新たなる能力者
……何が起こったのだろうか。
僕は、もう取り戻すことなど無いと思っていた意識を取り戻した。
それも、割とすぐに。
蛇にやられた時は、生い茂る草木の隙間から光が差し込んでいた。
そして、今もそうだ。
少なくとも倒れる前と今とで、日差しも含めて状況があまり変わっていないということから、今は「蛇にやられた時と同じ日の日中」であるということが分かる。
倒れたまま上を見上げると、そこには元気になった麗奈ちゃんと……誰だろうか、茶髪の少女がいた。
「あっ、環くんが目覚めた!!」
「おはよぉ。その分なら……体調は大丈夫そうですねぇ。環きゅん」
「『きゅん』」
随分と変わった呼び方をするものだ。
思わず、そっくりそのまま言葉を反すうしてしまった。
「聞いてよ環くん!この人が私達のこと治してくれたんだよ!」
「そうだったんだ。……ありがとう、助かったよ。名前は?何ていうのかな?」
「ぼくの名前?ぼくは『
「よろしく。僕の名前は……その分だと、麗奈ちゃんからもう聞いてるよね」
「うん!お互いに自己紹介は済ませてるよ!」
「よろしくお願いしますぅ。あっ、言い忘れてたんですけどぉ……。一応僕、男なのでぇ……おトイレは環きゅんと一緒ですぅ」
「「男!?」」
その見た目と声で!?
男特有のガラガラ具合が皆無の綺麗な高音に、身体全体を見ても細い線。
そして、この島に拉致された日が全員同じだった場合、もう1日は経っているにもかかわらず艶やかな長い茶髪。
絶対に女の子だと思っていた。
「尊ちゃん、女の子だったんだ!?なんか新鮮!」
「騙してたみたいで申し訳ないですぅ……ぼく、よく女の子に間違えられるんですけどぉ……そんなに女の子っぽいですかぁ?」
「女の子っぽいよ!女の私から見てもかわいいもん!」
「えへへ、照れちゃいますねぇ」
顔を押さえて照れ隠しをする尊くん。
……やはり、女の子にしか見えない。
「ねえ尊くん。何で私達のこと……助けてくれたの?」
麗奈ちゃんが地面を指差しながら尊くんへ問う。
指の先には、すっかり伸びてしまった蛇が一匹。
どうやら、尊くんは蛇の始末までしてくれたようだ。
……見ず知らずな上に、妨害者かもしれない僕達を助けるメリットがあるとは思えない。
わざわざそんなリスクを冒してまで僕と麗奈ちゃんを見殺しにしなかった理由は、人を疑ってしまうようで申し訳ないが確かに気になってしまう。
「何でって……理由なんてありませんよぉ。ぼくの目の前で死なれるのは、後味が悪いですからねぇ。それに運営からの死角……妨害者なら、この森に毒蛇がいることも分かってるハズですしぃ。その毒蛇にやられていた二人が妨害者じゃないっていうのは確信してましたぁ。もし妨害者がうっかり蛇にやられちゃってたんだとしてもぉ、その程度の妨害者になら負ける気しませんでしたからぁ」
なるほど。
少し舐められている気もしたが、ここは彼の洞察力と戦闘の自信に助けられた、ということだろうか。
「へぇ~……」
「さぁ、いつまでもここにいたってしょうがありませんよぉ。これから神社に行くんですよねぇ?僕もついていっていいですかぁ?」
「勿論!頼りにしてるよ、尊くん」
「いえいえ~。ぼくも、ひとまずは信じられる仲間が出来て嬉しいですよぉ」
木をよじ登り、枝から枝へと飛び移りながら先へ進む尊くんの後を、僕達は草木をかき分けてついて行く。
見上げると、木々の隙間からは小さな鳥居が見える。
そしてあっという間に、僕達は七宮浜神社がある山の麓へとやってきていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます