。問題ないわ。生徒会でやろうと思っていたことを前倒しでやりたかっただけだもの。ちなみに5日目の方も前倒しだから貴方達の案でいくわ。これでいいかしら?」
「りょーかいです!!」
ビシッと敬礼風にして吉沢さんの質問終了。
「続けます。3日目は野球部に声を掛けたところ、練習試合を我が校のグラウンドでするそうなのでスポーツドリンク作り、応援、球拾いなどをやります。これは私達3人です。」
「うげー!3人それやんの〜?めんどくさァ〜」
既にやる気を無くしてしまいそうな吉沢さん。大丈夫でしょうか?
「言い忘れていたけど一日でもサボったらこの部から追い出します。勝手に休まれるのは構いませんが居場所を残したいたら遅刻などせずに参加してくださいね?(ニコッ)」
そう言って吉沢さんにえも言わせぬ満面の笑みで応える。本当にこの人の笑顔ほど怖いものは無い。
「う、うす...」
返事も少し控えめだ。流石に察したのだろう。
「4日目は駒ちゃん先生に声をかけ、校内全体の清掃をします。GW明けに気持ちよく生徒に学校に来て欲しいからです」
「はい!これは私が校長先生に掛け合って快諾を得ています!ただし、こちらも3人なので結構大変ですが先生からアイスや飲み物の差し入れも予定してます!頑張ってください!」
「アイス出んのか!?すげー!私めっちゃ頑張っから!!」
「そして最終日はさっきも言ったように貴方達の案でいきます。以上がGWの主な流れです。他に質問は?」
あぁ。この人の凄いところは顔が広く、無理ない範囲で仕事を持ってくることもそうだが、それを分かりやすく、質問の余地が無いほどにまとめた文章力とそれを伝える表現力が凄いことだ。俺達が持ってくるであろう仕事も恐らく察しており、キャンセル可能な仕事を持ってきている。徹底して俺たちをフォローしてくれている。本当に
「惚れ惚れしますね...あ」
「!?!?」
「あら〜?」
「(チクッ)ん?」
思わず思っていた事が口に出てしまった。先輩は顔を真っ赤にしているので多分怒っているのだろう。先生は何故かニヨニヨしている。吉沢さんは...自分の胸に手を当てている?何故だろう?胸が痛むのか?
「ま、ままままぁ!私の仕事ぶりに惚れるなんて当然の結果だけれど!!」
早口で捲し立てる先輩。とりあえず怒ってはいないようだ。そこは一安心。
「ちょっとちょっと鬼島君?先輩を口説いてはいけませんよ〜(ニヨニヨ)」
「?口説いてませんが?」
「「ハァ〜」」
「分かってはいても少しは期待したいわよ...」
「先は長いですが頑張ってください...」
2人で話が完結してしまった。
かくして明日からGW。部の存続のために出来ることを精一杯しよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます