第14話


物理的にではなく精神的に疲れた。

 俺は最後まで魔力の鎧を制御できず、姉が帰る月の最後までマスターできなかった。


筋力と忍耐、魔力が上がったものの、何故か敏捷は伸びず、俺は魔力の鎧の速さに適応できなかった。


 その為、姉との組手で使えるようにできたのは、数種類だけだった。

正直な話、魔力の鎧にはそこまで執着していなかった。

 それよりも、その技術を応用して、様々な技を作れたのは楽しかった。


「じゃあ、私は学校で待ってるから。」

「うん、その時にはもっと驚く技を作っておくからね、お姉ちゃん。」

「たまには帰ってくるんだぞ!これからアスタも大きくなる。あんまり帰って来ないとお姉ちゃんって呼んでもらえないぞ。」

「脅さないの。ノアもアスタもハクちゃんも待ってるから、無理せずに頑張ってね。」


 別れの挨拶を済ませ、姉は一人王都へと向かった。

そして、俺はというと、基礎的な鍛錬にも加え、技の練度を上げる為の訓練をした。


 次に会う時には絶対に勝てるように。


◇◆◇


 一年が経過した。

俺は五歳。あと三年もすれば姉の様に学校へ入学する。

つもりではあるが、正直心許ない。


 俺の家族。特に稼ぎ頭の父は一家を養う程度の収入はあるものの、学費も高い学校に俺を入学させられるとは思えない。

 そして、少なくとも俺が養われるという状況に後ろめたさや罪悪感を感じているのも要因の一つだろう。


 という事で、俺は小遣い稼ぎをする事にした。


 この世界の通貨単位はギル。なのだが、基本的に使われていない。

皆、銅貨や銀貨等の枚数で言うのだ。


 そこで、通貨の関係と言えば、

偽貨百枚が銅貨一枚。銅貨百枚が銀貨一枚。銀貨百枚が金貨一枚。金貨百枚が白貨一枚。

 そして、白貨の更に上に黒貨というモノがあるらしいが、めったに出回らないらしい。


 そりゃそうだ。偽貨一枚が1円だとして、銅貨は100円、銀貨は1万円。金貨は100万円。

白貨は1億円。黒貨なら100億円だ。

 一般は勿論、貴族だって扱わない。


 そして、姉の通っている学校は、格式の高さから貴族も多く通っているものの、その本質は実力主義だそうで、学年ごとに行われている序列決めでの1位から10位には学費が免除されるらしい。


 もちろんのこと俺の姉、イキシアは堂々たる1位を勝ち取っている。いたそうだ。

むしろ、上の学年の1位と戦って勝っては飛び級をしてを繰り返しているため、長期間同じ学年の1位をしてはいなかったそうだ。


 

 閑話休題。

問題は入学費。

 例え特待生として学費完全免除だとしても、入学費は得ないといけない。

 入学に掛かるのは銀貨10枚。

つまり10万円。

 これだけの額を払って見せた父と母はすごいと思いつつ、あまり新しい子供が生まれる事は考えていなかったのかなと思ったりもする。

 

 だが、俺は自分の力で入るつもりだ。


その為には、金が必要となる。

 そうとなれば、やはり魔物狩りが定番なのではないのだろうか。


 薬草を採ってポーションを作る?

治療を代行して金を貰う?


 んん、どちらも魅力的だ。

実際問題、俺の称号に調合や治療師等の物は無い。

 【無】属性であっても使える治療術も習得した。


 手当たり次第にというのも良いと思う。

それぞれを体験して、一番金の入りの良いものにするか。


「ハクはどう思う?」

「ん?なんでもいいと思うぞ。ノァが間違えることは無いしな!」


 そう来たか。

信頼してもらえるのは嬉しいが、自主性を持ってほしい。

 とは言え、やはり5歳児には難しいか。


 魔物狩りはもうちょっと実力が付いてからということで、俺は後回しにした。


「となると、どうすれば良いかが問題になるな。」


 この1年で、この村以外の地理も学んだ。


 この村から北に半日程の所に小さいが意外と発展している町があるらしい。

作ったものはそこで売るとしよう。

 材料に必要なのは、容器と中身。

 

 薬草に関しては本で読んで学んだ。

傷に効果のあるもの、眠気を誘うものに、解毒作用のあるもの。


 それらは『ボックス』の中に仕舞ったのだが、まだまだ大量に生えている。

栽培も良いかもしれない。


「よし、一旦作ったり育てたりしてみよう!」

「ん!じゃあハクも手伝う!」


 こうして、俺とハクによるポーション作成が始まった。

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