第37話 目を動かすのよ

「読まないで、目で文字を追ってくのよ」


司書が叫んでる。それ、梨偉人が俺に言ったやつじゃん。


「やってるよ、三人とも。それでも間に合わないんだって」


「まだ読もうとしてるのよ。ただ見るの」


って司書に言われて思い出した。前世に図書室で寝落ちしてて、目が覚めたら速読の本が置いてあって、これ、読んでみてって言われたんだ。興味なかったから借りたまんま枕にしてたんだけど。


「やってみよう」


「わかった」


「わかった」


二人がハモったところで、怪獣が文字の渦巻きになって文字がぐるぐる回り出した。


「えっ、えっ、どの文字追えばいいんだ?」


「どこからでもいいから文字を見て」


「えっ、どこからでもいい?」


しょうがないから三人で文字を追っていった。そしてとにかく追っていたら、三人とも渦巻きの中に吸い込まれた。


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