誕生日の喧騒2

第24話

数カ月後。9月25日

弥生の誕生日が明日に迫ったこの日

夜斗は霊斗を呼び出し、何故か八城の家にいた



「さて、明日は弥生の誕生日なわけだが…。何も名案が浮かばない。助けてくれ」


「そんなことで呼んだのかよ…」


「しかも俺の家ぇ…」



当然その場には莉琉もいる

楽しげに会話を聞いているようだ



「別に利害関係程度で相手の出方を伺うみたいな柔い心してるなら計画いらなくね?」


「いやそう思ったんだが多少好感度を稼ぎたい理由があるんだ。あと、俺の誕生日で派手に祝われた。それとサラッと罵倒してんじゃねぇぞ」


「良かったな。あと罵倒じゃない。派手にやられたからなんなんだよ」


「返さなきゃ気がすまない」


「「わがまますぎる…」」



霊斗はコンビニで買ってきた紅茶を、八城は莉琉が入れたコーヒーを飲み干して唸り声を上げた

2人共まともに人の誕生日を祝ったことがなく、妙案が出ないのだ



「普通に祝うじゃだめなんか?」


「そんなんだから雪菜に遊ばれるんだぞ」


「雪菜さんは関係ないだろ!?」



名前で呼ぶ程度には関係が進んだらしい

とはいえまだ敬称がついているが



「だがな夜斗。俺たちに相談したところで良い案は出ないぞ」


「良い案についてはハナから期待してないからいいんだよ。人手が欲しいだけで」


「「サラッと傷つくぅ…」」



謎に気が合うのか稀にセリフが被る霊斗と八城を無視して莉琉に目を向けた



「なるほど。初めから案は私に出させる気だったってことかしら」


「正解。俺の時も莉琉発案らしいな」


「あら、話しちゃったのね。まぁ良いわ、ならちょっと考えてあげる」



クスッと笑い輪に入る莉琉

ちょうど焼き上がったフィナンシェを中央に置き、数秒で案を出した



「人手があるなら、やれるわよ。夜斗、お菓子作れるわよね?」


「…自宅の計量器使えばなんとか。類似する物でも可」


「なら大丈夫よ。緋月君は八城と買い出しね。それと夜斗、普通のプレゼントくらいあるわよね?」


「無論だ。先月買って天津風家に預けてある」



弥生はかなり目ざとく夜斗が買ったものを見つけてくる

そして最近成人向けの本が全て消え去ったのだ

見つからないためには他の場所へ隠す必要があり、白羽の矢が立ったのが煉河と紗奈の家だった…ということだ



「記憶に残るパーティーにはできると思うわ。八城、緋月君連れてスーパー行ってきてくれるかしら?買うものはメールしとくわ」


「了解。拒否権はなさそうだしな。ほら行くぞ二番目」


「二番目言わんでください…。別に一番望んでないし」



八城が霊斗を二番目と呼ぶのは、夜斗の友人になったのが二番目だからということだ

八城の中の一番目は自分と久遠たち4人である



「さて、夜斗は今からお菓子作りよ。私の趣味でお菓子系の材料は山程あるわ」


「いや…だから俺自宅の計量器ないと無理なんだってば」


「今から行けばいいのよ。安心していいわ、紗奈に連絡して弥生ちゃん連れ出してもらったから」


「手が早すぎる!」



ここまで見越していたのか、はたまた少しの隙に実行したのかはわからないがその行動力にはいつも舌を巻かされる

玄関から出ていく八城と霊斗を見送り、エプロンと材料をカバンに入れた莉琉に声をかけられ立ち上がった



「さ、行くわよ」


「…そうだな」


「楽しいパーティーしましょ」



莉琉は心底楽しそうに笑った

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