第3話

武藤みどりは刀根警部補から事件の詳細を聞いた。といっても、事件は起こったばかりだから、何が起こったかだけで、多くのことは分かっていない。

 「みどりさん、まだ何も分かっていません。上田城の周りの防犯カメラを調べ居ますが、余り期待は出来ません」

 二の丸橋の掘を走る遊歩道で人が殺されたという。日本刀のようなもので袈裟懸けで一刀だったらしい。一風変わった事件だから、解決には時間が要するかも知れなかった。

 「みどりさん・・・」

 この時、刀根警部補はみどりの異変に気付いた。ケヤキ並木に鋭い眼を向けているみどりは身動きしない。

 「どうしたの?」

 やはり、みどりの返事はない。刀根警部補は気になり、みどりが見ている視線の先に眼をやった。

 一人の若い男がこっちを見ていた。若いと言っても、見た処三十代か・・・それよりも若いかも知れないが、二十メートルほど離れているのに、言葉に出来ない殺気が伝わって来た。

 「みどりさん・・・あの男・・・」

 「ええ、誰でしょう?」

 刀根警部補はそっちに動き始めた。

 「待って・・・私たちが確かめて来ます」

 みどりは真理の手を握り、

 「真理ちゃん、行こう」

 手を引っ張られた真理はびっくりしている。真理も何かを感じているらしく、抵抗はしない。真理もみどりの剣の捌きがうまく、誰にも負けない腕なのをよく知っていた。だから、みどりは頼りがいのある友達だった。

 「刀根警部補、また連絡します」

 と、言い、平気な素振りで歩いて行った。


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