第45話 一方そのころほかの天使は②
フトゥームが守備隊を探して走り回っているころレースは雪だるまを作っていた。
そもそもこの世界では雪が降るような地域が少ないため雪というのが珍しいもの。それもあってレースは雪に夢中なようだ。
「レース、久しぶりだな」
「え?なっ…なんでここにいるの」
「そりゃ、お前たちがなんか作戦をやってるみたいだから応援に来たに決まってるだろ」
「どっ…どこでその情報を持ったの?このことは誰にも言ってないのに」
「そりゃ、俺も諜報部隊ぐらいは持ってる。そこで調べたらお前たちが怪しい動きをしてるから追いかけてきたってわけだ」
「じっ…じゃあ、ほかの天使にもこのことは教えてるの?」
「そんなわけないだろ。今はお互いに探りあってるんだぞ。下手に情報を渡したりしたら面倒なことになるかもしれない」
「そっ…それならさっきの雪が舞い上がっているのはカミルのせい?」
「ん?なんだそれ。俺はお前たちのことを監視するためにここら辺にずっといたぞ?」
「そっ…それじゃさっきの雪は?」
「そもそも雪が舞い上がるなんてそんなこと起きてないと思うが」
「え?」
レースはやっとこの状況のまずさがわかったようだ。姉に伝えたのは偽の情報から編み出した意味のない作戦。そして今それを姉に伝える手段がない。
「どっ…どうしよう。すぐにお姉ちゃんに伝えなきゃ」
「それなら大丈夫だ。俺の部下がすでに回収に向かっているはずだ」
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そのころリッテラは王都に図書館で本を読んでいた。
もちろん、今回の事件について考えていないわけじゃない。なんならそっちのほうをメインに考えているといってもいいぐらいに考えている。
リッテラが本を読んでいる理由は心を落ち着けるために他ならない。彼がこんなことに本を使うというのは普通ならあり得ないことだ。彼にとって本とはこの世界に生きる理由そのものであり神のようなものでもある。
そんな彼が本を流し読みをしているのだ。明らかに異常事態である。
そんな彼は寡黙だが以外にも多くの配下を持っている。その数はセラフ、クーラに次いで3番目だ。
そんな配下の数を持っているリッテラのもとにレースとフトゥームの件が伝えられないわけがない。
「リッテラ様、レース様とフトゥーム様が行動を起こしたようです」
「どこだ」
「グラキエースだそうです」
「なるほど、グラキエースか。あそこには大きな倉庫があったな」
「はい。それともう一つ、カミル様の動向が確認できませんでした」
「動向が確認できない?どういうことだ」
「王都から出たところまでは追えたのですがそこから消えたように痕跡がつかめなくなりました」
「なるほど…」
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