第3話
samが目を覚ますと、ミカはすでに起きていた。
脱ぎ捨ててあった、自分のスーツとsamの服が畳んであった。
部屋の中に洗ったミカの下着が干してあった。
コーヒーをひとつのマグカップに入れ、テーブルに置く。
「sam…」
samは目を開く。
テーブルのセブンスターを取り、火を着けた。
セブンスターの灰が落ちそうになると、samの咥えているセブンスターを横から奪い、ミカが吸って煙を吐いた。
samは起き上がり、コーヒーを啜る。
ミカに渡すと大きめなマグカップを両手で持って、コーヒーを飲んだ。
samは浴室へ行き、シャワーを浴びて、身体を拭きながら出てくる。
手には真新しいバスタオルをひとつ持っていた。
samは自分の身体を拭きながら、手に持つタオルをミカに放る。
浴室の中には、samが用意した新しい歯ブラシがコップにsamの歯ブラシと一緒に刺さっている。
ミカは歯を磨き、samの使ったスポンジで身体を洗った。
バスタオルを胸に巻き、濡れた髪はsamの身体を拭いたタオルで髪を拭い、一緒に寝ていたベッドに腰を掛ける。
化粧を落としたミカの顔は、数段幼くsamには見えた。
乾かぬ髪をタオルで拭いながらミカは言う。
「samって喋らないよね?」
「そんなことは無い」
「だって、あたしの事、何も訊かないし」
「そんな事は話したくなったら、話したらいい」
「あたし…ホントはハタチなんだ…」
「齢なんか…どうでもいい…」
ミカはまたsamにキスをした。
熱く長い口づけだった。
「sam、しよっか?」
ベッドを軋ませ、静寂が戻るとミカはsamの腕にもたれて目を閉じる。
しばらく余韻に浸ったら、samは起き出しまたバドを取り出す。
王冠を捻り、床に放る。
バドをミカに手渡し、ベッドに座る。
「ミカ、帰りたい場所は?」
「西の方…でもあたしが暮らした家は無いよ」
「でも帰りたいんだろ?」
ミカは頷いた。
「行こう」
乾いた下着を身に着け、samのジーンズとTシャツを着る。
samが革のジャンパーをミカに羽織らせ、腕を通すと、予備のヘルメットをミカに被せた。
samのサンダルを履き、samが跨いたバイクのシートへミカも跨いだ。
しっかりと腰を抱き、samの背中に頬を寄せる。
バイクは西へ走り出した。
途中でミカにスニーカーを買い、ホットドッグをふたりで食べた。
コーラでホットドッグを流し込み、samの口の端に付いたケチャップをミカは、舌でペロって舐め取り、そして笑った。
それから、samは公衆電話から店にしばらく休むと連絡した。
samはミカにも電話を促す。
「大丈夫、あたしが消えても店は気にしない…」
ミカはそう言い、寂しげに笑った。
横浜から走って静岡を抜ける頃、日は落ちて、暗くなる。
ファミレスで飯を食って、ホテルを探す。
小高い場所にあるモーテルへバイクを停めて、部屋に入った。
近所の店屋で買ったセブンスターとお菓子とビールを持って…。
「sam…何であたしを連れて行ってくれてるの?」
「判らない…」
「どこの誰だか知らないあたしだよ?」
「判らないよ…だけどもうミカは知っている…」
「知って無いよ…それにお金もいっぱい使わせてる」
「気にするな…そんなの持ってるやつが払えばいい」
「あたしはsamを利用しているだけかもよ?」
「そんなのはどうでもいいこと。ミカが帰りたいって涙を流したから連れて行くだけ…」
「samってバカなの?」
「そうかもな…」
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