第4話

翌朝、また、西へと向かう。


途中寄ったガソリンスタンドのカウンターにあった、サルがシンバルを叩くおもちゃを見て、ミカは言う。 


「アホや…」


その言葉を聞き、samは何故だか笑った。


「sam笑った!初めて笑った!!」


ミカも嬉しそうに笑った。


ガソリンを入れ、海岸線を走る。


浜辺に近い所へバイクを停めて、ふたりで海に入った。


波に戯れふたりで笑った。


浜辺に腰掛けミカは言う。


「あたしは海を見た事が無かった。だから、横浜に流れ着いた…でも、横浜には馴染めない。みんな他人には冷たい街だから…」


samは黙って聞いていた…。


またふたりは西へ走る。


愛知を抜け、三重から名阪国道に乗り、奈良の天理で降りた…。


奈良へ入った時にはすでに夕刻…。


天理を抜け、しばらく走る。


後ろから、ミカが道案内をする。


暗くなり、隣では木々が立つ空き地へ出た…。


「ここ…」


samはバイクを停め、ヘルメットを脱いだ。


「ここにあたしが暮らしたんだ…でも、みんな燃えちゃった…消えちゃった…」


何があったのかは知らない。


samが知る由もない。


ミカが流す涙がすべてだった…。


ミカの気持ちを知るにはそれで充分だった…。


「アホやなぁ…帰って来ても、帰る場所なんか無いの判ってたのになぁ…ホンマ、アホや…」


samはミカの肩を抱いた。


抱いたままミカに話す。


「ミカは横浜の人を冷たいと言った…」


「うん」


「それはミカが横浜に馴染もうとしなかったからだ」


ミカは黙って聞いている。


「俺は横浜の人間だぜ」


「うん…」


「なら、もう帰る家は出来ただろ?さぁ、俺の…いや、俺達の部屋に帰ろう…」


「うん!!」


samは、初めて自分からミカに熱いキスをした…。



End…。


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黒髪のミカ ぐり吉たま吉 @samnokaori

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