第2話


samは自分着ていたジャケットを女の腰に巻き、バイクへ跨ぐように促した。


これならば、タイトスカートをたくし上げても大丈夫だろうと…。


しっかりとsamの腰に手を回し、女はsamの背中に頭を着けた。


samは自宅のアパートへ戻る。


部屋に入り、転がっていたバドワイザーの空ビンを足で脇に寄せ、女を部屋に招く。


samは、無言のまま自分のジーンズとTシャツを女に放り、冷蔵庫から、2本のバドワイザーを小さなテーブルの上に置いた。


女は下着姿を隠しもせずに、ジーンズとTシャツに着替えた。


着替えの間にsamはバドワイザーの王冠を捻って開け、バドワイザーをひと口飲んだ。


「ダボダボだよ」


「しょうがない、そんなのしか持ってない」


samはそう言いながら、女にベルトを渡した。


そして、また黙ったまま、キッチンへ立ち、料理を作り始めた。


女はテーブルの上に置いてある、samのセブンスターを一本引き抜き、シーメンズクラブと彫ってある古びたジッポーで火をつけ、フィルターに着いた赤い口紅の跡を触っていた。


「食えよ…」


チャーハンとポークジンジャーをテーブルに置くとsamはまたバドに口をつける。


女は、バドワイザーを飲みつつ、チャーハンと肉を頬張る。


「sam、料理うまいね」


「そっか?コックだからな」


半分食べて、女は皿をsamへ押し出す。


「みんな、食っていいんだぜ」


「もう、お腹いっぱいよ」


残りはsamが食った…。


女はsamが食べ終えると、セブンスターを咥え、ジッポーで火を着け、それをsamに咥えさす。


そして、自分も火を着け、煙を天井に向けて吐き出した。


「あたしはミカ…samはいくつ?」


「21…」


「じゃぁあたしの方がちょっとおねえさんだね」


「ミカ…何処へ行きたいんだ?」


「帰りたいんだよ…」


ミカは俯きそう言った。


「今から行くか?それとも、明日朝出るか?」


「眠くなっちゃった…」


ミカはジーンズだけ脱ぐと、samの手を引き、ひとつしかないsamのシングルベッドへ横たわる。


samの胸におでこを押し付け、寝息をたてた…。


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