第38話 渦巻きの中

渦巻きの中は前世の図書室だった。寝落ちしてる俺とその横で本を読んでる司書。


いや、読んでるっていうかめくってる。あっ、あれがあいつが言ってた速読ってやつか。上級者はぱらぱらめくるだけで一冊読めるって聞いてたけど、自分も出来るとは言ってなかったよな。ぱらぱらっとめくって最後のページを眺めてると思ったら、読書カードになんか書いてる。うんっ、俺の名前じゃん。自分で読んだ本に俺の名前書いてたんだ。なんで?


頭に?マーク飛ばしてる場合じゃなくて、図書室の本が全部宙に浮いて、全部の本がひとりでにパラパラめくれてる。ど、どういうことだ?


「な、何これ? 本が生きてる」


「本を目で追って」


って司書が言ってるけど、めくれるスピードが速すぎて何にも見えない。


「とにかく見るの。心を無にして」


言われたとおりにする。


「すごい。文字が見えるようになった」


「私も」


梨偉人と詠子は速攻で見えるようになったけど、俺には全然見えない。


「うそだろ。全然見えないよ」


「見ようとしないで。ただ目を動かすんだよ」


梨偉人はそういうけど、やってるつもりなんだけどな。


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