第6話話し合いって聞いたんですけど?
吉澤さん...ひとまずはクラスに入れはしたものの既にグループ分けが形成されており、話せる雰囲気にないらしい。仕方なく俺と赤が話をしていたが赤に吉澤さん呼んでいいかを聞き了承。流石に察して動いてくれる。こいつの何も聞かずとも分かってくれる部分はホントに美徳だと思う。
「吉澤さーん。ちょっといいかなー?」
「?何だー?師匠ー!」
てちてちと歩いてくる様は妹そっくりである。ついつい妹と同じ視点で見てしまう。いかんいかん...
「よければ朝のこの時間にゲームでもしない?トランプとか!」
「お!師匠トランプなんて持ってきてんのか!!やるやるー!!!」
朝のホームルームまでは基本何をしててもいい。ただし、スマホはロッカーに預けるので持ち込みは禁止である。なので皆は話をするか、こうして家から持ってきた将棋盤やトランプ、ボードゲームを持ってきてやるのが基本だ。
「青や〜?トランプ3人でやるのか?何やんの?」
「うーん...無難にババ抜きかな?」
「ババ抜き賛成〜!」
どうやらババ抜きでいいらしいので俺は箱からカードを取り出し、1枚だけJOKERを抜きシャッフル。その後全員に均等に配り終え、同じ数字を捨てて試合開始。
俺6枚
赤6枚
吉澤さん5枚で勝負開始。
順番も上記の順で回っていく。
まず俺から赤のを取り無事に揃い、俺残り5枚。
赤、吉澤さんから取るが揃わない。赤残り6枚。
吉澤さん。俺から取り無事に揃う。吉澤さん残り4枚。
「ふっふー!このまま私が勝っちゃうかな〜?」
「吉澤さん負けねーぞー!青!!さっさと俺のを引いて吉澤さんのを引かせろ!!」
「慌てんなって」
この調子で回っていき、枚数的には赤が不利だったがまさかの1抜け。これには俺も吉澤さんも口を開きっぱなしだった。
「なーはっはっはー!!見たか!これが俺の実力よぉ!この持ち前の運の力で今日こそは駒ちゃんに告白して結婚する!!」
結婚は18歳からだろーに...OK貰えてもあと二年は待つんだぞ?分かってんのかー?
「し、師匠私達も負けてらんねぇぞ!」
「え、えぇ!俺も負けません!」
試合は終盤。俺が1枚、吉澤さんは2枚。どうやら最初からJOKERを持っていたらしい。確かに毎回取るたびに残念な顔をしていた。この人は顔に出やすいらしい。
「さぁ師匠...勝負!!!」
ダァン!と机に2枚のカードをシャッフルして伏せる。これなら顔に出ることは無いから上手い策だろう。右か左か...カードの上に手を置いても勿論顔に変化はない。完全な運ゲー...
「吉澤さん...行きます!!」
カードに手をかけ上に掲げ、見ようとしたらチャイムと同時に扉が開き駒ちゃん先生が入ってくる。
「はーい皆席に着いてー!朝のホームルームを始めまーす!出席確認するので前を向いてください!...鬼島君?トランプは仕舞いなさい??」
「...はい」
この試合、実は俺の勝ちなのだがこれをホームルームが終わった後に吉澤さんに説明したら、
「こんなの無効だー!!先生が入ってきたからノーカン!ノーカン!!」
「「......」」
これには俺も赤も絶句。神経図太いなこの子。
休み時間もゲームの話で盛り上がったり、赤が「どうしたら駒ちゃんに振り向いて貰えるのか?」という会議を開いて苦笑いしながらも俺と吉澤さんで案を出したりした。それを出す度に職員室に直行し実行してお叱りを受けて帰って来て、吉澤さん大爆笑。吉澤さん、赤とはもうすっかり仲良しになっている。
そして気づけば約束の昼休みとやっていた。
「赤。申し訳ないんだけど今日俺と吉澤さん、真城先輩と駒ちゃん先生に呼ばれてるからお昼また今度でいい?」
「あったりめぇよ!いつでも待ってるぜ!」
俺は女だったら絶対こいつに惚れていたに違いない。そう確信しながら俺は吉澤さんと共に生徒相談室に向かうのだった。
「待っていたわ被告人鬼島。早速だけど貴方に死刑を言い渡すわ。諦めて首チョンパされなさい」
「 」
俺は入る部屋を間違えたらしい。一度ドアを閉めるも部屋は生徒相談室...もう一度中に入っても鬼の形相をした真城先輩と縮こまっている駒ちゃん先生が1人...俺、話し合いって聞いたんですが?
開幕入った途端、挨拶も無しに死刑判決を受けた事はあるだろか?あったら是非とも反論してみて欲しい。出来たらの話だが。
「話が見えてこないのですが?どうなってるんですか駒ちゃん先生!何で俺は先輩の一存で死ななきゃならない運命になっているんですか!」
「お、落ち着いてください鬼島君!先生は弁護人です!この不当な裁判を先生と勝ちましょう!」
この部屋には閻魔とと女神が存在しているらしい。当然、先生は女神で先輩は閻魔である。
「そうね。確かに理由も無しに殺されたのでは貴方の魂は報われないものね。いいわ。貴方に反論の余地を与えます。弁護人は先生。証人は吉澤さん。私は裁判官と検察官をしますが勿論反論は無いわよね?」
これ確実に負けるやつでは?検察官と裁判官が手を組んでるって勝ち目あります??
「い、いいでしょう!先輩の望む答えになるよう全力で無実を証明して見せます!」
「その意気よ鬼島君!!」
「?よく分からんが頑張れ〜師匠〜!!」
「では被告人、席に着いてください。これから尋問を始めます。被告人は私に説明する義務が生じています。これは朝の時点で契約済みです。さぁ、私に説明なさい。」
「説明というのは、"何故朝、俺が吉澤さんを肩車していた件"で合っていますか?」
「えぇ。ではお願いするわ。ちなみにだけど嘘は罪が重くなるだけだからつかない方が身のためよ」
「鬼島君が嘘なんてつくわけありません!では鬼島君!やっちゃってださい!」
「では始めます。俺は昨日吉澤さんに学校に来ないかと打診してその際彼女は「朝が弱い」や「言葉使いが悪い」など自分を卑下する台詞が出たのでそんな事は無い。もし心配なら俺が練習台になると約束しこの問題は解決。ここまでは先生や先輩にも説明しましたが大丈夫そうですかね?」
「えぇ。この話は私も理解しているわ」
「先生も分かっています!」
「?私の話って事でいい?」
「あなたは黙っていなさい。ロリ巨乳!!」
「ろ、ロリ巨乳!?!?」
少しショックを受けたらしが反論できないのは先輩に対しての態度を改めようとしている表れらしい。いい傾向にあると思う。
「では続けます。なので翌日の朝。俺は彼女を起こしに行きました」
「ちょーっと待ったー!!!はぁ〜?貴方何で女性の家に堂々と入っているの!!」
「ですから起こす為です。ですので吉澤さんからも合鍵を貰ってます」
「はい!上げました〜!」
「「 」」
先輩と先生は絶句である。
「あなたねぇ!いくら被告人である彼が善人とはいえ、軽々しく鍵なんて渡してはダメよ!」
「そ、そうですよ吉澤さん!彼も男の子なんですよ!いつ襲ってくるかわかりませんよ!!」
「?師匠になら別に何やられても問題ねぇーぞ?」
「「!?!?」」
「吉澤さん!?それは流石に俺を信用しすぎです!!確かにこれは先輩や先生に相談すべきでしたね。反省してます...」
「え、えぇ。わかればいいのよ。わかれば。でもこれは罪1ね!3溜まったら罰を与えます」
「先生もこればかりは擁護出来ませんね...自業自得の罪1です!今後は先生を頼ってくださいね!」
「はい...」
「えぇ〜?折角いい案なのに〜...」
吉澤さんは不貞腐れてぶすーっとしている。
「話を戻しますね。それでその鍵で入り吉澤さんが寝ている2階のお部屋に入り彼女を起こしました。」
「はい!起こされましたー!」
「「 」」
あ。この流れはもしや...
「だから!知っている人でもホイホイ部屋に招き入れては駄目よ!何考えてるのあなた!」
「吉澤さん!?いくら人畜無害でもダメんなですよ!」
「さーせーん!w」
多分吉澤さんは反省していない。
「これは罪1プラスですね」
「ちょ、ちょっと待ってください!これ2人で1つ何ですか!?」
「当たり前じゃない?一蓮托生ってやつよ。観念して続きを語りなさい」
「わかりました...その後俺は吉澤さんの為に朝食をササッと作り1度帰宅しました。朝食を食べ終え、また吉澤さんの家に行きました」
「一部引っかかるものがありますが良しとします。続きを」
「吉澤さんが朝は弱いと仰って居たので仕方なく肩車を...」
「そこよ!そこ!!なんで肩車の流れになってる!!貴方が引っ張ってでも連れてくれば万事解決じゃない!!」
「でもそれだと荷物を運んでいるみたいで忍びないといいますか...」
「クッ。そこを突かれると弱いわね。貴方は自分を犠牲にして行動するものね。それは美徳でもあり、愚かな事だわ」
「すみません...」
「し、真城さん。そこまで言うのはちょっと...」
「先生も思っておいででしょう?まだ入学して数日ですが彼の普段の生活が垣間見えるくらい自己犠牲的です。そこは先生も注意した方がいいと思いますよ」
「そうは思ってもやはり教え子ですので少し甘えてしまいますね。わかりました!今後はもう少し鞭を与えます!」
「程々にですよ?まぁ、とにかくこれで罪は3つ目です。さて、どうしてくれようかしら?」
あ、今ので溜まったんですね。
「なるべく軽いのでお願いします...」
「貴方にそれを願う権利はないわ!そうね〜...ではゴニョゴニョ」
「はい?」
「だから!わ、私の事、し、下の名前で呼んでくれないしから...」
「何故?」
「いいから!」
「...琴音先輩?」
「〜〜〜〜!!!!」
「大丈夫ですか!?琴音先輩!!顔が赤く!保健室に行きましょう!」
「い、いいわ!大丈夫だから!!とりあえずこれで話は終わりよ!早く帰って頂戴!!」
「?わかりました。失礼します」
「よく分からんが私もバイバーイ!」
「あ、待ってください吉澤さん!吉澤さんは先生とお話がありますので残ってくれませんか?」
「?おーわかったー!つうことで師匠またな!」
そうして俺は生徒相談室を後にした。先輩は何故下の名前で呼ばれたがるのか分からなかったが、誤解が解けてよかった!
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