第19話 文化祭準備 壱
十月六日。
中間試験が終わりみんなは完全に文化祭ムードになっていた。
「やっとテストから開放されたー!」
「やっと夜更かしできるぞー!」
その雰囲気でみんなワクワクしている感じではあるけれどよく考えれば文化祭は十一月の中旬。
「あんまりよく考えてなかったけど準備が主に大変そうだよなぁ……」
それにあと一ヶ月以上の猶予があるとはいえ、僕たちのクラスはコスプレ喫茶。
コスプレ喫茶や教室への人員配置、料理のことなど考えることは沢山ある。
「中村君。ちょっといい?」
「あっ、五十嵐さん。どうしたの」
「コスプレ喫茶の事で少し……ね」
「……?」
終礼が始まるまでの間、僕は五十嵐さんからある話を持ちかけられていた。
「コスプレ衣装のことなんだけど……正直そこまでやる人いないかな〜って思ってんだけど……」
「うん。僕も正直言うと、それほど乗り気じゃないというか恥ずかしいな……」
とはいえ、やると決まった以上、腹をくくるしかない。そう僕は決心している。
「あれからクラスのみんなにコスプレについてそれとなく聞いてみたんだよね……」
「え、そうだったんだ……何かしてるな〜とは思ったけど」
「うん……でね。その聞いてみた結果結構な人がコスプレやる気あったみたいだったから、最初の予定とは少し狂っちゃうんだよね……」
五十嵐さんはバツが悪そうにそう言う。
「最初の予定?」
「うん。最初は数人ぐらいだったから予算の一部でそういうの買えばいいなとは思ってんだ」
「まぁ。そうだね。あくまで楽しむ為だもんね」
五十嵐さんの言う通り本来文化祭の予算は各クラスで、基本的に一万五千円と決められている。
そして僕たちのクラスはその内訳として1万円の方でオムライスを購入。その残りをコスプレ費用として使う予定だった。
しかし今五十嵐さんが言ったその想定外の自体によって、この文化祭の予算案は見つめ直す必要ができた。
「とはいえ……オムライスの購入費用を少しずらすの難しそうだし……」
「だよね……あぁ〜どうしよう! このままじゃ準備すらままならないよ〜!」
「だよね……一応みんなやる気マンマンって感じだし」
流石に、そんな状況の中、また話し合いを作ったら逆に、準備の時間がなくなるし……
「何かいい方法は……あっ!」
「ん? どうしたの? 何か閃いた?」
「閃いたっていうかいいかもって思ってるだけなんだけどね……」
多分これなら、みんなに協力してもらう形にはなるけど、上手くいくはず……!
「そっか……じゃあこの後の終礼の後にでもさっそく言ってみよう! 任せたよ! 委員長」
期待のこもった言葉を言ってそのまま五十嵐さんは席に戻っていく。まぁ……やるしかないか。
程なくして朝比奈先生が職員室が帰ってきて終礼が先生の話で締めくくる丁度、その時僕はある提案を持ちかけようとした。
「え〜っと皆さん中間試験が終わって文化祭だって浮かれているとは思いますが。浮かれすぎて問題を起こさないよう、お願いしますね」
「は〜い」
「ちなみに誰か連絡事項のある人いますか〜?」
「はい。あります」
その声掛けに僕は手を挙げる。もちろん。さっき考えた案をみんなに提案するためにだ。
「じゃあ中村君。お願いします」
「はい」
そう言って僕は教団の前に立ち、口を開く。
「え〜っと文化祭実行委員の中村です。今日はある提案をしたいと思います」
提案と、言い出したところで何人かはざわざわしだす。
「まぁ…提案というよりお願いに近いかな……えっと、今僕たちのクラスがやるコスプレ喫茶についてです」
それから僕がさっき、考えついたプランをみんなに提案する。
それはコスプレの衣装を費用を抑えるために自分たちで作る。というものだ。
「衣装を俺たちで……」
「けどそういうのを最初から作るのって難しいんじゃ……」
「だけどさ、面白そうじゃね?」
興味を持ってくれる人や、不安そうにする人、それぞれいろんな反応を見せてくれた。
当然、こんな感じに意見がバラバラになることは想定していた。
「衣装を作ると言っても簡単なものでいいんだよ? みんな!」
そこで五十嵐さんが後押しをするように声を上げる。
「例えば綺麗な布をドレスみたいに切って縫えば白雪姫みたいなお姫様のコスプレにもなるし、コスプレって思ったより、気軽にできるものなんだよ」
「へぇ……」
「それならハードル下がりそう……」
「それはそれとして一ついい? 二人共」
そこで朝比奈先生が話に参戦する。
「はい。どうしました?」
「作るのは構わないけれど、接客の事とか喫茶自体に関する事にも人割いたほうがいいと思うけど……」
「それもそうですね……」
「それに衣装を作ると言っても手で縫ったりするの。そこらへんも考えて置かないと……」
朝比奈先生のこの2つの質問は来るのは当然、想定していた。勿論、それに対するベストな回答も用意している。
「そこらへんはご安心を、先生。私の友だちに裁縫が得意な人もいますし、縫うときは被服室を使わせてもらいます」
「そう……なら使うときは一声かけてね。鍵を持っていくから」
「はい。それでもう一つの人員の割き方に関しては衣装作りと喫茶作りの2チームに別れてやるつもりです。」
「なるほど……それなら問題なさそうね。」
まだ細かい人員配置に関しては決めてはいないけれど、これでみんなが賛同してくれるなら毎日、少しずつ、準備していけば十分間に合うはず。
「まぁ…そんな感じでやろうと思うんですがみんな大丈夫ですか?」
ここまで話したところで賛同してくれかクラスのみんなに聞いてみる。
そしてその詳しい当日までの準備の日程を話したので少しは賛同してくれるはず……
「うん……やりたい!」
「俺も!」
「僕も!」
結果はみんながみんなやる気に満ちていて、この予定通りに準備をしていけそうだ。
「それじゃあこれから文化祭までの間、みんなで準備の方、頑張ろう……!」
「おぉ〜!」
この時初めてクラスが一つの目標に一丸に結束したのを強く実感した。
「僕からは以上です。」
そのまま僕は教壇から降りて自分の席に座る。
「それじゃあこれで終礼を終わります」
その一声で終礼が終わり、ぞろぞろとみんな帰っていく。
「五十嵐さん。そういえば一つだけ聞きそびれてたことがあって」
帰ろうとしていた五十嵐さんを僕は呼び止めた。
「うん。何かな? 何かな? なんでも聞いちょうだい?」
「うん……それで、コスプレしたい人って最終的に何人ぐらい増えたの?」
「う〜んとね……最初こそ五人ぐらいだったけどいまだと……えっと、十四人ぐらいかな〜」
「じゅ、十四人!?」
ほぼクラスの半分が、そんなにしたいひとがいたとは……確かにそれぐらいの人数なら予算だけで用意するのは難しいな……
「まぁ…そんな感じ。それじゃあ私は帰るね〜」
そのまま五十嵐さんはいつも仲良く話している女子たちと一緒に帰っていった。
「ふぅ……」
そこで僕は大きく深呼吸。
「十四人か……」
その人数分の衣装をこれから一ヶ月弱で、完成させると思うとかなり大変な事になりそうだ……
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