第94話 天使⑱

「反乱軍幹部は自害する」


カルーミが唐突にそう宣言する。その目はすでに覚悟を決めているものだった。おそらくこの反乱を起こす前に決めていたのだろう。もちろんここにいる幹部だけではなくほかの街に展開している天使だったりカミル自身もそうだったのだろう。


本人たちがそう決めているのなら俺が何か口出しするべきことじゃない。


「そうか。…てっきり反乱の後は何か新しい組織でも作って治安維持なんかをやると思っていたんだがな」


「そんな胡散臭いことやるわけないだろう。私たちはあくまでも改革をしたいだけだ。独裁政権を作りたいわけじゃない」


「まぁ、お前たちがそれで納得しているのならそれでいい。ただ自害するのは少し待った方がいいんじゃないか?」


「なぜだ?別に時間を空けたところでこの決意は変わらないぞ」


「お前たちはこの国がどうなっていくか気にならないのか?すぐに死んでしまったら実際この国がどうなっていくのかわからないだろう」


「…なるほど。一理あるな。考えて置こうじゃないか。それでこれをどうするんだ?」


カルーミはそういうと顎を使ってテントの隅でおびえているこの町の有力な天使たちと気絶している管理者を指す。


「とりあえず管理者の天使に関してはリーシャ様の命令に従わなかった反逆罪が適応されるだろう。あとで拘束しておく」


「まぁそれはそうだろう。私としてはあの天使たちも処分してしまい所ではあるが?」


カルーミがそういうと固まっている天使たちは悲鳴を上げてカルーミから距離を取ろうとする。


「俺としてはあいつらに関しては無罪放免でいいと思う。もちろん中には違法行為をしていてどうしようもない奴もいるかもしれんが商人は重用だ」


「わかった。それなら商人に関しては無罪放免ということにしよう。ほかのやつらはどうする?こいつらは管理者と一緒になって横暴を働いてきていたやつらだぞ」


残った天使たちというのは教会の幹部、裁判所関係者、警察関係者などの街の公共事業と言ってもいいところに関係している天使たちだ。本来ならここにいるのはおかしいことではない奴らもいるが話の内容から考えるにどうやらこいつらは癒着をしていたみたいだ。


警察はともかくとして裁判所の天使というのはこの町で任命されるわけではなくリーシャ様が直々に命じた天使が来るはずなのでここにいること自体がどう考えてもおかしい。おそらく買収されていたんだろう。教会も一応中立の立場らしいがこれを見ていると怪しく感じる。

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