第193話 イルカショー開幕

「すみません。まだ受付ってやってますか?」

「あ、はい。できますよ。二名様ですか?」

「はい。二人です」

「かしこまりました。それではさっそくショーに関する説明に移りますね」

 ショーが始まる15分前ぐらいでようやく受付を行っている場所に到着した僕らは、そのままスムーズに受付を済ませることが出来て、中に案内される。


「まずいくつか注意事項がありますので説明しますね」

「はい。お願いします」

「えーこほん。まず第一にショーの開演中は基本的に立たない様にお願いします。ショーの最中に立たれますと他のお客様の視界を塞ぐことになりますので」

「立たないように……分かりました」

「それでは次に。ショーは終始、足元や体が濡れることになります。ですので移動する際、また座ったりする際は足元に注意するようお願いします」

「以上が注意事項です」

 その注意事項を聞いて僕は当然といえば、当然の疑問が浮かび上がった為、それを職員さんに聞いてみることに。


「あの、すみません。一つ聞きたい事があるんですがいいですか?」

「? はい。なんでしょうか?」

「その……ショーの最中ってもしかしたら自分自身に水がかかってきたりしますか? それでいてカッパのレンタルとかって……」

「あー! すみませんお客様! そのことに関する事を伝え忘れてしまいました」

「そうだったんですね……」

「ええ。当水族館はお客様が風邪を引かれないよう、多くのカッパを無料でお貸ししております。お二人はレンタルなさいますか?」

「あーじゃあお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 そう言って職員さんはドアの裏側へ消えた。

「良かったね。何とかカッパ、借りられそうで」

「だね……流石に結構濡れることを想定しているからカッパがあるだけでだいぶ違う気がするよ」


「お待たせ致しました。こちらがカッパになります」

「ありがとうございます」

 それからほどなくして職員さんが二枚のカッパを持ち、姿を現す。

「それではごゆっくりとお楽しみください」

そのまますぐカッパを着こんだ僕達は案内された扉の方向に歩いていく。

「? この先が少し騒がしい……多分この先みたい」

そう思い、僕らは会場に通ずるであろう扉を開き、中へ入った。


「あ……けっこう寒いかも」

「確かに……もしかして、この中にいるイルカが過ごしやすいような気温にしてるからなのかな……」

「あーそれはあるかもしれないね。動物って基本的に変温動物が多いし、多分イルカもその中じゃないかな?」

「かもね……とりあえず座ろ?」

「そうだね……って危ないっ!?」

 中に入り、階段を使いベンチが置かれているところに行こうとする途中で、すぐ真横から急な波が飛んできて、それをよけるのが遅れてしまったが為に左足の方は靴、靴下共にびちょぬれとなった。

「あちゃー……なんてこった」

「……えっとドンマイ?」

 美結はなぜか気まずそうにしながらも僕にそう言ってくれた。



「はーい。皆さん。本日はお日柄もよく遊びに来てくれてありがとう! 是非ピーちゃんのショ―を楽しんでくださいね!」

 元気いっぱいに大きな声でそうアナウンスする飼育員さんの声でショーがいよいよ開演となりイルカのピーちゃんの派手な演出が始まった。ちなみにオスらしい。

 まず最初に行われているのが飼育員さんとのハイタッチ等の簡単な芸に始まり、宙に吊るされた輪っかをくぐり抜けて行ったりと、終始見ていてとても見惚れるものがあった。


「そしていよいよショーもフィナーレとなります! 最後にピーちゃんの特大ジャンプをお見せします!」

 そう言うと結構な高さに風船? の様なものが設置される。

「もしかしてあれを割るのかな?」

「多分……けどここから見ても随分と高いけど大丈夫かな?」


「さぁ行け! ピーちゃん!」

 そのかけ声と反応し、上部にある風船めがけてピーちゃんは宙を舞うようにその身を打ち上げた。

『おー!』

 それを見ていた観衆は歓声と驚きの声を上げる。

その後風船を見事を割り、ドーム内にパンという音が響く。

 そしてこれがイルカショーの最大の見せ場とも言える着水。分かり切っていたことだけど、着水時の水しぶきは凄まじく、おそらくほぼ全員がその餌食になる形でイルカショー派手な終わりを見せて、幕引きとなった。



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