第192話 イベント イルカショー 幕間

「えっと後はここを右に曲がれば……あった!」

 ペンギンへの餌やり体験が終わった僕たちは、最後のイルカショーを見ようと、その場所へ向かっていた。

 しかし、思ったよりさっきの餌やり体験で随分と時間を消費していたのか、そのショーが始まるまであと20分もなく、焦燥感の駆られるままに歩く足を早めていた。

「はぁ……はぁ……ちょっと待って、中村君」

「? あ、ごめん。早く着くことばかりに頭がいっぱいになってて……」

 美結は僕よりも一段と歩幅も小さいため、僕がやや急ぎ気味の早歩きになっていたとしても、彼女にとっては早歩き以上に見えていたのかもしれない。

 だからとりあえず歩く足を止めて、そのまま美結の元へ引き返した。

「ううん。だって元々は私があれ見たい、やりたいって言っただけなんだから、それを中村君が一日のスケジュールを作ってまでしてくれたんだから。」


「美結……そう言ってくれるとあれを考えて苦労した甲斐があったって思えるよ」

「うん……そういえばあのスケジュールとか、開催時間とかのあのメモどのぐらい時間掛かったの? ざっくり見た感じ、ぎっしり書かれてたから気になって……」

「えっと……あれは学校終わって真っ直ぐ家に帰ってそのままやり始めたから……多分四時間ぐらいかかったかな……」

「そこまで掛かってたの!? もし今度もあったら手伝うよ!」

「え、けど……」

 時期的にもここからは受験なり、色々と忙しくなる上にそれにもしお互いに受験も終わり進学したその先も彼女とずっと長く付き合っているのかは少し分からなかった。

 もしかしたら何かがきっかけでまた疎遠気味になるか、それを通り越して別れる。なんていう状況になるかもしれないと思うとその先の言葉は途中まで出かかったものの、そのまま飲み込みことにした。

「それに……」

「それに?」

「やっぱりいろんな事を誰かに任せっきりにするのはあんまり好きじゃないの。例え、それが彼氏彼女や仲の良いクラスメイトの関係性だったとしても……」

「美結……分かった。もしそういった機会がまたあったときは真っ先に美結に声を掛けるよ」

「うん。そうしてくれるとありがたいよ」

「えっと、そろそろ行こっか」

 そう言って僕は美結の手を握り、引っ張り過ぎないように早歩きになり過ぎなように歩幅も、歩くスピードもだいぶ調整した。


「あれだね」

「うん。えっと始まるのは4時ちょうどだけど受付の締め切りが3:50分だから、後10分! 多分間に合うはず。」



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