第一章 思ってた転生と違う!!

 (・・・目覚めよ・・・)


・・・んっ・・・


 (目覚めよ・・・)


・・・?

・・・何・・・?


 (目覚めるのだ・・・)


頭の中にしわがれた声が響く。

「・・・・・・」

誰なのか問おうとするが声が出ない。

 え・・・何・・・声出ない・・・口は・・・?


口どころか喉の感覚もない。どうなっているのか確かめようにも、手足の感覚もない。顔の感覚も、体の感覚も。感覚と感じられるものが聴覚以外に感じられなかった。

 私・・・どうなったの・・・確か二人に落とされて・・・私、死んだの?

ここは何?天国・・・?


曇った思考で状況を整理しようとするが、視覚もないので暗闇だけでは何の情報も得られない。


 (目覚めたか・・・感覚がないだろう。ワシは神じゃ。ここは思念の世界。お前は地球での生涯を終えたのだ・・・)

 しわがれた声の神がいう。

 そっか・・・やっぱり私は死んだんだ・・・


 (お前の人生は受難のモノであったな)

他人事みたいな言い草に、少しばかりイラっとした。

 そうですねぇ、いわゆる【普通】とはかけ離れていたとは思います。でも、何か試練があったんですよね?そう!例えば前世で悪行三昧で、今世で付けが回ってきたとか!!


 (いや・・・そのことなんじゃが・・・)

歯切れの悪さに嫌な予感がする。

 なんでしょう・・・?

今は顔がないのだが、満面の笑みで聞いていると思ってもらいたい。


 (いや・・・その・・・のう?・・・)

姿は見えないが、しわくちゃのジーさんがモジモジしながら言ってるんだろうなっていうのが思考に浮かぶ。


 のう?じゃないんですけど・・・?尋常じゃないってのは薄々感づいていたんですけど??納得する説明を貰えます??不運の連続で挙句に殺されたんですよ?

ってか!!あの二人はどうなったんです??そもそも何故あの二人に殺されなければならなかったんでしょう!?さぁ!!説明を!!!!


念話だけでグイグイと詰め寄る私に、ひぃいいっと情けない悲鳴をあげながら神はシブシブ答え始めた。


 (お主等人間に神の事情を言った所でどうにもならないのだろうが・・・

実は、人間の人生の物事を配分するシステムがあるんじゃ・・・)

 システム??神の世界も機械化が進んでいるのかしら・・・


 (そんな所じゃ。そのシステムにエラーが出てのう・・・ワシがそのぉ・・・飲み物をシステムにぶっかけてのう・・・まぁそんなこんなで、不幸成分がドバーーーーッと入ってしまったんじゃよぉ

 いやぁ、あの時は参ったのぉ!!上司には怒られるし、女房は出ていくしで、ワシも散々じゃったぁ。アッハッハッハッハ)


 ・・・・ハイ・・・・?


 (まぁそんなこんなで、どうするぅ?ってなってのぉ。こんなに不運ならすぐ死ぬじゃろって事で、まぁ死んだら詫びとして転生する人生を選ばせてやれば良いんじゃね?ってな感じでの??今話しかけておる!)

 ・・・じゃぁ私の不運に前世的な因縁は無く、私の寿命に運命的な何かがあるわけでもなく、ただの神の凡ミスで、散々な人生になることは重々承知の上、私の人生が終わるのを指くわえて待ってたってこと??んんんんんん!?!?!?!?


 (うぅ・・・実態が無い筈なのに顔が近い気がして落ち着かないワイ・・・)

 あの二人は!?私を殺した二人には何かバチが当たるとかは!?!?


 (無いの。不運故に起こってしまった事なのじゃ。あ、ちなみにお主に多額の保険金とやらをかけて殺したようじゃから、死後は地獄いきじゃ。即転生は無いのぉ。

 まぁ、ワシとしては早めにお主の事後処理が出来てはっぴぃじゃがのぉ♪)


 はぁ!?!?私死んでるのよ!?!?何がはっぴぃ♪なのよ!!ふざけんじゃないわよぉおおお!!!!!

念話なのが口惜しい。胸ぐら掴んでガグガグさせたいが、そのための身体がない。


 (わ、悪かったのじゃ・・・じゃから、こうして次の人生を選んでもらいに来た!!ほれほれぇ、何でも好きな人生にしていいのじゃぞぉ??

 なーんでも好きに出来るのじゃぞぉ??容姿を良くするか?すべて上手く行く運勢にしようか!?運命の伴侶は??

おぉ!そうじゃ!!いっそハーレムにするか??地球人は好きじゃろ?ハーレム!)

小躍りかましてそうな神の言葉に少し冷静になる。


 この選択を間違えてはいけない。今までの人生、すべて許せるような、無かったことに出来るような、とにかくこの選択だけは間違えてはいけない。重要事項だ。


 まずは容姿。平凡が一番なのだろうが・・・実の妹に夫を取られた経験が痛い。何気にトラウマだ・・・容姿端麗超絶美女。これは外せない。

 次に運。今までが最悪すぎた・・・運がいいってどんな感じ??普通の運がどれほどなのかが分からない・・・分からないモノは怖いので、とりあえず最高の運にしてもらおう。

 運命の伴侶は・・・正直運命に任せたい。どの人と一緒になると分かっている人生の何が楽しいのか・・・ラブロマンスの答えは分からない方が愛せるというものだ。これは女子として外せない!!

 そしてハーレムは遠慮したい!!前世で経験した友人たちの痴情のもつれ・・・運命の人がいるなら一人で良いのだ。ってか、地球人ってハーレム好きなの??え、そうなの??

 そして最後に絶対外せない。


 【平凡な人生】


これだけは外せない。波乱万丈な人生なんてコリゴリなのだ。山あり谷ありの人生はもういらない。平々凡々・・・それこそが嗜好。頼みますよ神様!!

 つらつらと条件を並べていく。

 (わがままじゃのぉ・・・)

ボソッと不満の声が聞こえたので、無言で圧力をかける。

神は一声咳ばらいをし

 (まぁええわい・・・詫びじゃしな・・・)

そういうと注意事項を並べだす。

 (では重要事項を説明する。丙(お主)は乙(神)に対し・・・)


まてまてまてまて!!!何の契約!?簡潔にいけないの?え、乙、丙でする話!?

神の長そうな重要事項をストップする。いや、だって、え、何。転生って乙、丙なの??みんなコレやってんの??省略してるだけ??私が知ってるラノベと違う・・・


 (もぉ・・・注文が多いのぉ。簡潔にじゃな。

 要するにじゃ、この転生にはクーリングオフは無い!!不満があっても人生のやり直しは出来ないって事じゃ。

 まぁ。不満なんかあるわけないのぉ?お主の注文通りにするんじゃからな!問題ないじゃろ?)

なるほど・・・まぁ・・・人生って何度もやり直せるもんじゃないし・・・やり直せると思ってなかったし・・・うん。問題は無いかな・・・??


 (よし、決まりじゃな。じゃぁ早速人生を調合するぞ!

 えぇっと・・・コレがこうで・・・あれ??確か・・・あぁ!そうじゃそうじゃ・・・

 で、次は・・・・んー・・・??なんじゃったか・・・コレでええか?

えぇい!最近視力が落ちてきたのぉ・・・ココに入れるんじゃったかな・・・?まぁええか。なんでも・・・よしっ)


 んんんんんんん???

な、なんか・・・すごく不安なワードのオンパレードなんですけど、、、

え、ねぇ、神様??ちょっと??注文通りじゃなかった場合って・・・ねぇ!?

(なんじゃ??注文がなんだって?

ほれ、転生が始まってるぞぉ!今度の人生楽しんで来いよぉお)


 え、ちょ・・・ま、まって・・・ねぇ!!怖い!!!怖いんだけど!?!?

かみさまぁあああああああああああああああ!!!!!!!!



暗闇の虚空に私の念話が響き渡り、同時に漆黒だった空間は眩い一点の光を放ち始めた。

私の意識はその一点に吸い込まれていき、そうして私は意識を手放したのだった。

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異世界転生したので、モブとして生涯を終えさせて頂きたい! かえる @minaduki_riko

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