第40話
マリナ教師の【無】属性特訓が始まった。
事前にSクラスの皆には話を通しており、皆が快諾してくれた為、授業の一部は俺がサポートすることにした。
その中でも、魔法の授業では【無】属性魔法を取り入れる方向も検討しようかと思っている。
「魔力は体内に循環するエネルギーだが、それを体外に放出する時に、人は無意識に属性を付与する。 その結果出るのが火や水や風や土なんかだ。 中にはそれ以外にも変換できる者がいるし、それら全てが出来ずに魔力がそのまま出る場合もある。 それが【固有】属性や【無】属性だ。」
まずは掌を上に、手前へ突き出した状態で静止する。
そのまま手から魔力を放出させることで、生徒達とマリナ教師にお手本を見せる。
「まず、大切なのは魔力を確認すること。そうでないと、無意識のうちに決まった量だけを注ぐようになってしまい、年齢経過で調節が難しくなるからだ。」
「なあノア君、これが効率の良い魔力の使い方を学ぶ為なのは分かるんだけど、【無】属性じゃなくてもよくない?」
「そうだな、ヴィル君。だが、【無】属性は非常に使い勝手が悪いが便利だ。今から実演する。」
魔力を周囲で旋廻させる。魔力で空気を圧縮して水を発生させる。魔力同士を打ち付けその摩擦で火を熾す。魔力で地面を隆起させる。
これら全て『サイコキネシス』の応用だ。
「このように、基本属性くらいならいくらでも再現が可能だ。とはいえ、魔力が無いと使い物にはならない。そのため、魔力を使っては回復させる方法を取る。全員の目標値は100な。」
このクラスでハクと俺を除いた最優秀はアレクサンダー君。彼は最近25になったらしい。
つまり、最優秀の四倍の数字。
目標は高い方が良いとはいうが、それでも無茶苦茶な数字だと、不満の声があがる。
「できるできないじゃない。『やる』んだよ。」
不満ならマリナ教師に言ってほしい。
それでも、皆にとっては有益だ。
その為には
◇◆◇
昼休みにはマリナ教師のマンツーマン授業だ。
勿論、俺が教師でマリナ教師は生徒だ。
「マリナ生徒の魔力量はどれくらいですか?」
「えっと、だいたい500ね。端数までならステータスを確認させてもらうけど。」
「いえ、それなら結構、多少無茶をしても問題無いようなので、十分です。」
多少無茶をするという言葉に顔を引き攣らせるマリナ教師に、俺は微笑みかける。
「『魔力譲渡』をご存じで?」
「え、あれをするの?昔されて気持ち悪くて、それ以来苦手なんだけど。」
『魔力譲渡』とはその名の通り、魔力を受け渡すことである。
方法としては正面に立った二人の人が、両手を繋ぎ、乾電池と導線の様な感じで魔力を流すのだ。
そして、俺はマリナ教師の魔力を三回は補充できる。
さて、お楽しみの時間だ。
「まずは魔力を放出し続けましょう。」
「はい。」
「そして、その魔力を自由に動かせるようになってください。」
「待って、分かんない。どうやるの?」
早速質問を飛ばしてきたマリナ教師。
バツという訳ではないが、俺の魔力を使ってマリナ教師の魔力を掴み取る。
「ひゃっ!?」
「これが魔力の感触です。これをこのままもぎ取ればマリナ教師の魔力を無理矢理奪う事もできます。」
「な、なんだか変な感じの触り心地ね。」
俺は『手』を意識しているため、そう過敏な反応は無いが、まだちゃんと認識できていないマリナ教師には、全身をまさぐられているような感覚があるだろう。
それは自分の意思で動かせるようになって初めて薄れる感覚で、最初期には良く有ることだ。
「魔力はいわば粘土です。自由に形を変え、自由に操作できる。要は想像力の柔軟性です。」
その点で言えば、俺の【無】属性魔法は、非常に型にハマったものだろう。
こういった使い方もできなくはないが、それでも形を決めて使うのは非常に効率が良い。
扱い易いとだけ言っておこう。
「まずは放出した魔力を自由に使えるようになる必要があります。これをマスターしてから次のステップへ進みますので、期間を設けましょう。三日で完璧に仕上げてください。」
「み、三日!?」
「放出だけなら四六時中できます。その間回復も必要はありません。ただ、放出の後に霧散させると回復の必要があるので、できるだけ収納するように心がけましょう。」
とはいえ、本来なら霧散させた方が魔力の量を増やすのにちょうどいい。
しかし、今マリナ教師が覚えなくてはいけないのは魔力の操作。
その技術を完全にモノにしない限り、魔力を増やすのと両立するのは悪手だろう。
「では、三日後にテストしますので、練習を怠らないように。」
異最効率論〜才能が全ての世界で努力する〜 草間保浩 @kusama-yasuhiro
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