第90話 天使⑬

俺が後ろからクーラの陣地を攻撃する構えを見せると彼女はこちらに本部の防衛部隊を回して迎撃をしようとしてきた。


しかし俺がいるにしては少し戦力が少ないように感じる。もしかしたら俺のことをはったりだと思っているのかもしれない。確かに俺は本来ここにいるはずがないし俺だってここで戦闘をする予定はなかった。


ただ司令官であるカルタイが俺のことを駒として使ったわけだからやるしかないだろう。ただ俺の仕事はクーラを殺すことじゃない。あくまで本部の精鋭部隊を引き付ける役目だ。今回の主役はあいつらに任せようじゃないか。


するとクーラの本陣の横から黒塗りの騎士たちが出てきた。


彼らはカミル、直属の部隊。今回の反乱では戦闘をしていないがカミルの遺志を継ぐ者たちだ。それが旧体制のシンボルであるクーラを倒すことで改革が行われるということを印象付けようじゃないか。


というかカルタイは良くこの部隊を集めたものだ。反乱にも参加していないし実質的に解散状態になっていた騎士団を1から集めるなんてすごい労力だっただろう。


カミルも自分直属の騎士団を巻き込みたくないから解散するなんて面白いことをする。


そんなことを考えていると騎士団の団長だと考えられる男がクーラの本陣に剣を向けるとそれを合図に騎士団が突っ込んでいく。


俺たちもこの精鋭部隊をさっさと片付けて時代が変わる瞬間を見に行こう。


今回俺が率いているのは普通の騎士団。俺の直属部隊みたいに精鋭の集まりというわけではないが普通に戦える腕をしていることに間違いはない。それに俺が少し暴れれば一瞬で片付く。


ということでクーラ直属の部隊だと考えられる精鋭部隊の天使を吹き飛ばすとクーラの本陣に向かう。


本陣の中に入ると数人の護衛が必死にクーラを守っているようだがこれはもう長くはもたないだろう。


「セラフ殿か。すまないが少しだけ待ってもらえないだろうか?」


「わかっている。今回の主役は俺ではなくお前たちだ」


「感謝する」


団長だと思われる騎士はそういうと戦っていた天使の首を跳ね飛ばすとクーラに近づいていく。


「やめて!こないで!」


「残念だがお前の命を頂戴する」


騎士はそういうとクーラの首をはねた。


これにより実質的な保守層の敗北が確定した。クーラには悪いがこれを機に時代が変わっていくだろう。


「終わったか」


「待ってもらって申し訳ない」


「いや、大丈夫だ。歴史が変わる瞬間を自分の目で見たかっただけだ」


騎士と俺はクーラの亡骸に対してお辞儀をした。

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