第39話 向き合う気持ち
昨日以上にクタクタになっていたので今日も寄り道せずそのまま真っ直ぐ帰路につく……はずだったが、どこかで一息つきたいのもあり、僕は学校の最寄り喫茶『cafe Sugar』でゆっくり体を休ませ頭の中を整理することに。
「ふぅ……」
文化祭二日目の最後、美結の口から出てきたあの言葉が今でも忘れられない。
『私、中村君のことが好き……かも』
あの時は英二や、北沢さんとの距離も少しあったので多分聞こえてはなかったとは思うけれど……
それはそれとしてなんたってあのタイミングで告白を……?
正直、親しい友達から好意を向けられる事態は嬉しく思う。男女問わずだ。
しかし、男女間での友情抜きで考えると話は大きく変わってくる。
というよりそれについて考えるきっかけは少し前からあった。
四人でプールに行った帰りの途中、北沢さんからの匂わせ染みたあの言葉。
あの時からしっかり考えていればもう少し考えもまとまったのかもしれない。
「はぁ~明日のコスプレ喫茶の接客が億劫だ……」
「随分と難しい顔してるけど何かあったのかな?」
そう言って斎藤さんは僕が注文したカフェラテを置いてくれた。サービスなのか、それと元々なのか、猫のラテアートが描かれていた。
「ちょっと今日、いろいろ学校でありまして……」
「へぇ……何があったか聞いてもいい?」
「いいですけど。大したことじゃないですよ?」
「いいのいいの。だって最近はお客さんがあまり来なくて喋る事なかったから……」
「急な自虐やめてくださいよ。反応に困ります……」
とりあえず考え事の方は結論は出ていないけれど、とりあえず斎藤さんが話して言うものなので話すことに。
「って言う感じです……」
「なるほど……それは多忙だったね」
とりあえず美結をいじめれていた梓澤さんの事は省き、僕が一番話したかったのは美結から突然の告白の一件である。
あの後、すぐ美結にあの言葉の意味を聞こうと思ったけど、さすがに急な告白に僕の頭の中はいっぱいだったから聞けなかったけど……
「はい……女の子ってよく分からないです」
「う~ん! 青春って良いね! 僕みたいな年になると出会いの場すらほぼないものだから聞いてて新鮮な気持ちになるね~」
「そう…ですかね? 正直、どうすればいいのか、よく分からないです……」
あの言葉を純粋な告白として返事をしっかり考えるべきなのか、それとももう少しだけ時間を置き、本人に聞いてみるか……
「そうだね……とりあえず、一旦何もしないで大丈夫じゃないかって僕は思うよ。多分、その子なりに色々考えての行動な気がするしね」
「そうですね…とりあえずそうしてみます……!」
斎藤さんからの相談の末、とりあえず一旦考えるのは止めて文化祭の方に集中することにした。
結論も出たことで少しは頭の中が整理できたので残りのカフェラテを飲み干し会計を済ませ、店を後にしようとしたところで──
「あ、そだ。中村君。ちょっといいかな?」
「はい。なんです?」
「確か文化祭は明日までなんだっけ?」
「はい。そうですね。明日が最終日です。それがどうしました?」
「いや~何気に昨日と今日、行ってみたけれど中村君が見当たらなくて……」
「え!? 来てたんですか? 言ってくれたら僕も顔を出しに行ったのに……」
「ん~というか言ってた気がするんだけど。文化祭の前日かそこらで『行こうかな~』って……」
「ん……あっ!」
言われてみれば確かにそんな会話をしたような気が……というよりあの時、確か店を開けずにこっちに来るとか言っていたものだから、半信半疑だったのであの言葉を鵜呑みにはしていなかった……
「どう? 思い出した?」
「はい……割と」
「まぁまだ明日残ってるんだから、見に行くよ!」
「はい。というか言い忘れてましたが、丁度明日が僕、コスプレ喫茶の方に回らないといけない日です……」
「あ、そうなの? それじゃあ楽しみにしてるね~お休み~」
「はい。お休みなさい」
そうして僕は店を後にして家に帰ろうとした途中であることを思い出す。
「明日のコスプレ喫茶で僕は何を着るんだろう……」
文化祭が近くなる前日に急遽、五十嵐さんから手伝ってほしいと言われたので仕方なく手伝うことになったけど、着るものはこっちで用意するって言ってたけど一体何を着せられるんだろう……?
コスプレというぐらいだからそれっぽいものを用意してそうだけど……五十嵐さんの趣味全開になりそうだ。
「明日になれば分かるか……不安だけど」
*
「ふんふふ~ん♪」
来たる文化祭最終日。私はこの日をこれでもかと待ちわびていた。だって明日は遂に美結と中村君のコスプレ衣装をお披露目になる日でもある!
美結の方は既に一度見ているけれど、あの姿を見て彼はどんな反応を見せてくれるんだろう? あまりの可愛さに赤面するかな? それとも心打たれて何も言えなくなるかな?
「明日が楽しみ~♪ ……ん?」
そんな妄想に思いを馳せようとしているとマホの通知音ですぐに現実に引き戻される。
「あれ、美結じゃないか」
スマホから鳴っていた正体は最近連絡先を交換していた美結からの通話の音だった。
「もしもし~珍しいね~美結のほうから連絡くれるなんてさ」
『ごめん……急で。もう寝る所だった?』
「ううん。平気。まだ寝るつもりはないよ」
『そっか。急なんだけど相談に乗って欲しくて……』
「いいよ! さぁなんでも話してごらん? お姉さんが聞いてあげる!」
『うん。えっとね……その、私、中村君に告白しちゃいました。はい……』
「うん。うん……え? こ、告白!?」
というか美結って中村君のこと好きだったんだ……今朝しのっちから聞いた私からすっごく複雑でしかなかった……これ、私はどっちの味方をすればいいんだ~!!!
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