第16話 リーシャからの提案

リーシャに呼び出されたけど、こういう時は一回出てから呼び出されるまで扉の前で待つのが普通らしい。


部屋の中にとどまろうとしていた俺にカミルがそう言って俺のことを引きずっていこうとしたから多分本当だろう。


「お前、記憶を失ってるって言ってたがまさかリーシャ様への態度すら忘れていたとはな」


「ですが、リーシャ様はセラフ様が記憶を失っていることをご存じのはずでしょうしどうにかなるでしょう」


「…俺ってそんなにヤバいことした?」


「作法的に言えばそこまで問題になることじゃないんだがいつもとは違う態度でリーシャ様に接していたことが問題になるんだろうな」


「作法的に良いならよくない?」


「口調がいきなり変わったりするとリーシャ様との関係が変わったって思われるんだよ。今回の場合ならリーシャ様とセラフが個人的に仲良くなったように見える」


「…マジで?」


「マジだ」


「おそらく後処理はリーシャ様がやってくださるので大丈夫だと思います」


「はぁ、やらかしたなー」


「まぁ、記憶をなくしているならしょうがない。ほかのやつらも理解してくれるだろう」


扉の前で2人と話していたら中から呼ばれた。


ついに来てしまったようだ。


「がんばれよ」


「ご検討をお祈りしています」


2人に送り出されて中に入るとそこにはさっきまでいたほかの天使はいなくなっていてリーシャだけがいた。


…俺たちがここを出てから誰も扉を使って外に出てないけどほかの扉でもあるのかな?


「それでは改めましてお久しぶりですね。そして任務の遂行ありがとうございます」


「監視までつけられたらやるしかないですよ」


リーシャは困ったような顔をする。


「別にエクレーシアを監視のためにつけたわけじゃなくて普通にサポートのためですよ」


「まぁ、そういうことにしておきましょう」


「それでどうしますか?」


「どうしますかって何を?」


「このまま天使を続けるかどうかということです」


やるわけない。ととっさに言いかけたけどよく考えてみるとこっちに来てからのほうが良い生活をしてる気がする。あっちの世界では社畜を極めてたからこんな感じで世界を回るなんてことはできなかったし、同僚もこっちのほうが断然良い。


「あともう一回だけ仕事をしてから判断をすることにします」


「そうですか。まぁ、予想通りの答えです」


そういってリーシャは微笑んだ。


もともと相当の美人だからこうやって見つめられて微笑まれるとちょっとドキッとする。元の世界じゃ女性と話すなんてこと自体なかったからな。


「それじゃまずはこの世界の常識を学ばないといけませんね」



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