星座の小瓶をあけて

あまくに みか

わたくしは、小説

 春は血の匂いがする。


 わずかに開けた窓の隙間から、なまなましい夜が滑り込んでくる。


 鼻の奥をつくその匂いは、生命の湧きあがる喝采と、感情を揺らす秘薬のようなもの。



 沈丁花。

 雪柳。


 正解を言い当ててしまうと、途端に夢は霧散していってしまう。



 目を閉じて、もう一度。

 春の夜の気配を探す。



 ──春がくる。



 あやふやで、不思議で、あたたかくて、浮ついた、はじまりの季節。



 この物語は、そんな春のようなお話。


 空想と現実をいったりきたりする、エッセイのような物語。

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