第32話 馴れ合い

もしかしたらこの人は第1階の天使に匹敵するのかもしれない。少なくとも弱いなんてことはない。


「カミルとセラフ、久しいですね」


「あぁ、そうだな。お前らと天使にはあんまり接点もないしな」


「そうですね。できることならあなたたちとともに戦いたかった」


「そんなことはどうでもいい。そいつをさっさと回収してくれ」


「確かに私たちが話す場にこいつらは不要ですね。それならこうしましょう」


そういうとその赤いマントの男は手をたたいた。


するとそこにいたはずの何人かの騎士は消えた。


「こうすればちょっとぐらい立ち話をしてもいいでしょう?」


「まぁ、少しぐらいならいいか」


いきなり消えた騎士たちに驚いているのは俺だけ。普通に考えたら人が急に消えたら驚くと思うんだけどな。もしかしたらここでは当たり前なのかも?やっぱりこの世界はファンタジーだ。


「それでわざわざ俺たちと話したいことはなんだ?」


「そんなに急がないでゆっくり話をしたっていいのでは?」


「この後俺たちはこれの後処理とかがあるんだよ」


カミルが顎でそこで倒れている悪魔?を指す。


確かに捕虜もいることだし急がないといけないかも。


「あぁ、確かにそうでしたね。天使は大変だ」


「…あおるだけなら帰るぞ?」


「おぉっと、それは困りますな。それなら本題に行くとしましょうか」


「これからは最初っからそうしてくれ」


「善処しますよ」


「ッチ」


カミルが舌打ちをする。


どうやらこの会話は今日が初めてじゃないみたい。たぶんこの善処するっていうのも結局はやらないってことと同じなんだろうな。


「私があなたたちに伝えたいことは一つ。この町に裏切り者がいるようです」


「…それは騎士団の中にって意味か?」


「いえ、天使、それも相当高い階級の天使です。くれぐれも気を付けたほうがいいと思いますよ。それでは」


そういうと彼はまた霧のように消えていった。


「もったいぶるんじゃなくて正解を教えろっつうの」


カミルはそんなことをつぶやきながら捕虜の悪魔を確保する。残りの死体なんかはそういう部隊がいろいろやってくれるらしいから放置するだけでいいらしい。


元日本人の俺としてはちゃんと火葬してあげて埋葬してあげたいような感じもするけどここは異世界。郷に入っては郷に従えってやつ。それに勝手にそういうことやってあとで取り返しのつかないことになったら困るからね。


「それじゃ、セラフ。町紹介が終わったばっかで済まないがこれから会議をやる。お前も来てくれ」


「わかった」


ということで俺たちは前会議をしていたバーに捕虜の悪魔を連れながら向かった。


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