第33話 男女間の友情はあり? なし?

「それで言い返すとは決意したけどさ……正直、あまり気乗りしないというか……ねぇ?」

「そう? 私としては一言言わないと気が済まないというか……」

「えっ!? 美結がそう言うのなんか意外……」

 僕の考えた作戦に少しだけ北沢さんはやや後ろ向きになっている反面、美結のほうは完全に吹っ切れたからなのかどんとこいの精神で臨もうとしていた。

「どうやったらそういう考え方なれるのか分からないけど、羨ましいなぁ……」

「そんなことないよ……なんていうか吹っ切れたからなのかな……前向きになれたのかも……」

 そう言いながら美結はちらっとこちらを見る。

「と、とりあえず梓澤さんの事は置いといて今は文化祭を楽しもうよ! まだ今日の文化祭は終わってないわけだし」

「それもそうだね。楽しまないと損、損!」

「絵理香にしてはいいこと言うじゃん」

「むぅ……一言余計!」

 そんなこんなで僕ら3人は文化祭巡りを再会。とはいえ午後の2時。学校が完全に閉まるのは五時半。あと三時間の間にどこを見て回ろう……

「あ、そうだ! 私行きたい所あるんだけど……いい?」

「行きたい所? どこ?」

「フッフッフ。それは行ってからのお楽しみということで……」



「ここは……占い?」

「そう! 占い! パンフに書かれて行ってみたかったって訳!」

 行き場所を言われず到着したのは占いをしている教室だった。というかこういったことをやってるクラスあったんだ……

「それならなんで俺までいないといけないんだ?」

「まぁまぁ。そんな細かいことは気にしないでよ。多分暇なんでしょ?」

「いや暇だけど……俺は一人でいるのが好きなの」

 そう言って素っ気ない顔をする英二に対して美結は__

「けど、みんなで回った方がきっと楽しいよ?」

「……まぁ加藤さんがそこまで言うなら付き合うか」

「「え!?」」

 普段は誰に対しても素っ気なくあしらっていたあの英二が美結に対しては素直……? というか思わず素で『え?』って出ちゃったし、北沢さんも全く同じ反応を見せていた。

「そんなに俺が素直なのがおかしいか?」

「あ~いや、おかしいというか。珍しいこともあるもんだな~と思って……ねぇ中村君!」

「う、うん。何か変わったもの食べたりした?」

「お前ら二人揃って失礼気回りないな……たく。そんなことより早く中はいるぞ」

 さっきまで少しだけ不機嫌そうに見えた英二の顔が今では心なしかちょっとだけ楽しそうに見えた。


「どうぞ、いらしゃい! ささ、そこの席にでも座ってください!」

「あ、はい」

中に入ると教室の中はカーテンが全て閉まり切っていて二、三個の椅子と机の最低限しか置かれていて明かりも机に置かれたロウソクだけでいかにもそれっぽい感じの雰囲気が伝わってくる。

 それに占ってくれそうな生徒もそれっぽい雰囲気を出すためか、黒くて大きな布切れを頭まで覆いかぶっている。

「さてさて、何がいいですかね? 色々ありますよ。タロットカード占いや、相性占いだったり……」

「タロットカード占いで!」

 説明の最中、後ろにいた北沢さんが食い気味に口を挟んだ。

「知ってるの? 絵里香」

「ううん。けど見てるアニメでタロットカードが出てたから気になって……」

「あぁ……そういう事」

「それじゃあ、四人ともタロットカード占いでいいですかね?」

「はい、お願いします」

「ハイハイ。ちょっとだけお待ちを~」

 そう言いながら彼女はなれた手つきでカードを取り出しては如何にも占いっぽい動きを見せてはいるが要はただシャッフルしているだけ。

 だけどそんな何気ない細かいところにもこだわっているの感心した。

「では、貴方からこの中から適当に一枚だけカードを引いてください」

「俺か。……引いたぞ」

「どれどれ……おお、戦車のカードですか。」

「どんな意味があるんですか?」

「色々ありますけど、そうですね。困難を乗り越える人だったり、あとは……成功ですね~」

「成功……」

 占いの意味を意外と真に受けている英二は一人難しそうな顔をして考え込んだ。こうなったらしばらくは戻ってこなさそうだ。

「それじゃあ私はどうですか!」

「は~い、それじゃ、一枚引いてね~」

「はい。これだ! ……って怖っ!」

 北沢さんが書いたのはアルファベットでデビルと書かれたカードでそこに描かれた絵も男女が鎖に繋がれていて非常に不穏なカードだった。

「このカードはデビルですね~ちなみに意味は欲望や無気力さなどがありますね」

「欲望……」

「無気力……」

 そう言われて僕は当たっていると感じた。なにせ、過去にワークの課題を手伝う羽目になったのでこの占いはほぼ当たっていると確信した。



「さてさて。残りは後ろのお二人ですね。どうです? ここからは趣向を変えて相性占いでもどうですかね?」

「お願いします!」

「なら……星座で相性占いと行きましょう! お二人の星座は何です?」

「僕は獅子座」

「私は蟹座です」

「なるほど。二人の相性の良さは85%といったところですかね~」

「は、85%……結構高いね」

「そうですね~それにただ相性がいいんじゃなくてお互いにないものをそれぞれで補え合える良い関係ですね」

「補え合える関係……」

 そう言われて見ても今はあまりピンと来ない。けれど僕にとって美結は一緒にいたいと思える女友達? みたいな関係だとは思うけど……

 美結の方はどうなのか、気になって横を見ると美結とばったり目が合った。それもほぼ0距離に近い位置で。

 さっきの『補え合えるいい関係』というのが友達としての意味だとは分かってはいるけど不思議と意識してしまう……まるでカップルとか夫婦みたいだ……

 僕は美結の事、そういう風に見たことなかったけど……美結はどうなんだろう……

 









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る